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エンドロールには早すぎる~一万回挑める迷宮に棲まう主(まおう)は、マンネリ防止、味変したいと人様のダンジョンに突貫す~  作者: 大野はやと
メイン:エンドロール前

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第50話、魔王、意識的に避けていた同レベル帯の剛の者と遭遇す



いざ『ユキアート』の図書館へと。

連れ立って辿り付き中を覗き込めば。

イメージする故郷の図書館とそう変わらない光景が広がっていたが。

やはりこの国の人々はダンジョンに親しみ、楽しんでいるらしい。

老若男女、多くの人々が本を探して回ったり、調べ物をしていたり、何やら煩くならない程度に話し合いをしていて。




「けっこう本格的っていうか、本当に図書館なんだなぁ。大分広そうだけど、ここでダンジョンのこと手分けして調べるのか?」



図書館、という雰囲気がそうさせるのか。

囁くほどに近い、ユウキの声。



「あぁ、そうだな。手分けしよう。俺はチューさんとここの勇者と魔王について調べるから、ユウキはフェアリとシラユキとともに司書さんに話を聞いてきてくれ。出現するモンスター、罠、アイテムなんかの情報と、この町自体がダンジョンに明るそうだから、地図の類があるかもしれない。もし借りられるようなら、借りてきて欲しい」

「おぉ、わかった」

「りょうかーい、マスター!」

「地図、かぁ。まぁ、ご主人が必要だっていうのならば吝かではないけれど」



動揺してまくし立てるみたいにそんな事を言ってしまって。

自分自身、何だかちょっと偉そうだな、なんて心配になったが。


そんな心配が杞憂であったかのようにユウキが頷いてくれて。

呼び出されてからはじめての命令だ、とでも言わんばかりに嬉しそうなシラユキ。


フェアリもシラユキと似たり寄ったりな感じではあったが。

ぼくはどんな命令だろうとも受け入れる準備はできているのだけど、なんてスタンスというか、圧が凄いんですけれど。


たぶんきっと、俺がダンジョン攻略にマッピングなど不要とまではいかずとも二の次であると、思っていることを知っていて。

ユウキたちにお願いしたことは、俺のためと言うよりみんなのために、だなんて過保護な俺に気づいたからこそ、なのだろうけれど。



「ふぅむ……なるほど。さきは自覚していなかった、というわけじゃな」

「ん? 何が?」

「あぁ、主どのはダンジョンマスター、魔王としての魅力を自覚しておらんという話じゃよ。率先して動くのはいいが、みだりに前面に出るといらぬものまで引き寄せることになるぞい」

「魅力? 『デ・イフラ(幻惑混乱)』カードの能力的な? そんなことはない……とは言い切れないか。みんながついてきてくれているのだって、少なからず俺自身の素養もあったってことだな。……ま、気をつけるよ」



またしても、話をはぐらかされた感は否めないが、納得できる部分も確かにあったので。

これ以降テイムするようなことがあるのならば、みんなに相談して慎重にことを運ぼうと決めて。

改めてチューさんを頭に乗せて、周囲を見やすくしつつ、元より決めていた勇者と魔王について書かれているであろう本が置かれている場所へと向かうことにする。




「なんじゃ。主どの。随分と迷いがないの。こういうものは役目与えられし者の案内により探し求めるのではないのか?」

「導かれたって言うのは大げさかもしれないけれど、司書さんにお願いしなくても分かるくらい目立ってたからね」



そう小声で返した通り、上級、あるいは一級探索者……勇者とダンジョンマスター……魔王の本は。

特設コーナーが組まれているらしく、すぐに見つけることができた。



勇者と魔王についての本かどうかも分からない創作絵本から始まって。

『ユキアート』とダンジョンの歴史、何代か前の探索者の手記に、『ユキアート』に根付く魔王の不思議まで、故郷の本屋さながらのラインナップ。

近くまで来てみて読んですぐに驚いたのは。

やはり勇者、魔王とともに代替わりするらしいということだろうか。

(そういった意味で、『リングレイン』の国の勇者が代替わりしたことも、この世界ではそう珍しくはないことだったんだろう)


そのせいなのか、更によくよく読み込んでみると。

運命の……柵あう運命を負う勇者と魔王の二人の恋愛ものの小説がたくさんあることに気づかされる。

しかも、シリーズ化しているものもあったりして、未だに続いているものもあるようだ。




「ほほぉ。ダンジョン好きな俺だけど、正直この小説は興味がないといえば嘘になるな」

「まぁのぅ。以外とというか勇者と魔王で惚れたはれたは多いようじゃな。中にはそこにコアまで加わって三角関係なんてのもあったしの」

「ほうほう! それはそれは。……いやでも、確かにチューさんくらい可愛ければそんな気持ちもわからないではないかな(マスコット的な意味で)」

「な、なな何をいきなり言い出すのじゃぁ!」


それでも、勇者と魔王の人となりから始まって、ダンジョンのこと、何か分かるかも知れないと。

今代の勇者と魔王のシリーズ、『千回逢っても』などといった、ダンジョンっぽいタイトルの一巻を手に取って、チューさんとともに眺めていると。


お静かにしていないといけない図書室なのに、だだだだっと走ってこちらへ向かってくる気配。

ダンジョンとして、半透明マップを浮かばせていたのならば。

倍速で迫り来るものの正体が、敵か味方が気づけたのだが。

チューさんが、ダンジョンコアであることを誰かれ構わず知られてはならぬと。

少しばかり強引ながら、話題を変えて(だけどそれは純然たる事実)いると。



「おや? めっちゃカッコイイおにーさんと、プリティなツインテ美少女さん。新刊に目を付けるとはお目が高いですなぁ!」



正しく倍速系のスキルや魔法を使ったかのような身のこなしで。

だけど俺たちだけに届くかどうかの声で、背中越しにそんな声がかかる。

うむ、まるでスキがないな。


まだ見ぬダンジョンであるのならば。

そんなワクテカするような剛の者(経験値たくさん)が潜んでいるであろうと期待はしていたが。


まさかこんな街中で遭遇するとは。

一瞬、魔王……あるいはダンジョンコアであるチューさんを狙っての刺客かと思ったが。

今のところ敵意らしい敵意は感じられない。


どうやら『ランシオン(幻影変化)』カードの効果は継続中のようで。

チューさんは、のじゃロリツインテなよう……お姉さんに。

俺はどこで拾ってきたかも(『ランシオン』カード変化する対象のストック、という意味で)知れぬイケメンさんに見えているらしい。


多分、ナイルくんあたりであろうと当たりをつけて。

呼ばれたからには仕方があるまいよと。

素直に振り返ることにして……。



     (第51話につづく)








次回は、5月30日更新予定です。

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