14/マヌケな2人
サシャは男に進められた道から無事に国を出た。
馬でひたすら魔族領側へ走り続けるが、途中から国防隊に追われ始める。
「待ちなさーい!!!!」
「あいつらしつこいわね! もう少しで辺境だってのに」
サシャは国賊として追われていた。
後方を見ると、横に広がる土煙が国防隊の多さを実感させる。
「ん? 何あれ?」
サシャの前方から、魔族領からも横広がりの土煙から逃げる影が1人いた。
「糞親父め!!」
「金返しやがれ!!!!」
大勢の借金取りに追われるアルクだった。
馬がどんどん近づくとアルクとサシャは示し合わせた様に横に抜け、馬を横並びにして走らせる。
「なにしてんの!?」
「サシャ!? お前こそ何でここにって、何で追われてんの!?」
2人を追う者もまた横並びになった。
国防隊はいかにもならず者な風貌をする借金取りに警戒しつつ話かけた。
「あ、どうも」
「あ、いえいえ、こちらこそ」
2人のトップが気の合いそうな会話をするなか、サシャとアルクも情報交換をしていた。
「私は貴族殴って追われてる所!」
「俺は親父の借金50億を取り立てられてる所だ!」
「ひっどいわね!」
「お前も大概ひどいな!」
2人は目を合わせニヤリと笑う。
「パーティー再結成しましょう!」
「ああ! 今度は臨時じゃない奴をな!」
短い間のパーティー解散だった。
捨てられた奴隷少女とファザコン魔族のパーティーの解散。
しかし3日もせずに、国賊として国に追われる少女と裏社会を敵に回した魔族は新しくパーティーを組んだ。
「どこ行こうか! リーダー!!」
アルクは考える。借金取りから逃げるために人間領に向かったが、サシャが人間領側で追われる身ならもう意味はない。
ならば。
「魔族の街を巡りたいな! 殴りたい奴がいるんだ!」
「良いわね! 案内してよ!」
そんな2人の後方では、魔族の悪と人間の正義が牽制しあっていた。
お互いの立場を察しながらのメンチの切り合い。
そして気づけば前を走るアルクとサシャの姿を見失っていた。
「「やっべ」」
国防隊のトップは後ろからの視線に泣きそうになりながら言った。
「リーダーと呼ばれた奴は一体何者だ?」
借金取りのトップは後ろからの視線に吐きそうになりながら言った。
「......情報共有しないか?」
人の国に仇なす人間と裏の魔族に喧嘩を売った魔族のコンビ。
それから少し後。
たまたま居合わせた気の合う権限者により2人は表では国際犯罪者として、裏では組織の顔喧嘩吹っ掛けたヤバい奴として名を上げる。
魔族領のとある街。
アルクの宝石を売っ払い、2人はレストランでご馳走を食べていた。
「追ってこないわね、撒けたのかしら。モグムグモグムグ」
「かもな。人間はこっち側あんま来ないし、魔族は裏の奴らだ表で襲っては来ないだろ。顔を隠してここも早めに移動しようモグモグモグモグ」
談笑する2人。
この後国際犯罪者と呼ばれレストランを追い出され、顔が周知されてしばらく野宿でひもじい思いをする事をまだ知らない。
「おかわりー!」
「俺にもおかわりくださーい!!」
終わり