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エンドロールには早すぎる~一万回挑める迷宮に棲まう主(まおう)は、マンネリ防止、味変したいと人様のダンジョンに突貫す~  作者: 大野はやと
メイン:エンドロール前

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第84話、ダンジョンマスター、地固まってコアを然と見えるようになる




そこからは、がっぷりよつのタイマンである。

……などと言いつつも。

こうして一人で先走っているようにも見えるのは。

 

次のダンジョンがピラミッド型、罠の多いダンジョンであるということで。

それすなわち、テイムした仲間たちを、一撃で無に帰すような即死系トラップが多いであろうといった最悪を予想したが故である。


『異世界への寂蒔』でテイムできたモンスターたちと行動を共にするようになってから特に気を使っていたことでもあって。

そんな即死系トラップに対して、最も効果を発揮するアイテム、『復活蘇生リヴァ』の薬やカードがちゃんと使えるのかどうか、外でも効果を発揮できるか試してみたい。

そんな意味合いもあって。


実のところシラユキやユウキ、チューさんには。

一応その旨を出て行くその瞬間に、軽く説明はしてはいたのだけど。





「ぐぅおおおぉおぉっ!!」


それでも、無謀にしか見えない雪山とのタイマンを。

ワイパー的なものがなかったせいで視界を真白に染められたことで、目の当たりにされることなくてよかったなぁと思いながら。

『リヴァ』の薬を予め飲んでいたことによって。

俺の中で何かがリセットされる感覚とともに。


本来ならば一度でも使えば無くなるのが当たり前な消費アイテムのすべての回数を増やすことのできる(特に『リヴァ』の薬やカードはいくつあっても良いので、『ブレスネス』を手に入れたのならばすぐに使っていた)、『祝福息吹ブレスネス』カードによる、いかにも祝われそうなファンファーレ、効果音が鳴り響いていたのに気づかされたのは。


すべてをやりきった、後の祭りのことで……。






               ※      ※      ※






それは、その名の通り時の巻き戻しか。

あるいは、再構成か。


何だかとっても暖かなものに包まれ揺れている感覚。

なるほど『リヴァ』の薬を外で使うと言うか、発動するとこんな感じになるのかなぁ。



と言うか、マイダンジョンで未識別状態で運良くいつの間にか手に入れていたことがあって。

うっかりそのタイミングでやられてしまった時はもっとあっさりしていたというか。

このような特別なエフェクトはなかったずだった。

一瞬気を失ったかと思ったら、気力体力とともに充実して目が覚めるだけで。



やはりマイダンジョンと他のダンジョンでは効果の程が違うんだろう。

マイダンジョンと何が違うって、何だか身体の色んな部分がぽわぽわして暖かいんだ。

具体的に言うと、後頭部とかお腹の上とか、胸元辺りとか。


っていうか、胸元……ふところなどは特にあったかというか、モフモフ重いんですけど。

その重みと感触が、俺にとってみれば大分熟れてきているものであって。


これはもしやと目を開けると。

そこにはさかしまの状態似て見える、桜色の髪の天使な少女と。

下から覗き見上げるようにしている、黒髪ツインテールの天使……と言うより小悪魔めいた少女の姿が見えて。

 


「……主どの! 目が覚めたかのっ!?」

「もう、マスター! あんな無茶して、あんなにもまっかっかになって、夢に見ちゃうでしょう!」

「そうだよジエン! いきなり早口で何か言われても分かんないよ! 死んじゃったかと思ったじゃないかぁ!」


どうやらさかしまの天使は案の定ユウキで。

ただただじぃっと俺のことを見上げているのは、チューさんが人型を取った姿のようで。

もう一つの、後頭部の見えないぬくもりの主は、人型になっていてもやけにやわっこいシラユキだったらしい。

 

俺の独りよがりは、真白の雪で見えていないかと思いきやそんなこともなかったようで。

『リヴァ』の薬が外でもちゃんと効くかどうか分からず、咄嗟のことだったから随分と心配をかけてしまったようで。


ユウキたちからすれば、そんな俺の独りよがりな行動をある意味一番よく見えそうな位置で見させられたわけだから。

そりゃぁたまったものじゃないだろう。

 


ダンジョントラップの中には、何度も言うように探索者を瀕死に陥れ、テイムモンスターを一撃必殺……滅してしまうような類のものがある。

そう言う罠にかかる時は、決まって調子が悪い時というか、気を抜いている時が多くて。

それこそ、そんな自分のミスでそのようなショックな光景を目の当たりにしたりしてしまうわけだけど。


未だ慣れることもなく、それこそ毎度悲鳴を上げることとなるようなそれを思い出し。

ただただ平謝りしていると、それまで何かを確認するみたいにじいっと俺のことを見つめていたチューさんが再び口を開いた。


 

「魂のリンクが切れておらぬから無事であるとは言ったんだがの。そうはわかってはいても肝が冷えたわい」

 

ダンジョンコアと魔王ダンジョンマスターの魂の契約、つながり。

もちろん、『リヴァ』の薬ありきでそのまま自業自得で儚くなるつもりなど毛頭なかったわけだけど。

よくよく考えなくったって、俺が死ぬようなことがあれば、コアであるチューさんの命も危機であるわけだから。

そりゃぁチューさんも気が気じゃなかっただろう。

 

いつものようにふところにいてくれるけれど。

態度にそれほど出さずともぎゅっとしがみついている様は。

心配かけて不安を与えてしまったことがありありと伝わってきて。

 

「本当にすまなかった。今度は『リヴァ』の力がちゃんと発揮できているって分かっているから、色々試すにしても、もっと視覚的に優しくなるようなものを考えるよ。例えば『ルシドレオ(透過透明)』のカードを使う、とかね」

「ぬう。そう言うことを言いたいわけではないのだがの。それもダンジョン探求の一つじゃと言われればダンジョンコアとしてはやめよとも言えぬか。まったく、主どのときたら。困ったものじゃのう」



何の気の衒いもなく素直に謝るべきだったんだけど。

恥ずかしさがあって、そんな空気を読めない感じに誤魔化してしまって。

 

でも、それでも。

それすら分かった上で仕方がないのぅと笑うチューさんのことを。

今までとはまた別の意味合いをもって。

しっかと見つめることができそうになくなっている俺がそこにいて……。



    (第85話につづく)








次回は、12月3日更新予定です。

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