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エンドロールには早すぎる~一万回挑める迷宮に棲まう主(まおう)は、マンネリ防止、味変したいと人様のダンジョンに突貫す~  作者: 大野はやと
メイン:エンドロール前

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第87話、魔王、自らの矛盾を自覚したけどやっぱり気絶しちゃいそう




温泉、湯に浸かっているのだから当然と言えば当然ではあるのだが。

湯と一体化するかのように堪能している以上、アオイはそれがふつうでしょと言わんばかりにはだかんぼで。


半ば強制的に顔が真上を向いて。

それがいけなかったのか、色々なものにあてられてしまった俺は。

 




「……はっ」


もう何度目かもわからない、耐性も何もない問答無用のブラックアウト。

いい加減飽きが来る頃であろうから割愛するが。

ある意味で、無防備に意識飛ばしていても安心安全だと思っているが故ではあるのだろう。




「おお、目をさましたかの、主どの。先ほど雪の大玉にがっぷりよつでぶつかっていった時ですら繋がりが途切れることなかったというに、リンクが一瞬切れおったから肝を冷やしたぞ」

「マスターってばお湯の中潜って遊ぶのもいいけど、病み上がりみたいなものなんだから、ちょっとは気をつけなさいよね」

「でも、おかげでスイちゃんとわたしのばん、来た」

「あっ、あたしは別にマスターに膝枕したかったとか全然思ってないんだからねっ」

「じゃあわたし、このままでもいい?」

「それはダメよっ。ピプのほっそい膝の負担がたいへんじゃないの。しばらくしたらあたしに代わりなさいっ」 



何やら気絶しては周りのみんなにご苦労をかけて。

そのメンバーを変えて、目を覚ましてから同じようなことを繰り返しているような気がしなくもないが。

今回の膝枕係はピプルで、その次がスーイであるらしい。

 

どうやらチューさんはデフォでというか、ふところマスコットとして側にいてくれているようなのだけど。

ピプルとスーイが顔を突き合わせてごく近くでそんなやりとりをしているせいか目を灼かれてしまってそんなチューさんの姿は見えない。

 

もう目を覚ましたのだから、膝枕係は終わりですよ、とはとても言えそうにない雰囲気。

チューさんもぼやくばかりで助けてくれそうにないし。


二人にどいてもらってその場を離脱する気力など微塵も湧いてこない俺は。

取り敢えず二人の微笑ましいやりとりにやられて、やっぱり気絶してしまっているふりをしつつ。

そんな近くにいるであろうチューさんに心うちという名の念話的なもので語りかける。





(……ねぇ、チューさん。俺さ、気づいたことがあるんだよね)

(ふぉっ!? な、なんじゃあ、念話で藪から棒にっ)

(実を言うと、この世界へやって来る前の記憶って『Wind of Trial』っていうか、ダンジョン(ゲーム)に潜ることばっかりなんだ。学生だったのか、もう社会に出ていたのかも定かじゃないんだけど、基本テイムモンスターを除けば一人で探索ばかりしていたんだよね。……だから人付き合いが苦手と言うか、女の子たちとどう接したらいいか分からないんだ。そのくせテイムモンスターのみんな……何とかダンジョンを攻略するなり脱出するなりして一緒に戻れた子たちには女の子の名前ばかりつけててさ。すっごく矛盾しているけど、今のこの俺の状況ってある意味この世界へ送り出してくれた神さまがそれを『願い』として叶えてくれたのかなぁって)



ダンジョン攻略を。

ダンジョンマスター(魔王)を倒すことができたのならば。

勇者は願いをひとつ、叶えてもらえる。


だったら、それを受けて立つ魔王としてこの世界へ召喚されたものはどうなのか。

俺はそんな神さまめいた存在に会った記憶はなかったけれど。

報酬的な意味合いで願いを叶えてもらう勇者と違って。

魔王たちはこの世界へやってきた時点である程度願いを叶えてもらっていたのかもしれない。



(……ふむ。理には叶っておるのかの。もしかしたらコアの相棒となる魔王として呼ばれたものたちは、この世界へやってくること自体を願いであるものが選ばれているのかもしれんの)

(その感じだと、チューさんは俺をこの世界へ連れてきた人、神さまを知っている感じ?)

(恐らくは……じゃがの。その者が魔王や勇者たちをこの世界へ送るさまを目にしたわけでもないからの。話したとは思うが、わしらダンジョンコアはこことも、主どのたちが暮らしていた世界とも違う世界で、コアとして独り立ちするための学園に通っておったんじゃ。その学園の長は、一目見て解るくらいには神気ムンムンじゃったからの。彼女が世界を管理しておる女神であると言われても、わしゃあ驚きはせんな)


どうやらチューさんはその女神さま……学園長さんと何度か会話したことがあるくらいには目をかけられていたというか、優秀なコアだったようだ。

何度か会話できる機会があって、そんな学園長さんの印象は、正しく太陽。

とっても明るくて、日がな面白いことを探し求め回っている、とのことで。



(どうしてそんな女神さまのおメガネに叶ったんだろう。やっぱり溢れ出るダンジョン愛かな)

(そ、それについては否定はせぬが。やはり主どのを見ていると飽きないからじゃないかのう)

(飽きない、かぁ。やっぱり女の子たち大好きなくせして何だか妙に苦手意識があるところが面白いのかな)

(……主どの、気づいておらぬと思っておったが、自覚はあったんじゃな)

(いや、うん。さすがにね)



もらった能力で今まで何とはなしに自分を誤魔化していたけど。

結局それもうまくいってなくて。

幻があらわになって。

触れ合うたびにブラックアウトを繰り返していれば、流石に気づけると言うものだろう。




「ごしゅじん、また寝ちゃった? 寝る子はそだつ」

「ちょっとどさくさに紛れて何なでなでしているのよっ。わたしも今のうちになでちゃうんだからねっ」

(ぐうふぅおっ!? 自覚してもやっぱり無理いいぃっ、ほんとに気絶しちゃううっ!!)

(ふむ。念話でそのようなリアクションとは。まっこと主どのは器用と言えばいいのかなんというか。……しかして、念話でならば分かることもあるわけじゃな。主どのがそのようにどっちつかずな状態になってしまう理由は、聞いてもよいかのう?)



このままでは本当にまた同じことの繰り返しになってしまうからいただけないと。

俺は改めて、意識をしっかと保ちつつ。

そんなチューさんの問いかけに答えることにするのであった……。



    (第88話につづく)








次回は、12月21日更新予定です。

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