王宮でのやりとり そのに(仮)
昨夜、プロムナードでジャック殿下は、クリスティーンを修道院送りにした。
正確には王太子にその権限は無いため、忖度した騎士たちによる暴走とも見られ、正式に送致されたわけではないが。
壇上からプロムナードの開会宣言もそこそこに、ジャック殿下は、クリスティーンを会場の中心へ呼び出した。
彼女の妹〜ルシアの証言で、クリスティーンが日常的にルシアを虐げていたと。
その様な者は次期国王である私の統治する王国には要らぬ!……と、ジャック殿下は修道院送りを命じた。
「それの何がならぬと言うのですか!」
「たった今、ドナテロ君が言ったじゃない、『権力の乱用になる』って。
それと、はい」
陛下からジャックに渡された三枚の報告書。
一枚は、先程のリストの中にあった、リストランテ伯爵令嬢の件。
姉からの虐げが酷く、その弟が治療院送り一歩手前であった。
当然、先のリストにもその概要は記されていたが、ジャックは「王家の責務ではない」と袖にした。
一枚は今話にあった、ドミネイト侯爵令嬢ルシアの事である。
その身には、掠り傷ひとつ無く、まるで絹で磨かれた珠のようだと。
そして一枚は、同じくドミネイト侯爵令嬢の、しかし姉のクリスティーンの事。
しかし姉妹とは思えぬほど、既に塞がった古傷から、治療も施されていない、最近つけられた生傷まで。
「これを見てどう思う、うん?」
まず一枚目のリストランテ伯爵令嬢だが、事を重く見た伯爵が令嬢を排籍し、領地にいる親戚に預けたと報告を受けている。
なので王家が何かしらする必要は無いのだが、それはともかく、ジャックは治療院送りになった件を、関与する必要なしと、捨て置いた。
クリスティーンが日常的にルシアを虐げている、とルシアから助けを求められたと、ジャックを含む三人は言うが……、二枚目と三枚目の報告書を見るに、状況は逆にしか思えない。
ルシア嬢に惹かれていると思しき三人も、何が問題だったのかを理解したようで、驚愕の表情を顕にしている。




