第47話、ダンジョンマスター、可愛すぎる初期装備に気づき言葉失う
「よっし、とどめだぁ! 【雷】よっ!!」
俺が心内で新しきテイムの準備と算段をしていたその瞬間。
はっと我に返らせたのは、眩しくもババチィッっと迸る稲光。
ようやくオレのえものの出番かと。
うきうきで張り切っている様子のユウキの声が木霊していて。
顔上げれば、やっぱり調子に乗って沈思黙考しすぎていたらしい。
ユウキの新しい武器、ダークヒーローが装備していそうな闇色のギザギザがイカス剣から生れ出るは。
【ダーク・ガイゼル】と呼ばれる、【雷】属性の魔法の中では中位に位置するもので。
いかにも効果が抜群そうな闇のイカヅチは、残っていた最後のリーダー格らしき色違いのワイバーンを居抜き、クリティカルヒット。
一応、ダンジョン外のフィールドも、野良の……あるいはこの世界をつくった人のダンジョン扱いなのか、ぼふんと煙を沸き立たせて、この世界のお金dtといくつかのアイテム、あるいは素材が残される。
「くぅっ、ちょっとばかしぼーっとしすぎたか」
「やったぞぉ! この剣めっちゃかっこいいな!」
「ふふ。見てくれたかいご主人さま。このぼくの黄金の右を」
「わたしもわたしも! 【水】の魔法きいたみたいでよかったぁ」
「おぉ、フェアリの触手による通常攻撃か。やっぱり威力、高いよなぁ。フレンドリーファイアには気をつけないとなぁ。シラユキはうん、いい判断だったな。今のワイバーンって、身体は岩みたいに乾燥していたし、水には弱いはずだ。……それに、使うの初めてなはずなのにうまいこと使いこなしてたじゃないか、ユウキ。やっぱり闇のイカヅチはかっこいい。ロマンだよな」
俺が手にしたガルゲ・ボウで倒さなければ、素材アイテム化を止めることできないんだよなぁ。
なんてことは自業自得なので言える訳もなく。
「これこそ正に棒立ち解説ってやつか。それこそふところマスコットなチューさんのお役目なのにぃっ」
「むむ、なんじゃと。やっぱり主どの、ぼーっとしておったろう。このわしが的確に参謀役を、指示を飛ばしておったというのに」
「指示っていうか、チューさんは敵襲だぁって叫んでただけじゃん」
「いやでも、オレたちは馬車の中にいたからな。それはそれで助かったよ……って、なんだいそれ。ジエン、君の武器なの? なんて言えばいいのか、オレが言うのもなんだけど、似合わないなぁ。天使さんとかが持っていそうな矢だな」
「ほっとけー……って、天使? そうかぁ、普通の弓矢だと思うが」
「いや、普通じゃないでしょ。弓はピンク色だし、矢はハートの形しているし。チューさんやフェアリさんが持っていた方が似合うんじゃない?」
「ふふ。天使だなんて、照れるじゃないか」
確かに小ぶりな弓矢で、使い回しがむつかしいとは思っていたけど、そうだったのかぁ。
これ天使……キューピッドの矢なのか。
モンスターを射止めて仲間にすると言われればまさにその通りで。
知りたくなかった事実に言葉を失っていると、確かに俺よりもみんなに向いていそうな『ガルゲ・ボウ』について盛り上がっていく。
「あぁ、なんじゃ盛り上がっていると思えば、今現在主どのが初期装備にしておる矢か。主どのが大分嬉しそうにこれを持ち帰ってきたの、懐かしいのぅ」
「あ、それわたしも覚えてるよっ。これでやっつけられると、なかまになりたそーな気分になるんだよね~」
「まぁ、言い得て妙じゃが、ようはテイム用の武器じゃな」
「へぇ、何だか凄いアイテム、武器なんだね」
「ふふ、何を隠そうこの弓矢で初めにかかったえものは、このぼくだからね。ご主人にぼくのはじめてを持って行かれたのです」
そんなやりとりが、最後まで聞こえていたのならば。
それはちょうど手に入れたタイミングで、プリティで強くて頼もしいリカバースライムさんがいたから!
ダンジョンアタック、特に『異世界への寂蒔』攻略においては必須なモンスターさんがいたからってだけなんだよぉ!!
……などと、俺にしては激しいツッコミをかましていただろうけれど。
そんなちょっと不穏で不安なフェアリの言葉は終わる前に、みんなできゃいきゃい、ジエンさんの入れないかしましなオーラを形成し始めてしまって。
「……ひとり寂しく御者を。いや、エレヴァがいるか、あともう少しだけ頼むよ」
「ヒヒン」
何でもかんでも意思疎通できるようになるのもあれなんだよなぁと。
やっぱり、無理にドーピング、レベルアップをするのは止めようと。
ご機嫌にしっぽをふるエルヴァの背中を撫でつつ、しみじみと。
何度目かも分からない決意をする俺なのであった……。
(第48話につづく)
次回は、5月16日更新予定です。




