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エンドロールには早すぎる~一万回挑める迷宮に棲まう主(まおう)は、マンネリ防止、味変したいと人様のダンジョンに突貫す~  作者: 大野はやと
メイン:エンドロール前

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第97話、ダンジョンマスター、気づけば壁の花ならぬ地の文になってる




 

「……よし、『セシード(内場脱出)』カード、あるいはブックを使って脱出しよう。悪いけど、みんなまた集まってくれ」

「「「「はーい」」」」


今回は、始めの想定取りお試しではあったが。

今までダンジョンに同行していなかったみんなの能力、立ち回りを把握することはできた。


それにより一番に感じたのは、安心感だった。

多分、今の今までテイムモンスターだからと、みんなのことをちゃんと見ることができなかったのは。

マイダンジョンでさえ仲間になったとしても、様々な理由をもって露と消えていくのを多く目の当たりにしてきたからなのだろう。

(後々に聞いたら、マイダンジョンで力尽きてしまった子たちは、またダンジョンのどこかで会えるとチューさんは言っていたけど)



でも、ちゃんと向き合うと決めたみんなは、そんな俺の心配など吹き飛ばしてしまうくらい頼もしかった。

結局、試して使って見た、使えるかどうか確認していた、みんなを守るためのアイテムの出番もほとんどなかったし。

きっと間違いなく、みんなが強くなるのを見守っていてくれていたであろうチューさんに感謝しつつも。


まだ見ぬダンジョンを見つけたかと思ったのに、そうじゃなくなってしまって。

しょんぼりしている風にも見えるディーをまた次も頼むよと励ましつつ。

ダンジョン脱出のために、手甲を外して白く細い手を差し出してくれた(他のみんなが各々くっついたり掴んだりした中での精一杯だったのだろう)ディーの手を。

こちらの緊張がうつらないように気を付けつつそっと握り返したのであった……。





             ※      ※      ※




「おお、主どの戻ったか!」


『セシード』のブックを使って、もれなく問題なくダンジョンから出てきてすぐ。

近くで待っていてくれていたのか、チューさんがテンジクネズミ……『獣型』なままももふっとダッシュする勢いで少しばかり留守にしていたふところへ帰ってくる。



「むっ! 何をしておるのじゃ、ピプルよ! そこはわしのいばしょじゃぞ!」

「何って、ばっくはぐ返し。あるじが求めるから」

「っ。つい最近までご主人さまのこと、興味なさそうだったのに。思わぬ伏兵だね」



思えば、ここまで長くチューさんと離れるようなこともなかったから、と言うよりも。

基本ダンジョンに潜る時、チューさんだけはふところマスコットとして同行必須であったのに。

幼いように見えて、素敵なお姉さんなチューさんをふところにしまっちゃっていただなんて恐れ多いといった俺のきまぐれのせいで、不安にさせてしまっただけでなく、心配させてしまったらしい。


故に気を使ってくれて、テンジクネズミモードになってもらっていたこともあって。

そんなチューさんをふところへ抱くことは吝かではなかったのだけど。



それを見越してなのか、へたれな俺が何とか受け止めんとしていることを悟ったからなのか。

今回同行してくれたみんな……特にピプルは相変わらず表情はあまり変わらないものの。

元々の魔物の姿をイメージできる、大きな大きな赤と青のオッドアイでじっと……

今はさかしま上目遣いであるからして、彼女言うことしたいことを叶えたくなってしまう瞳術にかかってしまっていること請け合いで。



そんな俺を目の当たりにしてか、文字通りの先客……ふところで抱えられているピプルを見てなのか。

真面目儚い感じなのに、初めから大胆で積極的だったフェアリが、チューさんを追ってやってきて、ぐぬぬとばかりに唸っていたけれど。

そんなフェアリ視線は、ピプルだけでなく。

未だしっかり手を繋いだままのディーや、背中で服の裾をしっかり掴んでいるスーイにも向けられていたから。

すぐにその事に気づいたディーとスーイがその時ばかりはシンクロしてわたわたしつつそれぞれ手を離していて。




「えー? ぴぷちゃんははじめからごしゅじんさまと仲良くしたかったんだよお。だけどフェアリおねえちゃんとチューママとユウキちゃんばっかりだったからなかなか入れなかったんじゃないかあ」

「そうだそうだ~」

「うっ」

「む、いや。うむ。主どのをふところマスコットなどとのたまって独占していたのは確かだのう。

……というかのんよ、ママ呼びはちと勘弁してくれぬか? そんなに年、変わらんじゃろうに」

「ええ~。でもチューさんママがいいのに~」

「ぬう。年下に見られるよりはいい、のかの」

「……って、ちょーっと待ったぁ! そこにオレまで入っちゃってるの!?」

「まあ、勇者なのに魔王なマスターとずっと一緒にいるから、そう見えても仕方ないのかもね」

「うっ。そうか……そうかも。別に戦って負けたから従ってるとかじゃないのに、今更離れようとも思えなくなってるもんなあ」


フェアリとしては、妹的存在であるヴェノンはライバル? の物の数に入っていたようだったけど。

ここ最近まで出ずっぱりで一緒にいることが多かったことをヴェノンに指摘されてうっと言葉を失うフェアリ。

その間、スーイとユウキがそんな、聞かない方がいい気もするやりとりをしていた。



ユウキが俺というか俺たちの傍にいるのは、男に戻って元の世界に帰るための術が、俺たちといることで叶うかもしれないからだって思っていたけども。

聞かないつもりでしっかり聞いていたからこそ。

そんな風に言われるのは、とっても悪くない気分で。



……と言いますか。

今更ながら思い知らされる、自身の置かれた凄く凄い(語彙消失)状況に。

ただただ地の文になる、傍観することしかできなかった俺がそこにいて……。



     (第98話につづく)








次回は、2月19日更新予定です。

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