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エンドロールには早すぎる~一万回挑める迷宮に棲まう主(まおう)は、マンネリ防止、味変したいと人様のダンジョンに突貫す~  作者: 大野はやと
メイン:エンドロール前

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第67話、ダンジョンマスター、立てたはずの分身に違和感を覚える




今まさに、手に汗握るような……俺が入り込んではいけない熱い熱戦が繰り広げられようとしている。


この様子だと、『ユキアート』のダンジョンに合わせて新調した装備も、熱気と雪玉に当たったりして着てなどいられない事態が起こりうることだろう。

その状況で戦場に居残っていたのならば、すぐには逃げられ……じゃなかった。

どうやら、勇者と魔王両名が、性別を偽りながら対し語り合っているようで。

そんな、戦いの最中、正真正銘な緑一点なお邪魔虫が間に挟まっているのよろしくはないんだろう。



俺は、そんな本音とは違った表向きの作戦をぽろりしそうになっているチューさんのもふもふ(思ったよりではない)お口を塞ぎつつ。

敢えてのドヤ顔をつくりつつもみなさんの反応を待つことにして。




「それって……いや、何でもない。まぁ、正直ジエンの出る幕はなさそうだしなぁ。あの氷のゴーレムたちと戦えばいいんだろう? なんだかちょっと、わくわくしてきたな」

「わたしだって折角出させてもらったからにはお仕事しなくちゃねって思うわけですよ~」

「それなら、うん。ぼくら三人がお手伝いするってことでいいのかな」

「まぁ、突然のことだし、こちらから無理を言っているわけですからね。そんな感じで……その、よろしくお願いします」



案の定、どう見てもあぶれている俺が引くことでうまく回りそうな感じで。

『リリー』ダンジョンに潜る前は、取り巻きのみなさんなどは、結構高圧的にも見えたけれど。

一時的にでも仲間になるからなのか、やはり俺が参加しない、その場から離脱するからなのか、

かしましくもこれといってこじれることもなく、スムーズに作戦会議は続いていって。





(して? 見学に回ったのは、何か理由があるのかの? まさか本当にみなのあられもないくんずほぐれつが怖いから逃げ出すわけではあるまい?)


な、なな何をおっしゃいますかこのはいてない系マスコット様は!?

まさにその通りですけど何か!? ……じゃなかった、実際にドンパチするわけでもないし、そんな過激なことが起こるわけないでしょうが! たぶん。


(……あぁ、うん。緑一点な状況にストレスマッハなのはあるけどもさ。それだけじゃなくてコアだよコア、チューさんの級友なお友達! 願いについてとか、勇者と魔王のこととか、ダンジョンのこととか聞けるかもしれないだろう? 近くにいるって言うんなら、せっかくだし今のうちに会いにいくのもありかなぁって思ったわけさ)

(ふむ? まぁそれで一応納得しておこうかの。しかしこの場はどうするのじゃ? 離脱するのはどうとでもなるとしても、いないと気づけばせっかくはりきっておるシラユキをはじめとする皆ががっかりするのではないか?)



もちろん、そうであるからといってチューさんと離れるのは論外である。

カードもブックも使っていないのに、もはや自然に心と心で会話できていることに何とはなしに感心しつつも。

俺は、後ろ手にいつもの必需品に加えて、初出しのカードを一枚取り出して見せる。


『ドゥヴェルダ(分裂模倣)』のカード。

本来はレアアイテムを落としたり、フェアリレベルの最重要テイムモンスター、あるいは経験値を多く持っていたりするモンスターに使って倍に増やすことのできるカードである。


それだと一見、仲間のコピー、自身の残機を増やせそうにも見えるけれど。

仲間や自分との差異として、『デ・イフラ(幻惑混乱)』がかかった状態で生まれてしまい、同士討ちを始めてしまう危険性もはらんでいる。



(故に、ここでひとつまみ。もはやお馴染みの『イロトラン(硬化不動)』を重ねがけしておくのだよ!)

(おお、まさに主どのの身代わりをたてる、というわけじゃな)


俺は頷きつつ、それによりとらぶるめいた事態が起こるかもしれないその場にいなくてもすむだろうと。

早速とばかりに、引き続き作戦会議で盛り上がっているとはいえ、こちらに注目しないとも限らない万が一を想定して、『ヴェロシアップ(倍速行動)』のカードを自身に使い、その効果の及ぶふところ内にチューさんをしまっちゃうと、早速『ドゥヴェルダ』のカードを自身に使ってみる。


敢えて難点を上げるのならば、ほとんど意味がなかったから(珍しい攻略失敗パターンをコレクションする時に使うくらいか)、自身に使ったことがなかったということで。


混乱した状態生まれてくる自身のコピーへの素早い対処と、周りのみんなの目を盗む形で。

ダンジョン外で使うこと、初使用であることも含め、不測の事態のために使用した『ヴェロシアップ』のカード。

敵味方に限らず、ダンジョン的に言えば1ターンで二回行動ができるようになるもので。

増えてしまった俺を見咎められる前に。

俺自身に『ルシドレオ(透過透明)』のカードを使いつつ『イロトラン』の薬を生まれ出でた俺の身代わりへと使おうとしたその瞬間であった。




(おぉ、主どのが消えたと思ったら主どののニセモノかの? なんじゃ、どこかで見たような気がするんじゃが)


きょろきょろしつつ、変わっていく俺たちを見て驚きの声を上げつつ首を傾げるチューさん。

見下ろせば、中空にチューさんが丸まって浮いているように見えたので、同じく『ルシドレオ』のカードを使いつつ、その場を後にしようとしたのだけど。

言われてみると、俺の偽者であるはずの、カチカチに固まっているはずの分裂体がぷるるんと震えた気がして。


それにはっとなったところで。

何故だか『イロトラン』が効いていないのか。


チューさんの言うとおりどこかで見たというか、聞いたことのある。

『ぴぎーっ』だなんて。

あまりにもらしさ全開な鳴き声が木霊して……。



     (第68話につづく)








次回は8月26日更新予定です。

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