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エンドロールには早すぎる~一万回挑める迷宮に棲まう主(まおう)は、マンネリ防止、味変したいと人様のダンジョンに突貫す~  作者: 大野はやと
メイン:エンドロール前

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第33話、ダンジョンマスター、自身の成長を手前味噌でしみじみする



聖剣が目の前にあったら、落ち着きを取り戻して取引に応じてくれるかな、なんて思っていたけど。

どうも浅慮だったらしい。

学習能力など皆無、とでも言わんばかりに。

またしても向かってくるナイル君。



「ぎひょうぅっ!?」


思わず反射で投げてしまった『イミルゼ(紫雷一撃)』のカードが見事額に突き刺さり、再びもんどり打って倒れ伏す。



「うん。こりゃダメだ。同じことの繰り返しになりそうだな。もっと工夫しよう」


俺は、念のためにと置いてあったベッドにナイル君を運んで、壁に寄りかからせる形で座らせると、すかさず『リコーヴァ(治癒回復)』のカードと、初出しである『ダイソーダ(金縛留起)』のカードをその額に貼り付ける。




「……っ、あがっ、ばばばばっ!?」


『リコーヴァ』のカードの効力により回復し、すぐに元気を取り戻したナイル君は。

『ダイソーダ)』のカードの効果で、座った状態のまま、文字通り金縛りにあったかのように震えるばかりで、動けない。



「落ち着いて。話よしようと言ってるんだ。今の君の行く末は俺の手のひらにあるってことを、まずは理解してくれ」


そう言って、カードをナイル君の額にぴたりと近づける仕草をする。

『ダイソーダ)』のカードの効力は、文字通り身にしみて理解してもらえたことだろう。

貼り付けるような状態から少しばかりずらしてやれば、角が丸まっているとはいえ、容易にその額の皺をすり抜け潜り込めるだろう鋭さを持っているカードが、ほんの僅かばかり、うぶ毛を倒す程度にナイル君に触れる。


『ダイソーダ)』のカードで上手く喋ることもできないだろうけれど、それでも流石に学習してくれたらしく、短く悲鳴を上げたのが分かって。



「まずは、こちらから名乗ろうか。俺の名前はジエン。この町一番近いところにあるダンジョンマスター(魔王)だ」

「……ひぐぐっ」

(おい、なにぶふっ!?)


ナイル君の驚愕に息をのむ声と、やっぱりいきなり何をバラしてんだ、などと言おうとして。

マスコットなもふもふお手手に阻止されるユウキ。

透明化しているとはいえナイル君も第三者の存在に気づいちゃったかな。

と思う伺うも、それどころじゃないらしく『ダイソーダ』とは別の震えに襲われている様子。


俺はそれに安堵し、さくっと要件を済ませてしまおうと、アイテムウィンドウから分岐する『プレサーヴ(保存収納)』のバッグの中から『リングレイン』産の聖剣を取り出した。


アイテムボックスというか、バッグに入れる際に識別もしておいたから。

既にその剣の正式名称から細かな性能まで詳らかになっている。


攻撃力の値で言えば素の状態から+15くらい……『異世界への寂蒔』で言うのならば、攻略を初めてすぐに見つける(たまに落ちていたりして)ことができたのならば、最初の目的地とも言える、15階層、『セシード(内場脱出)』のカードがあるあたりまでなら、十分メイン武器としてやっていける、といったところだろうか。


属性はその名の通り【セザール】で。

アンデッドや魔人系のモンスターにダメージを与えやすくなっている(正確に数値で示せば1.5倍くらい)ようで。



つまるところ、一応魔王として、魔人系のモンスターカテゴリーに入っているらしい俺になら、そこそこダメージを与えられることだな。

しかし、よくよく識別していくと、それはメインの武器と言うよりも、ダンジョンに挑戦するための、許可証的アイテムである、という事が分かってきた。


基本、塞いでいる入口も含めて、許可制にしたつもりなんてなかったのだけど、どうやらそれがないとダンジョン(魔王のいる)には入れないらしい。

だからこの聖剣には、近くの町の名前がついていて、かつ独り占めしようとしていた我がダンジョンに安安と入ってこられたのだろう。



せっかくの、夢だったとも言える自分で創ったダンジョンなのだから、どうせなら自分だけで楽しみたい派であった俺にしてみれば分かりようもなかったが。

どうやら魔王のいるダンジョンは特別なもので、聖剣に選ばれた探索者……勇者とその仲間たちしか挑戦できないらしい、と言う事で。


それを知った当初は、他の魔王さんたちのつくったダンジョンにもお邪魔したかった俺としては大変残念な設定だなぁと思ったわけだけど。

魔王のいない普通のダンジョンもあるようだし、逆に許可証がいるのならば俺のいわゆる魔王的力……『モモフェル(分裂増殖)』のカードを使って増やしちゃえばいいじゃない、なんて思い立ち早速実行に移ったので、問題なかったりするわけだけど。



「『ダイソーダ』でうまく話せないだろうし、返事はいらないよ。しゃくではあるけど、我がダンジョンも君のために解放しておく。存分に楽しんでくれたまえ」

「……っ、ぅゅ、まっ」


思ってもみなかったであろう俺の発言に、きょとんとしているナイル君。

思いもよらなかったのは、俺も同じさ。



まさか、マイダンジョンを他人に貸す(挑戦させる)だなんて。


俺も随分と考え方が変わったと言うか、丸くなったものだよなぁと。

しみじみ思ったりしていて……。



    (第34話につづく)








次回は、3月19日更新予定です。

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