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エンドロールには早すぎる~一万回挑める迷宮に棲まう主(まおう)は、マンネリ防止、味変したいと人様のダンジョンに突貫す~  作者: 大野はやと
メイン:エンドロール前

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第52話、ダンジョンマスター、夢を叶えてくれた存在を忘れていた可能性に気づく



いつものように蚊帳の外な俺にはよく分からない、チューさんとリィアラさんのバチバチな攻防戦が繰り広げられる。

などと言いつつもその様子は、何だかとっても仲が良さそうにも見えた。

できるなら、敵対したくはなかったから。

そのまま見守っていると、どうやら勝負はチューさんに軍配が上がったらしい。



私語(大きめ)と、ダッシュのダブルパンチで怒られそうだなぁ、なんて思っていると。

頭の上からふところへと戻ってきたチューさんが、勝ち誇りつつ呟く。




「ふっ。他愛もないの。……じゃがしかし、あやつはこちら側……いや、もしかしたらそれ以上の存在かもしれんの」

「こちら側?」

「うむ。話対した印象じゃがの。わしらのようなダンジョン管理者か、あるいは主どのに近いものを感じたわ」

「おぉ、つまりもしかしなくとも彼女は魔王だったりするのか?」



それじゃあこの本の主人公は自分自身、自作自演なのだろうか。

だったら、いろんな意味ですごいなぁ、なんて思っていると。




「いや、恐らく魔王ではないの。ダンジョンコアである可能性はありそうじゃが。少なくとも同級では見たことがないの。まぁ、後輩かもしれんが……そうでなくば、勇者を召喚したとする神のたぐいか」

「ええ、ダンジョンコアに同級生とか下級生とかあるんだ。なんだか学校みたいだなぁ。まぁ、女神って言われても違和感はないけども」

「うむ。この世界にある、魔王の棲まうダンジョンにつくコアは、みな同じ釜の飯を食うて同じ学び舎で過ごしたものよ。我らが魔王担当で、勇者たちの担当が女神なるもの。そう考えると辻褄はあうが……」



どちらにしても、リィアラさんは俺とチューさんの正体に気づいているのかもしれなくて。

もしかしなくとも、やんわり釘を刺しに来たのかもしれない。




「ふむ。普通ならば魔王がコアごとやってくるなどとあり得ぬことだからの。この『ユキアート』なるダンジョンを中心に、ある意味完成された世界を、かき乱し壊そうする者たちがやってきたと誤解でもされたかもしれんな」

「えぇ。そんなつもりじゃないんだけど。ちょーっと楽しそうなダンジョンを味見、じゃなかった。体験させてもらいたいだけなのに」

「もちろん、勇者と魔王の、じゃろう?」

「さすがチューさん。わかってるねぇ」

「ほどほどにしておくのじゃぞ」



いきなりこの街で、一番楽しそうなダンジョンに挑戦することが簡単ではないってことは百も承知なのです。

物事には、段階ってものがあるしね。

司書のリィアラさんが、管理者の女神さま……あるいはダンジョンコアであるというのならば。

改めてもう一度何とか頑張って会って、そのための手続きお話し合いをする必要があるな。



そういった意味でも、バトルジャンキーな感じじゃなくて良かったなぁ。

下手に敵対するようなことがあれば、ダンジョンに潜らせてもらえなくなるかもしれないし。



ただでさえホームでない、未だ知らないダンジョンなのだ。

ルールを守って楽しくダンジョン攻略していく上で、仲良くするに越したことはないだろう。




なんてやりとりをチューさんとしつつ。

予想してはいたけれど、ベテランらしき司書さんに怒られているリィアラさんを脇目に。

いくつか本を借りてきたらしいユウキたちの姿も目に入ったので。

俺はとりあえずはおすすめの、今代の『ユキアート』の勇者と魔王について書かれている小説を手に取り、借りていくことにして……。




                ※      ※      ※




「成果のほどはどうかのう?」

「とりあえず『ユキアート』の初級と中級のダンジョンマップはあったから借りてきたぞ」

「ユキは同じ名前のダンジョンに出てくるモンスター図鑑だよ。ぱっと見た感じ、寒い海に住んでるような子はいないみたいだけど」

「ご主人の能力……いや、ここは外のダンジョンだから、アイテムになるのかな。『リングレイン』の街とは得られるものが違うみたいだね」


ユウキはともかく、シラユキもフェアリも自らの収穫を披露したくて仕方がなかったらしい。

取り立てて急いでいるわけでもないし、これはまず今日の宿を探して戻って、バッグの中にいるみんなも呼べたら呼んで、今後……これからどうダンジョンをじっくり攻略してくのか、話し合いをする必要があるな。



「そっちはどうだったんだ? 勇者たちが挑むようなダンジョンの地図は当然見当たらなかったし、そもそも勇者用のダンジョンって一般公開されってないっぽいけど」

「勇者専用のダンジョンは確かにあるようだけどな。勇者の魔王が出てくる小説借りたんだけど、その作者にも会ったし」

「作者だって?」

「あぁ、さっきまで会ってた司書さんがそうみたいなんだ。しかも恐らくこちら側……ダンジョンコアの関係者か、あるいは勇者をこの世界に召喚した人……女神さま? のどっちかもしれない感じだな」

「司書さんて、リィアラさんか? え、そうだったんだ。……いや、確かにすっごくオタクっぽくて懐かしい気分にはなったけど、今日が初対面だな。っていうか、ここへ来る時の記憶、結構曖昧なんだよ。誰かに会って、願いが叶うとか色々言われた気がするんだけど、何せ夢だと思ってたからなぁ」

 


会ったばかりの頃は、もっとしっかり覚えていたはずなのに。

起きたその瞬間から薄れ忘れてきてしまう夢のように、大事なこと……ダンジョンに勇者として挑戦して魔王討つことあれば願いが叶う、といった事以外は。

異世界へ勇者を送る神様的存在のことすら忘れかけてしまっている。



もしかしたら俺にもそのような人がいたけど、そもそも会わなかったかユウキと同じように忘れてしまったのかもしれない。

どちらにせよ、やっぱり改めてリィアラさんに色々聞いてみなければと、カウンターに目を向ければ。

それを察したからなのか、中で仕事を任されたのか、そこに彼女の姿はなく。


それならば仕方がないと。

予定通り『ユキアート』の本拠となるべく宿を探さんと図書館を出ることにして……。



   (第53話につづく)








次回は、6月9日更新予定です。

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