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エンドロールには早すぎる~一万回挑める迷宮に棲まう主(まおう)は、マンネリ防止、味変したいと人様のダンジョンに突貫す~  作者: 大野はやと
メイン:エンドロール前

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第79話、ダンジョンマスター、烏滸がましくも次のダンジョンを紹介してもらえる





そんな訳で、中々にお強い刺激に電気がついたり消えたりしつつも。

ちゃっかりその後の顛末については覚えているので、それを語っていきたいと思う。

 


俺としては、もう少し『ユキアート』のダンジョンを堪能したかったのだが。

先だって潜った魔王ミゾーレさん、ダンジョンコアであるリィアラさんのダンジョン、『リリー』こそが『ユキアート』における最難関ダンジョンであって。

『リングレイン』の新たなる流浪の勇者(と魔王)を満足させるようなダンジョンはここにはない、とのことで。



リィアラさんとしては。

体のいい厄介払い、他の地域のダンジョンへ行ってくれ、ということなのだろう。

そのような勧めがあったのは、リィアラさん手づから生み出す百合百合な物語を見守るため……だけではなく。

ちゃんと理由があるらしい。



「何せよその勇者と魔王どころかコア本人が乗り込んでくるものでしたから、大分テンパっていまして。

すぐには気づけなかったのですが、ダンジョンを生み出していないのらのコアはともかくとして。基本コアやダンジョンマスター(魔王)は、自ら作り出したダンジョンからそう遠くへは移動できないはずなんですけどね」

「……そうだったかのう。自らで作り上げたダンジョンを自身で楽しんでばかりじゃったから、すぐには気づけなんだが。気分転換じゃとのたまってふらっと海とか街とかに行っておったからの」

「よく考えたら魔王ダンジョンマスターが街にやってきちゃうなんて普通ないもんなぁ」

「いやぁ、色々と申し訳ない。この世の全てがダンジョンだと思っているものでして」



そんなわけで。

みんなで『ユキアート』の探索者ギルドへやって来たまでは良かったのだけど。

リィアラさんは、今の時間は図書館の方にいる、とのことであったので。

迷惑がかからないよう、少数精鋭で改めれ向かうこととなった。

 

だから、みんなには街を自由に見学でもしてもらおうかな、なんて思っていたんだけど。

ほとんどは『魔物魔精霊モンスター』バッグの中へ戻っていってしまっていた。

 

何でも、うっかりモンスター(獣型)に戻ったりしてしまったらあまりよろしくないから、とのことで。

俺としては心の安寧のせいなのか、基本的にはみんながみんなマスコット系モンスターに見えているからそのあたりに関しては深くはツッコめず。

 

それでも最後までついていくといっていたくっつきだっこちゃんなヴェノンとピプルだったけれど。

魔王? な俺もそうじゃないいつもの俺も俺である(意訳、今日はもう『変わる』ことはないよ)と口にしたらあっさりバッグの中の世界へと帰っていってしまって。




「う~ん。自分で言っておいてなんなんですけど、お三方ってダンジョンから離れた扱いになっているんですかね。センパイ、いつもジエンさん、魔王さんのそばにいるようですし。『ふところマスコット』ですか? 確かにそれはコアとしましてはありなのかもしれません……こほん、ええと。とにもかくにも私の『リリー』ダンジョンのためにジエンさんたちはとっととよそのダンジョンへと向かっていただいて……って、思わず本音が出ちゃいました。すみません」



雨降って地固まる、などとは俺から口にするのは烏滸がましいが。

リザヴェートさんは男装をしていて、ミゾーレさんは相手に合わせて魔法により男性を演じていたらしい。

俺には初めから二人とも基本逃げ出したくなるくらいには女性に見えていたから。

リィアラさんも含めて俺自身は結構避け気味ではあったのだけど。

 

そんな逃避が生んだ悲しき魔王な俺が、よりにもよってそんなお二人の間に入り込みかける勢いでやらかしてしまったわけだ。

そのまま行くところまでいってしまったのならば、そんな魔王の魅力? にやられて『ユキアート』の勇者、魔王ともども我が軍に加わることになっていたらしい。

覚えていない振りをしていたけど何とはなしに覚えている俺としては、どうしてそんなことになってしまうのか分からない所もあったけれど。

 


そこで頼もしき仲間たち、ファミリーなみなさんがジエンの『それ』はビョーキみたいなものだから、

一旦時間を置いて、自分とお互いのことをよくよく考えて欲しいと訴えられた結果。

お互いが女性であったことはもちろん、ダンジョン(コア)に願った願いが、お互いがお互い、運命の人であると。

そんな運命の人と出会うことこそが望みであったのだと気付かされたらしい。

 

リィアラさんが作り出したその物語は、どうやら100パーセント彼女自身の趣味ばかり、というわけでもなかったようで。

初めは、百合の間に挟まるギルティな俺に対してめちゃめちゃおかんむりであったリィアラさんも。

涙ちょちょ切れるほどに頼もしいみんなのおかげで、鉾を収めてくれて。

それどころか、俺が楽しめて満足できるような、新たなダンジョンへの道行きまで示してくれる、とのことで。

 

 


「ここからも見える『ユーミール』山を登ってもらって……方向としては『リングレイン』と真逆になりますかね。何とか山の反対側に回ってもらうと、『デザビア』と呼ばれる砂漠に囲まれしオアシスの街があるのですが、その砂漠、『ビア』にダンジョンがあるのです。仕掛け、トラップがメインのダンジョンなので、ジエンさんきっとダンジョンを楽しめるんじゃないかなぁって」

「ほほう。砂漠だしピラミッド型だったりするのかな。っていうかリィアラさん、大分詳しいんだな。ご近所だから?」


チューさんが特段他のダンジョンに詳しくないってわけでもないんだけど。

チューさんと比べても、ダンジョン熱だって結構高いと思うんだよね、リィアラさんは。


 

「ええ。その、『デザビア』のダンジョンコアは、同級の友人でして。知っているコア同士ならばある程度通信、連絡が取れるのですが、最近ちょっと音沙汰が無くて。連絡がないのは無事……ダンジョン運営で忙しいとも言えますが、確認がてら足を運んで頂けないかなあと思いまして」



そんなリィアラさんは。

淡々とはしつつも、その友人なコアさんのことを心配しているのがよくよく分かる、そんな様子で。


実は友達がいないからコア同士のコミュ二ケーションが取れないでいたのかと。

地味に凹んでいるセンパイコアなチューさんのことにも、気づくことはなく……。



  (第80話につづく)








次回は、11月3日更新予定です。

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