誕生日
思いつき掌編です。
pixivの1000文字_嬉しいのフォーマットです(そのコンテストに応募してる作品)。
――こんこん
明るく軽快なノックを響かせる。扉の向こうから聞こえる楽しそうな返事を聞き、私はにんまりと扉を開けた。
ご飯だよ、そう言いながら部屋に入った私を見て、ユウは笑顔を向けた。まだ五歳の私の可愛い子ども。食べることが大好きで、まだまだ甘えたがりで、でも優しい良い子。
今日のご飯はピザ。
トマトソースにユウの好きなソーセージとチーズがたっぷり。
大きなピザだったけれど、ユウは美味しい!と一人で半分も食べた。
子どもを見ているといつも思う。こんな日がいつまでも続くといいな。ありふれた小さな、けれど確かな幸せを感じる。
明日は何にしよう。
ある日はカレー。
部屋いっぱいに食欲をそそる匂いが広がる。これもユウの大好物。
私が思わずため息をついたら、大丈夫?と心配してくれた。
そろそろ帰ろうよ〜と言うから、そうだね、帰ろうかと返した。
今日は久々におうちご飯。最近はずっと外だったからね。
お蕎麦が食べたいっ!ちょんちょんするやつがいい。と言うのがユウのリクエストだった。
うん、いいよ。じゃあお蕎麦にしよう。ちょんちょんするやつ、好きだね。要するにざるそばなんだけど。よし刻み海苔は多めにしてあげよう。
胸元におつゆをたくさん飛ばしながら、ユウはお蕎麦を無心に啜る。
お腹いっぱいになっちゃった、あげる!私はありがとう、と受け取った。ほとんど残ってる。もうちょっと食べてよ……。
そういえばそろそろ誕生日だねって言ったら、プレゼントの希望より先にケーキの話が飛び出した。
そうね、ケーキね。一緒に食べよう。じゃあプレゼントは?と聞いたら要らないと。
プレゼントなんかで喜ぶ歳じゃないんだよ、と大人ぶってた。
子どもの寝相ってなんでこんなに悪いんだろ?
いつものようにご飯だよと顔を出したら、ユウはお昼寝してた。ぼへーっと両腕を上げて、なぜか凛々しい真面目な顔で寝てた。
まあこういう日もある。
私は、まだ幼児の丸みが残るユウの頬をつついて遊んだ。ぷにぷに。本当に可愛い。
ユウの顔が歪んだ。私は立ち上がった。なんで……。
そして今日は誕生日。
近所のケーキ屋さんに予約してた、要望通りのチョコケーキ。チョコプレートには、「ユウくん六歳おめでとう!」と入れてもらった。
一緒に食べようって約束したから、ユウの前と自分の前にもケーキを置いた。
食べても食べても、何の味もしない。
ガラスの向こうでユウは嬉しそうに笑ってた。いつまでも。
着想は、「For sale: baby shoes, never worn」(売ります。赤ん坊の靴。新品、未使用)から。
リアル5歳児持ちなので、書いてて辛いんですが、思いついたからには書き上げたかったのです。
1000文字だからこそもうちょっと練り込める気もしますが、今だとこれが精一杯です。
感想、評価いただけると嬉しいです。