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エンドロールには早すぎる~一万回挑める迷宮に棲まう主(まおう)は、マンネリ防止、味変したいと人様のダンジョンに突貫す~  作者: 大野はやと
メイン:エンドロール前

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第77話、魔王、ちょっと口にはできない本性に恐怖する





「だから何度も言ってるじゃないかぁ! あれはボクだったんだって! ごしゅじんのカードの力にボクが割り込んで、ごしゅじんのまねをしてたんだよぉ!」


ピプルの言葉通り、何だか久方ぶりに顔を見るような気がしなくもないどころか。

知っているようで知らないはずの女の子たちの姿が見える。



「そうは言ってものう。わし自身主どのが出て行くのを見ていておったからのう」

「ふうん。つまりはいつの間にかかわっていたってことなのかな。でも、ご主人さまが見てくれていたのは確かだよね。ぼくが、ご主人さまの熱い視線を間違えるはずがないもの」

「こっそり見ていたのか、堂々と見ていたのか、いったいどっちなんだろ? もう、オレは男だってのに」

「だからそれはぁ、ボクのレベルアップを見守ってくれてたんだよ! こうして遅ればせながら進化してお話ちゃんとできるようになったし!」

「くぅ。それほどまでの研鑽があったと言うのかッ。私の出番が無かったのが悔やまれるッ」

「へへん。残念だったねぇ。雪合戦楽しかったよ~」

「でも、シースルーの衣装を着させられたんでしょう? マスターってば相変わらずエッチなんだから」



ぬぐう。何だかイロイロと好き勝手議論していらっしゃって。

とっても入りづらい事この上ない感じですが。


どうやら進化して会話ができるようになったと発言した、海色ボブカット大きな蒼色の瞳の少女は、案の定アオイのようだ。

ひょっとしなくても、俺の代役だなんて面倒事をこなしてもらった結果、俺の妄想と言うよりも進化レベルアップ条件を満たして魔物魔精霊の種族階級が上がり、『獣型』から『人型』……少女の姿をとれるようになったらしい。


進化して姿かたちがすっかり変わってしまうくらい、随分と得難い経験をなさったようですね。

俺としては、その辺りをもっと詳しく聞きたいのだけど、一度は『魔物魔精霊モンスター』バッグに退避するくらいであったのだから怖くて聞けません。

……まぁ、アオイの場合、最も進化の早い、通称青スライムとも呼ばれたりする、『フェアブリッズ』なる種族であるからこそ、一日で全くの別人になるようなこともあるのだろう。



そうなってくると。

ユウキとはタイプの違う(もう忘れかけていたけど、ユウキは『異世界への寂蒔』におけるヒロイン、サムライガールな雰囲気があるのだ)、言うなれば騎士めいている、亜麻色の長い髪え後ろ手に纏めた、琥珀の瞳持ちし……そんなお顔以外は全身鎧を身に纏う少女がディーなのだろう。



妄想が解けたのか具現化したのかは議論の余地があるが。

元々は、赤銅色のフルアーマーの正しくリビングアーマーめいた様相であったから。

中身があったんだな、なんて思う以上にそんな凛々しい中の人がいただなんて驚くばかりで。



さらにさらに。

動物で言うのならば元は猫種でありながら、ハリネズミめいたとげとげに長い毛を持っていたスーイは。

何やら帯電している気がしなくもないそんなとげとげ帽子を被った、魔法使いめいた少女へと変貌していた。

栗色おさげ髪の、琥珀の瞳持ちし少女の、ツンとおすまししていながらも大分誤解がありありな言葉を聞いていると。

やっぱり一旦間を置いたほうがいいかなぁ、なんて思ってしまったけれど。

地味に背中に取っ付く勢いでがしがし俺にダメージを与えていたピプルに押される形で、そんなかしまし会議真っ只中へと放り出されてしまって……。




「つぎ、ディーのばん。だけど残念。あるじ起きちゃった」

「や、やぁ。どうも。起きてきてしまって申し訳ない」


そんな言葉通りそのまま土下座する勢いでお邪魔すると。

まさかこんなにも早く起きてくるなどとは思っていなかったのか、みんなそれぞれらしいリアクションをしてくれる。



「主どの、お目覚めでしたか! 此度のご活躍とくと耳にしたところです。次回は、次回こそはこの私めをご指名いただきたく!」

「え? あ、うん。その時は頼むよ」

「ディーってばずるいわ! 次はわたしなんだからね! えっちなことはダメだけど、わたしが必要なら呼ばれてあげてもいいわ!」

「本当かい? ってか何か勘違いしているっていうか、俺が寝て……意識飛ばしている間、一体何があったのさ」


ディーは今まで、自分が必要となるような状況ではないからと。

スーイは恥ずかしがり屋のツンデレさんであったから、あまり呼んでも応えてくれなかったのだけど。


やっぱり、俺が意識を飛ばしている間に良い意味でも悪い意味でも何かやらかしてしまったらしい。

雪合戦の最中は、アオイがイメージしていた俺で、まだ言い訳の余地があったのかもしれないけれど。

話を聞いていると、信じがたいことにその後のブラックアウト中の俺は、どうにも大分調子に乗ってしまっていたようで。



「……ふむ。普段の主どのとは違う、意識失った時にしばしば現れる主どののことじゃの。かの主どのこそが、魔王としての本来の姿なのじゃろうかの」

「ジエンってばみんなで一緒には駄目だって言ってるのに強引なんだもんなぁ」

「リーズさんに責任とってくださいましって言われて、いくらでもとってやるともってセリフは、まぁわたしはカッコいいかなって思ったよ~」

「ミゾーレさんの元を離れるわけにはいかないからって諦めてはくれたけど、そうじゃなかったら新しい仲間が増えるところだったよね。まぁ、ぼくはみんな一緒でも、仲間が増えても歓迎するけど」

「わたしは、今のあるじの方がいい。たまには強引なあるじも悪くないとは思うけども」

「いや、ちょっとだから何の話をしてるの!? 何か怖いんだけど!」



次々と矢継ぎ早に飛んでくる言葉はそれぞれ共通の話題なようで、そうでもないらしい。

思ったより否定的なものが少ない? のがせめてもの救いではあるけれど。


これは、今の今まで寝ていました、知りませんでしたじゃすまなそうではあった。

少なくとも記憶を飛ばす直前のリィアラさんと、シラユキが言うところの魔王パーティーのひとりである、おそらくはヒーラーらしき女性、リーズさんはお怒りのようであるわけだし。


改めてもうちょっと詳しく聞き込みつつ。

場を設け誠心誠意謝罪しなければと。

やっぱりちょっとはっちゃけすぎな自身に言い知れぬ恐怖めいたものを覚えつつも。

そう、思い立って……。



    (第78話につづく)








次回は、10月22日更新予定です。

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