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エンドロールには早すぎる~一万回挑める迷宮に棲まう主(まおう)は、マンネリ防止、味変したいと人様のダンジョンに突貫す~  作者: 大野はやと
メイン:エンドロール前

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第54話、魔王、気絶しちゃう頭突きをくらってだんだん我にかえる




「やっほほーい! 今度こそわたしのでばんーっ! ごしゅじんさまぁ!!」

「ぐふほぅっ!?」



なんだ、やっぱりどこからどう見てもマスコット的テイムモンスターじゃぁないか。

なんて思ったのは一瞬のことだった。


長い長い、確かにフェアリによく似た黒色の髪。

つむじがはっきり見えるそのてっぺんが、物凄い勢いで近づいて来る。


洞窟こうもりの、翼で打ちつつのたいあたりは、単純な攻撃手段としても優秀ではあるのだが。

なつっこい犬のようにひとたび認めてもらえた主に飛びかかってくるその衝撃たるや、ある意味で俺の想像を飛び越えていた。


普通ならばはらわたをぶちまけかねないダメージなのだが。

それに上乗せする形で、甘えん坊で距離の近すぎる少女のスキンシップ的ダメージが加わるのだ。

正直、ブラックアウトして『復活蘇生リヴァ』の薬を自動使用することがなかったのが不思議なくらいで。




「もう、のんってば。……ご主人、大丈夫かい? 当たり所が悪かったのかな」

「えっ? そうなのっ? だいじょぶごしゅじんさま!」

「……あ、ああ。問題ないよ。久しぶりで戸惑っただけさ。っていうかヴェノン、しばらく見ないうちに大きくなったなぁ」

「えへへ。そう? きっとごしゅじんさまのおかげだよぉ」

「何度も言うけれど、今回はレベル上げで呼ばれてやってきたわけじゃないからね」

「えーっ。そうなの? あれわたし楽しみにしてたのにぃ」

「……だから、あまりつれてきたくはなかったんだけど」



元気一杯で妹味のあるヴェノンがいると。

正しくフェアリはしっかりした真面目なお姉さんになるようだ。


フルメンバーが揃っているわけではないから、効率の良いドーピングレベルアップを今このタイミングで行うことはないのだけど。

フェアリはその澄んだ黒曜石の大きな瞳で、くれぐれも頼むよと訴えかけてくる。

俺は一つ頷いて、ぐりぐりを続けているヴェノンを放し、改めてユウキに紹介することにする。

(その間、入れ替わりでさりげなくシラユキに残りの意思持ちお話できるほどにレベルアップしているメンツ……『ディー』と『スーイ』と『ピプル』を呼んできてもらっていることには目を逸らしつつ)



「ヴェノンには新しく加わった仲間を紹介しようと思って呼んだんだ。俺たちダンジョン担当で勇者のユウキだ」

「あ、うん。一応、元だけどね。ユウキ・クサノだよ。よろしくね。ヴェノンさん」

「ふぅん? ゆうしゃ? それってフェアねぇよりつよい?」

「いやいや。一緒にダンジョンまわって十二分に思い知らされたばかりだよ。オレなんかフェアリさんの足元にも及ばないって」

「そんなことはないと思うけど」

「いや、だってオレにはあんな聖女さまとしか思えないような回復魔法使えないし。ちぎれかけた腕が一瞬で元に戻ったんだけど。すっごくびっくりしたよ」



なんと俺の居ぬ間にそんなことが。

でも確かに、フェアリの回復魔法はめっちゃ使えるんだよなぁ。


特に陣形組んでのレベル上げの時など重宝するどころか存在自体が必須で。

……というか、こっちのレベル上げ方法はセーフだよね?

まさかこっちまで禁止だって言われないよね?

なんて事を思い、俺が内心やきもきしていると。


フェアリを褒めあげたのが良かったのか、ヴェノンはぱっと顔をほころばせて。

ついさっき俺にしたように、ユウキへ向かって今度は『ろけっとずつき』をくらわせんと飛んでいゆく。



「わぁっ。やわらかっ! びっくりしたっ」

「フェアねぇの凄さがわかるとは、みこみあるよユウキちゃん! わたしのことは『のん』でいいよ~」

「おおぅ。分かったよ。のん。これから改めてよろしくね」

「ふぅむ。さすがの勇者といったところかの。主どのにも負けぬ人好きする才能があるらしい」



そんな風に、しみじみと呟くチューさんを脇目に。

早速とばかりにヴェノンはユウキと模擬戦したり一緒にダンジョンに潜ったりする約束をしていた。



人懐っこくって子供っぽい所もあるけれど。

我が軍のメインアタッカーのひとりでもあるヴェノン。

戦うことが大好きで、その攻撃手段は三次元でトリッキー。

そのくせ一撃は我が軍最強の火力を誇る。

そんなヴェノンと触れ合うことあれば、ユウキにとって大きな糧となることだろう。



これでぼくの負担がちょっと減るかなぁ、なんて。

面倒見のいいご苦労様なフェアリの呟きに、たまには俺もヴェノンとの触れ合いに参加すべきかなぁ、なんて思っていると。



正にそんなタイミングをはかったかのように。

続き『魔物魔精霊モンスター』バッグからシラユキを先頭にして、初めのステータス一覧の時にも詳らかとなった残りのスターティングメンバー……

『ディー』、『スーイ』、『ピプル』の三人が、呼んでも出てきてもらえないかもしれないなんて。

俺も不安を吹き飛ばすかのように、我先にと飛び出してくるのが分かって……。



     (第55話につづく)








次回は、6月18日更新予定です。

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