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エンドロールには早すぎる~一万回挑める迷宮に棲まう主(まおう)は、マンネリ防止、味変したいと人様のダンジョンに突貫す~  作者: 大野はやと
メイン:エンドロール前

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第38話、ダンジョンマスター、結局マイダンジョンにのめり込んで目的忘れる



何気なくチューさんに聞いたところによると。

俺とユウキがそうであったように。

ダンジョンマスターである魔王と、それを攻略せんとするもの、勇者が他の国にもいて。

国や町の数だけダンジョンが存在しているようなものらしい。



本来はダンジョンを踏破し、攻略したものの称号とも言える勇者。

それを迎え撃たんと試行錯誤してダンジョンを創り作り変え待ち構えている魔王。

お互いが惹かれ合う運命であるのならば。

その間に入って邪魔をするようなことはあまりしたくはなかったが。


ようは最後まで攻略しなければいいんだろう?

そもそもが、勇者を目指すもの、ダンジョンに挑戦するものは多くいるわけだし。


俺はどちらかと言うと踏破した事への結果、攻略のご褒美のようなものには興味はなく。

その経過を、体験を楽しみたいタイプなのだ。

面白そうなダンジョンにちょっとばかりお試しで潜らせてもらって、どんな塩梅なのか知りたいだけなのである。




(……となると、どの辺りへ向かおうかな。チューさんやユウキは他国に良さげなダンジョンの場所知ってたりしないだろうか)


であるのならば、思い立ったが吉日、とばかりに。

俺はだらけていた身体にムチを入れて起き上がり、二人を迎えに行くことにする。


とはいえ迎えに行くだけでもけっこう博打なんだよなぁ。

何せレベルを下げられてほとんど裸一貫で放り出されて、手に入れることのできるアイテム等等も使ってみないと分からない鬼仕様だ。

入れ違いになるだけならまだしも、下手すれば迎えに行くよりも早くやられてしまってこちらが先に戻ってきてしまう可能性もある。


俺は、そうぼやきつつも忘れ物……こっちで装備しているものを迂闊に持って行ってしまうとなかったことにされてしまうため、特に貴重品などはチェックしつつ外してマイ倉庫と言う名の『デポッド(配送倉庫)』のバッグにしまい、実際にウィンドウで確認すればぬののふくと表示されているであろう着やすく着替えやすく過ごしやすい臙脂色の上下ジャージを着込み、いざ新たに創り出したマイダンジョン、『真・異世界への寂蒔』へと足を踏み入れる。



あっ、そうだった。

せっかく他のダンジョンへ行くんだし、強化、レベルアップに使えるアイテムを集めておこう。

初期装備紹介の時に披露し忘れていたけれど、バッグのなかにその強化アイテムを入れると、近くに(ワンフロアぶん)いるものたちに、その入れたアイテムの効果を与えることのできるレアバッグ、『グラグロウス(共生進長)』のバッグ。

更に、そのアイテムそのものの効果を倍にすることのできる、あったらめちゃうれしい『レブレイト(祝幸増進)』のバッグ。



それらのバッグは、入れるだけ入れたら使いきりで。

壊さないと取り出せない悲しき使い捨てアイテムではあるが。

今までのマイダンジョン攻略でそれぞれ少しずつ溜まっているし、どれだけあっても困らないものなので、ついでに集めておくのもいいだろう。



そう思い立ち、新しくなってからも、もう数十回は超えているであろうマイダンジョン攻略を開始して。

結局本末転倒というかなんというか。

いつもよりも強制一蓮托生……ドーピングアイテムセットが、必要以上に落っこちていて手に入れることができて。

ウハウハで調子に乗っているうちに、本来の目的、チューさんとユウキを迎えにいくことをすっかり失念していて。

と言うか、いつの間にやら追い越してしまっていたらしくて(恐らく、罠探知をおろそかにして落とし穴に落っこちたことが原因であろう)。



そんなこんなで、25階にまで達した時。

ある程度アイテムが集まってきて、便利でご都合主義なホームへ帰還するためのカード、『セシード(内場脱出)』をゲットして。

そんな中、『モンスターライブ』……いわゆるダンジョン罠の一つである、大量のモンスターたちに囲まれてしまったことで。


少しばかり我に帰った俺は、その時その瞬間、本来の目的を思い出して。

アイテムの揃い状況的に、乗り越えられない感じでもなかったけど。

めぐり合わせが悪かったからなのか、新しいお仲間……テイムモンスターもいなかったこともあって。

すぐさま『セシード』カード(同じものが実は本にもある)を使って、ホームへと帰ってくると。




そんな、ふらっとマイダンジョン攻略にいそしんでしまう俺のことをよく分かっているのか。

迎えにいくつもりだったのを忘れていただなんて知る由もなく。

やっぱり先に帰っていたらしいチューさんとユウキが、何やら楽しげにホームに備え付けられているキッチンにておしゃべりをしているのが見えた。


……って、よく見るともう一人いるじゃないか。

あの、ゴムまりめいた、顔の大きさくらいしかない闇に溶けるような体躯と、皮膜つきのしなやかて、小さくも伸ばせば結構伸びる翼を持つのは。

所謂ケブル・バット……もしかしなくともダンジョン攻略の傍らレベルが上がって確固たる意志を持つようになって、最上級クラスのモンスター、ナイトメア・エクゼに進化しているかもしれないが。

とにもかくにも、『ランシオン(幻影変化)』のカードでも、一度ユウキが成り代わっていたことで目の当たりにしたことのある、優秀な我が魔王軍のパーティのひとり、ヴェノンであった。



どうやら、いつの間にやら夕飯の時間になっていたようで。

夕食の準備をしてくれていたらしい。


手際よく調理しているように見えたユウキは、そのリズミカルな包丁さばきもあいまって。

料理ができるんだなといった意外さよりも、どうもその見た目に引っ張られるというか、理想の若奥さんであるかのように見えてしまって。


何とはなしに、声をかけるのも憚られ、三人のやり取り(と言っても料理しているのはユウキばかりで、俺にはチューさんが台所の鏡めいたテーブルの上の駆け回り、ヴェノンは忙しなくぱたぱたとユウキの周りを飛び回っているようにしか見えなかった)を眺めていると。

丁度、ユウキの桜色の髪……後ろに括られている部分へ回り込む形となったヴェノンと目があって……。



    (第39話につづく)














次回は、4月5日更新予定です。

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