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エンドロールには早すぎる~一万回挑める迷宮に棲まう主(まおう)は、マンネリ防止、味変したいと人様のダンジョンに突貫す~  作者: 大野はやと
メイン:エンドロール前

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第63話、魔王、やはり正体を気取られているような気もしたが、それより背中に隠れたい



知ってはいたけれどそれはこちらも同じです、とばかりに。

名乗り挨拶をしてくる(何故か俺に向かって)リザヴェートさん。



「……申し遅れました。私は『ユキアート』の勇者リザヴェートです。『リングレイン』の勇者さまは代替わりしたばかりと聞き及んでいますが、『リングレイン』のダンジョン、魔王をおいて、『ユキアート』へ参った理由のほどは、お聞きしても?」

「ええと、それは……」

「『リングレイン』のダンジョンは未だ先が見えぬでの。こちらのダンジョンのように魔王と邂逅することも早々まかりならぬ。ゆえにこちらに参って魔王なるものが、ひいてはダンジョンが一体どういうものなのか勉強させていただくために参ったわけじゃな」

「そう、そうなんです!」


早々まかりならぬどころか、ここにいますけどね。

なんてことはもちろん口にはしなかったけれど。

チューさんが、パーティーの参謀役な立場で、そんなチューさんに支えられている若い勇者がユウキであることを理解してくれたらしい。


リザヴェートさんは目立っていたこちらに気づいた時。

リィアラさんご指名で俺が志願して勇者役をすることを気づいていたわけでもないだろうに。

俺の方へと向かってきていたけれど、そんな二人の背中に隠れている俺を目の当たりにしたことで、結果的にはうまいこと俺がパーティーメンバーのお荷物……じゃなかった、荷物持ちのような立ち位置であることを分かってもらえたらしい。


そのままどこか思いつめた様子でチューさんに声をかけようとしていたけれど。

どうも素で何だかチューさんが偉そうかわいいのがしゃくに触ってしまったようで。

リザヴェートさんの後ろについて会話に混ざりたそうにしていた取り巻き……じゃなかった、

パーティーメンバーの皆さんが順々に口を開くではないか。




「ちょっとその言い方だとうちらのダンジョンを下に見ているようにも聞こえるんですけどぉ?」

「それは少し心外ですね。私たちが目指すダンジョンの魔王ミゾーレさまは、神出鬼没なのです」

「それこそ気まぐれでね、いきなり一階層で鉢合わせることもあるんだ。故に『リリー』ダンジョンは、リザ様率いる私たちパーティーのみで攻略にあたっていたのだから」


街に繰り出してきて、勇者や荷物持ちのふりをしている魔王に比べれば大人しい方じゃななかろうか。

なんて思いつつも、女性陣の圧が強くなってきたのでこっそりフェアリやシラユキにも俺の前にいてもらう……お話に加わってもらうことにする。


ちなみに、騎獣は見えないけれどどう見ても青髪を後ろ手にまとめた女騎士さんな方がエリーズさん。

スタンダードな【セザール】魔法に類する回復魔法を扱う金髪ロングなヒーラーさんがミライアさん。

ローグというよりレンジャーっぽい出で立ちの赤髪短髪の盗賊さんがルルナさんというらしい。

(お名前の方は、後にユウキたちが仲良くなって知りました)



自然としゃちほこばってしまうのは。

気づけば周り近くに女性ばかりな状態に気づいたからなんだろう。


それでもどこぞの主人公さまのように逃げ出すことなかったのは。

むさいおじさんお兄さんのもとへ行くよりはなぁ、なんて思ってしまったのと。

比較的に慣れてきてちゃんと見られるようになってきた我が軍……みんなが前にいてくれたからなのだろう。



「いや、そんなつもりはなかったんじゃがの」

「きみたちの受け取り方じゃないのかな。普段からそう思っていたとか」

「フェア姉言うねぇ。まぁ、わたしからしたら未だ勝負がついてないのは一緒なんだからどっちもどっちかなって思うけど」



なんて事を考えているうちに、やっぱり逃げ出したくなるバチバチが展開される。

だけど、当の勇者二人が、前面に出てきてしまってバチっている取り巻きさんを見て逃げないもののおろおろしているのが、逆に真の勇者たる所以、証左であるのか、などと益体もない事を思っているうちにも三人以上よればなんとやら、姦しさがいっそう増していって



それを見ていたリィアラさんが、そこに加わる勢い……いいぞいいぞ、お話のネタになるぞ、もっと、もっとぉ! などといった圧が伝わってきて。


やっぱり、そういうのが嫌いな主人公めいてその場から一旦離脱すべきかと考え出したところで。

何故かリザヴェートさんがはっとなって、そんな俺に向かって? 声をかけてくる。



「い、いずれにせよまずは私と魔王との戦いを見ていただきたい。場合によっては手を出さずにいてもらえると助かるが」

「ふむ。その言いようじゃとひとたびダンジョンに潜れば憂いなく会えるような言い方じゃな」

「……ええ。それはもちろん。勇者と魔王は惹かれあうようにできていますから」



―――そう、あなたたちのように。


去り際、俺たち……俺に聞こえる程度の確信めいた言葉を残したその瞬間だった。

魔王さん……ダンジョンの準備ができたらしく、挑戦するみなさんは集まってください、といった、

リィアラさんとは別の受付嬢さんの声が聞こえてきたところで。


リザヴェートさんは。

取り巻きみなさん、パーティーメンバーを引き連れて。

先陣切るように、ダンジョンの入口があるらしき方へと行ってしまって……。



    (第64話につづく)








次回は、8月4日更新予定です。

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