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エンドロールには早すぎる~一万回挑める迷宮に棲まう主(まおう)は、マンネリ防止、味変したいと人様のダンジョンに突貫す~  作者: 大野はやと
メイン:エンドロール前

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第78話、魔王、別人格がいると思わせておいてこっそりデバガメしていた




 本当ならば、面倒くさい……じゃなくて、熱戦が終わった後すぐにスライディング土下座でもなんでもしなくてはいけなかったのに。


なんて、自分自身に言い訳しつつ。

『ユキアート』のダンジョンコアであるリィアラさん、勇者のリザヴェートさんに魔王のミゾーレさん、そして、意識がどこかへ行ってしまっていたことによるやらかしの一番の被害者であるらしい魔王パーティーの一人であるリーズさんとは、改めて場を設け面と顔を合わせお話する必要があるのだろう。

 

そんなわけで、とりあえずはギルドへ向かわなければと足を向けかけたところで。

何やら慌てた様子のみんなの声がかかる。


 

「あっ、ごしゅじんさまぁ、どこ行くの?」

「主殿と言えど病み上がりであるのですから、今日ばかりはゆっくりなさっても良いのでは?」

「わたし、見守り係、つづける?」

「いや、何だか最近寝てばかりで元気いっぱいだから、ちょっとギルドに顔を出しておこうかと」

「ちょっとマスター! まさか一人で行く気!? せめてわたしを連れて行きなさいよ!」

「またなの? ご主人さまっ、どうしてボクを頼らないのさぁ!」


自分のケツは自分で拭く、じゃあないけれど。

こっそり一人でいくつもりが全くなかったと言えば嘘になるだろう。

そのあたりをすかさず責め立ててきたのは、アオイとスーイで。

俺という人物に慣れ出してきてしまっている残りのみんなの解釈は少々異なるようであった。

 


「ふむ、わしゃあふところのますこっとじゃし、いつぞやのように待機命令があったならともかく、そのようなことは考えたこともなかったの」

「ぼくもだよ。だってぼくはスタメン、だからね」

「オレは改めて魔王なジエンの一面を目の当たりにしたからなぁ。目を離したらって思うとあれだし、ついてくるなって言われてもついていくぞ」

「うぴゅう。だって、だってぇ。ボクいっつもお留守番で、置いていかれちゃうのかなって思ったからぁ」

「大丈夫大丈夫、置いていったりしないよ。今回はフェアリが言うようにスタメン、外に出てそばにいてくれればいいから。ついてきてもいいって人は、それこそみんなね」

「ほんと!? それじゃあ、ついてく~っ」

「そ、それはっ。ええと。考えてあげてもいいけどっ」

「っていうかそもそもマスタ~がその気ならわざわざギルドに行くとか口にしないんじゃないの~?」

「ふむ。であるのならば此度はともかく、次回から召喚指名された時はスーイ殿、もっと積極的に行くといい。まあ最も、私もそれを次回こそは譲るつもりはないが……ってぇ!? ピプル殿ぉっ!?どさくさに紛れてヴェノン殿まで!? いつまでそんなうらやま……主殿にくっついておるのだっ!?」

「もう、いつも騒がしいのに今日は静かだなって思ってたら、のんってば。ある程度堪能したら、次はぼくだからね」

「んー、なにってぴぷちゃんのまね~。かっこいいごしゅじんさまがいつ出てきてもいいようにかんし、してるの~」

「真似されるの、照れる。わたしはのんほどまだ大胆にはなれないので、手をつなぐ、よ」


ディーが何やら恥ずかしがっていたということで。

引き続き俺の監視役となって手をつないでいるピプルには、ようやっと慣れては来ていたからまあいいとして。


問題は肩から背中にかけておんぶされる形でしがみついている、ゴムまりめいたすんぐりむっくりなこうもりさんだァ!

ううん、背中の感触が天国、じゃなくて苦しい!

このままではせっかく気合入れ直してきたのに気絶してしまうっ。

無になるんだ、むにっ!?

ごはぁっ! 自ら刃を突き立ててしまったぁ!



……だなんて、心うちで激しい戦いをしつつも。

シラユキが言うように、アイテムスキルを使ったのならばここから抜け出すことも一人でこっそりギルドへ向かうのだって容易ではあるんだろう。


しかし、それをしなかったのは。

何だかんだ意識を失ったりしなかったりしつつも、この夢のような状況が悪くないと。

甘んじていたい、なんて思っていて。


いつかのピプルの言葉を借りるとするのならば。

妄想だなんて目を逸らすくらいならばブラックアウトしてでもみんなをちゃんと見続けていたかった、と言うのもあるんだろう。




「よっし! それじゃあせっかくだし、行きたい人行ける人みんなでオハナシしにギルドへ行こうか!」


とは言いつつも果たしていつまで保つか。

そんな内心をおくびにも出さないつもりで、俺はそう宣言し、ようやっと『ユキアート』のギルドへと向かうのだった。



……ちなみに、そう長くは保たなかった事をここに記しておくけれど。

みんなが、言うところの魔王っぽい俺は。

よくよく聞くところによると、目を閉じてたままというか、夢遊病者のようであったらしい。


そこから判断するに、俺の能力スキル、『プレッツェン(広範催眠)』によるデバフ、反動を受けて元気一杯になってしまうのも含めて。

予めかけておいてあるスキル能力仕掛けがごっちゃになって、進化して表面化した故の結果、なのだろう。

 

けっして別人格とか、『もう一人の自分』が存在しているとかそういったリィアラさんが言うような物語的に楽しい展開などではないのだ。


何故ならば。

みんなの手前、一体俺が眠って意識失っている間に何があったんだァ! ムーブをしていたけれど。

うっすら、うっすらではあるけれど意識を失っている間のこと、なんとはなしに覚えているからだ。

 

……夢だと思いたいくらい俺自身はっちゃけていて。

たいへん恥ずかしいことこの上ないからまぁ、言わないけどね。



   (第79話につづく)









次回は、10月28日更新予定です。

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