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エンドロールには早すぎる~一万回挑める迷宮に棲まう主(まおう)は、マンネリ防止、味変したいと人様のダンジョンに突貫す~  作者: 大野はやと
メイン:エンドロール前

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第73話、魔王、少しずるいなと思ってしまってた虎の子を取り出す




マップを常時展開していたことで、申し訳なくも現場を離れることができた俺は。

準備万端に過ぎる俺に未だ気づいていなさそうではある黒色点の方へと向かう。


どうも、彼らが急にこの『リリー』ダンジョンに現れたその目的は、最下層付近にいる誰からしい。

それならばと俺は、そんなあってないような通り道、射線に入るように待ち構えるようにして。




「お、きたきた。んん? 何だかどこかで見たことが……って、『雷獣の一撃』の皆さんじゃないか」


ダンジョンの壁を透過できる能力、持っていたのかな。

……いや、違うな。

あれは、何者かに憑かれているみたいだ。


ここは『異世界への寂蒔』じゃないけれど。

モンスターの中には、倒すと魂のような存在になって、他のモンスターへと取り憑き、そのものの存在階位、レベルを上げることができる種が存在する。


それすなわち、こちらのレベルアップのための経験値も跳ね上がる、ということで。

狙って取り憑かせて、レベル上げに勤しんだのは記憶に新しかったが。


そんなある意味おいしいモンスター、『スピネル・ソウ』。

『異世界への寂蒔』に出てきたのは、ゴーストめいたものだったけれど。

よくよく考えると、『雷獣の一撃』の皆さんに取り憑いているものが、同じモンスターとも限らないんだろう。


はてさてどう対応するべきかなと。

そのまま射線を塞ぎつつ正面切って睨み合う形でいると。

先頭で飛び込んできた『雷獣の一撃』のリーダーである騎士職のデラスさんを皮切りにして、皆が皆次々と喋りだしたではないか。



「……邪魔者は、ハイジョする」

「ロールを放棄した……コマには死を」

「反逆者である、コアには……」

「報いとなる……ホロビを与えん」


溢れるのは、敵意も殺意もないけれど、有無を言わせないもので。

二分の一の速さになっていて、大分聞き取りづらかったけれど、聞いて損しかない類のものでもあって。


それらを咀嚼するに、話し合いの余地はなさそうというか、排除、滅しようとのたまうのならば先手必勝で同じ目にあっても文句は言えないだろうと言うことで。


彼らが戦闘態勢に入るよりも早く、戦いの火蓋を切らせてもらうことにして。

手始めに、今いるフロア一体に効果を及ぼす『プレッツェン(広範催眠)』の本を開き、能力を発動する。




「……っ!」


反射や、能力の効かない可能性を考慮して、装備品を変え整えていたわけだけど。

取り憑き先の『雷獣の一撃』の皆さんには、取り敢えずのところ睡眠の耐性はそれほどでもなかったようで。

発動してすぐに、糸が切れたように倒れ出す『雷獣の一撃』の皆さん。


『プレッツェン』の本は、いつだったか解説した通り、ワンフロア内にいるもので、俺自身と俺に触れているもの以外を、敵味方関係なく眠りに誘うものである。

受けたものの耐性、耐久にもよるが、それを受けて受け入れたのならば。最低3ターンは目を覚ますことはないだろう。


味方も食らってしまうのは、一見デメリットしかないようにも思えるが。

他の状態異常、特に『デ・イフラ(幻惑混乱)』カードにて混乱した場合の行動制限ができるし、ひとたび覚醒したのならば、ぐっすり眠って元気一杯になったことへの証左なのか、しばらくの間倍速で行動できるようになるといった反動、副作用が存在する。


そこだけ切り取ると敵性に使うのは、それなりにリスクが伴うわけだが。

そのための対処として『ヴェロシアップ(倍速行動)』のカードを重ねがけしたわけであるし、万が一倒す前に起きてしまうようなことがあったのならば、もう一度『プレッツェン』の本を扱えばいいだけで。




「でもってお次は、と」


あまり数持ってないんだよなぁ。微妙に使いどころがない……レアだし。

四人パーティーな少数精鋭でやってきてくれて助かったな。


俺はそんな事を思いつつも、『ノタンブル(転先置杖)』のカードをちょうど四枚取り出して。

『雷獣の一撃』の皆さんにそれぞれ投擲、付与する。


『ノタンブル』のカードは、持っているだけで落し物を防いだり、敵性による装備アイテムの盗難、紛失を防いでくれる、実は一枚は持っておきたいカードではあるが。

何故か対象に投擲することで、逆の効果……受けたものが後生大事に持っているものを弾き落とさせることができるのだ。


今回の場合は、正しくも憑き物を落とすように。

『雷獣の一撃』パーティーの皆さんからそれぞれ剥がれ、弾かれるように黒いもやのようなものが飛び出してくるのがわかる。

それらは、徐々に何らかの……人型めいた形を取り戻し始めていて。



「おっと、そうはさせじとってね。ちょっとばかしこっちも痛いわけだし、勘弁してもらおう」


相変わらず相手に何もさせない感じが申し訳なくなって。

取り出したるは、『ダブルエッジ(諸刃調整)』のカード。



それは地味によくよく扱うので、初めの持ち物ラインナップにはなかったけれど。

実はダース単位で在庫を抱えているもので。


多種方面で扱える、正直言ってずるっこいなぁと思わずにはいられない、そんなカードで……。



   (第74話につづく)









次回は、9月28日更新予定です。

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