表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/179

第7話、ダンジョンマスター、初めての勇者との場所替え



そもそもこっちの世界に来てからというもの、俺のイメージするような『魔王』らしいことなど何一つしてこなかったわけだが。

無数あるダンジョンの数だけ存在する『魔王』……俺以外の『魔王』達には、『勇者』に討たれるような理由があるのだろうか?


中には、まさに『魔王』らしい悪逆非道なロールプレイを行いたいって人も少しくらいはいるのかもしれないが。

ここ最近は悪い『魔王』じゃない事なんてゲームでも物語でもザラだし、はたしていつか討たれる悪役をやりたいなんて人が、そうそういるとも思えない。


俺としては、とりあえずの肩書き説を推したい。

ダンジョンを創る人、ダンジョンコア側の召喚された人たちを『魔王』と呼び、

ダンジョンを攻略する側、コアを破壊する側を『勇者』と呼ぶのだと。




流れとノリで、ダンジョンコアであるチューさんを懐マスコットにして連れ歩き、ダンジョンを攻略せんとする俺は、実際はきっと『勇者』でも『魔王』でもないイレギュラーなのだ。

だから可愛い女の子勇者がピンチなら助けに行くし、そろそろほかのダンジョンにも潜ってみたいと思うわけだ。


そんな自由勝手な行動をする俺を、ここに連れてきた誰かはどう思うだろう。

ただ黙って『魔王』の職務をこなす。

それ以外の道が、こうして示されている時点である程度は予想の範疇なのではないかと思うわけだが。




「よし、せっかくだし惜しみなく使おう」


人のダンジョンにお邪魔するつもりでいろいろアイテムスキルを用意したのに使わずに帰ってきてしまったからちょうどよかった。

元々持っていた物も含め、いくつか追加で使えそうなアイテムスキルを持ってきている。


俺のアイテムスキルが俺以外のものにどんな効果と影響を及ぼすのか、試す意味も込めて。

まずは一枚のカードを取り出した。


虹色に輝くレアスキル。

倉庫をあさっても、六枚しか持っていない『サンクチュアリ(破魔聖域)・カード』だ。




カードの使い方は……

自らのプライベートスペース(1ターンで動ける範囲)に『配置』するか。

目視できる範囲に効果が及ぶようにカード名を名乗り上げ『使用』するか。

何かにぶつかるまでは届くというおすすめ仕様の、カードを手に取りかっこよく二本指かなんかでシュッと『投擲』する、といった三通りになる。



『サンクチュアリ・カード』は主に、自身の足元に『配置』する事により効果を発揮する。

何やらそれっぽい呪文と絵が描かれたカードを表にそっと地面に置くと。

カードはすっと地面に吸い込まれ、瞬間足場がカードの配色でもある七色に光り出し、天井まで続く円筒形のカーテンのようなものが現れた。


遠距離攻撃を中心に、ほぼ全ての敵性攻撃を無効化する使いきりのスキル。

それがしっかり発動しているのを確認すると、お次に取り出したるは、銀色が眩しい一枚のコモンカード。


使用回数が軒並み多いのは、同じ種類のものをいくつも集めては、15階まで降りて脱出スキルによりホームに帰還し、入れると同じ種類のものをギュッとまとめて1つにしてくれる『ポッジズ(錬金融合)』のバッグを使用したからだ。

 

 

俺が銀色の『カード』を手に持ち使用のタイミングを測りつつ使う事へのイメージしていると、懐からチューさんがひょっこり顔を出す。

さながら、お手並み拝見と行こうか、なんてご様子。

俺が一つ頷くと、地図上で俺たちが転移してきた行き止まりの、少し大きめの部屋へと入ってこようとする黄色い丸の点滅が目に入って。

 


(来たっ)


息つく間もなく駆けてくる、画面越しではない桜色の髪の少女。

地図上で見ると俺達の色は赤で、彼女に対して敵性を表していると思うと複雑な気持ちだが。

このマップも誰にでも見れるわけではないそうなので、こちらを覚られる前にさっさとやること済ませてしまう事にする。




「……【ウェルスランバー(場所置換)・カード】っ!」


 それっぽく力込めて、カード使用を宣言。

更に二本の指で挟みつつ投擲すると、カードはすっと中空に溶け消え、銀色の光が渦巻いて愚直に一直線に前方へと打ち出される。


そして、瞬き程の瞬間に、今まさに部屋に入ってこようとする少女に命中した。



「なぁっ!?」


驚きの悲鳴を上げる暇もあらばこそ、まさに気づけば俺と彼女は立ち位置を入れ替えていた。

彼女は、外からの攻撃を受け付けない七色の光の円筒の中に。

俺は今まで彼女がいた場所に。


「……成功、だな」


ダメージのないものだったからそんなに心配はしてなかったけど。

『ウェルスランバー・カード』は、モンスターや自分以外に一度は使ってみたかったスキルだったので、思う通りにいってよかった、といったところか。



閉じ込められているわけではないんだけど、触れたらまずいものだ、とでも判断されたのかもしれない。

光の円筒から出ようとせず、しゃがみ込むようにしてこちらを見つめてくる彼女の視線が熱かったが、自己紹介よりもやらなくちゃいけないことがある。


か弱いかどうかはまだはっきりしないけど希望……そんな美少女を追い掛け回す俺から見た悪党どもを懲らしめるのだ。


仁王立ちして背中を向ける俺。

イケてるといいな、などと思いつつも。

眩しすぎて逃げ出したくなる気持ちを誤魔化しながら。


いよいよ、とばかりに追いついてきた三人の男どもを睥睨して……。



    (第8話につづく)








第8話はまた明日更新いたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ