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24/52

24:1日目 初日終了


 真夜中のソシガーナの石畳に二人分の足音が響く。

 ジーナ達は街の西門を目指していた

「まさか今から門の外へ行くんですか?門は閉まってますよ」

「今しかできない用があるんだからしょうがないだろ」

 西門は当然のように閉じられていて人っ子一人いなかった。

「ほら見ろ、番兵がいないだろ。西門の夜警はいつも酒飲んで寝てるんだ。通用門を通れば外へ出られるぜ」

「この街の衛兵はどれだけたるんでいるんですか。王都騎士団だったら追放じゃ済まないですよ」

「おかげでこうして真夜中のお散歩ができてるんだ。何事も功罪ありだ」

 二人は小さな通用門のかんぬきを外すと外の世界へ旅立つ。

 今晩中に帰ってくるなら、門番が起き出して急に鍵の確認をしない事を祈るしかない。

「どこへ行くんです」

「遠くはない。豚ちゃんの農場を見に行く」


クエスト

■子豚盗難事件

農場の柵が破壊され子豚が盗難されている

子豚泥棒を捕らえるか、不可能な場合は殺害せよ

報酬:5万ゴート

発注者:ピギー牧場


「賊は毎夜深夜にやってくるらしい。うまくいけば今夜中に解決できるかもしれない」


 しかしジーナが思うほど現実は甘くなかった。

 ピギー牧場は広く、柵は長く延びていた。二人で見回るにはとても手に負えない広さだった。


「この規模では、農場全部を見張るのは難しそうですね」

 ハルが手に持った松明では、暗く広がる農場の広さからはいかにも頼りない

「どのみち、一度は来ておく必要があった。偵察だ」

 ジーナは魔人の眼があり、暗視が効いている。とはいえ遠くまで見渡せるわけもなく……


 そのとき――乾いた木の裂ける音が風に乗って響いてきた。


「今の音……」

「あっちだ!」


 ジーナとハルは即座に駆け出し、音のした方角へ急行する。

 しかしどこまでも続く柵に沿って向かうには時間がかかりそうだ。


 案の定、現場と思しき場所へ到着したときには犯人の姿はなかった。

 ただ、壊された柵の近くには手がかりが残されていた。


「これは……足跡? 大きいな」

 ハルがしゃがみこむ。


 泥に深く押し込まれたそれは、人の倍はありそうな大きさで、爪のような跡まで残っていた。


「こいつは身長3メートル以上……オーガか、トロールか……しかし妙だな」

「豚泥棒は人ではなく、魔物?」

「しかし、こんなデカいやつが何度も出ていて、目撃情報が無いのはおかしい」


 柵は一部だけ壊れていた。敷地の中の豚小屋は無事のようだ。


「……どうしますか?」

「デカい魔物か、もっと別の、何かか――今夜はここまでか」


 二人はやむなく、街へと引き返すことにした。

 帰り道、ジーナはふと呟いた。

「あたしの勘だと、デカい魔物の仕業っていうのはなんか引っかかるんだよな」

「しかし、実際に足跡はありますし」

 ハルは首を傾げざるを得なかった


「ナイト君、あたしの勘は半分は当たるんだぞ」

 ジーナが自信ありげに答える


 それは世間では当てずっぽうというんじゃないかな。


 ハルはもう少し考えてみようと試みたが、途方もない疲労を感じてこれ以上は頭を働かせる事を諦めた。



 行きよりも数倍長く感じながら、二人は街の西門へと辿り着いた。

 幸い通用門は出た時のまま鍵はかけられていなかった。

 真っ暗になった目抜通りを歩き、ハルの安宿の前で二人は別れた。

 「おやすみなさい、ジーナさん」

 「ああ、せいぜい良い夢を。ナイト君」


 二人の長い1日目が終わった。

 

 ――そして明日はもっと、とんでもない日となる


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