第3話、ダンジョンマスター、早速味変したくて外出の準備、装備確認
第4話はまた明日更新いたします。
思い立ったが吉日。
まだ何やら言いたそうにしているチューさんをむんずと掴み懐に入れると。
早速外に出るための装備とアイテムの準備を……。
おっと、そうだ。
せっかくだし、ここで千回の成果を確認しておこう。
倉庫に向かいながら、ウィンドウを呼び出し、ステータス閲覧をチェックするイメージ。
すると、俺の目前に青く透けたお馴染みのウィンドウが浮かび上がった。
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Name:ジエン・イケモリ
Job:探索者(魔王)
Lv:73
Lp:236##ⅱ
Sp:117$(&
At(攻撃力):170#$&
Df(守備力):155$*#
Av(回避力):111ⅱ##
Lu(運):83’’$
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ステータス
んん? なんかしばらく見ないうちに文字化け? してるし。
あまりに大きな数字過ぎて、略されちゃったのかな、なんて。
……ま、そんな冗談はともかくとして。
この値がこの世界でどんなものかは、ほかの人に会った事がないのでなんともいえないんだけど。
三桁のライフポイントだと、『異世界の寂蒔』の下層では、モンスターの攻撃を装備なしで5回も耐えられれば御の字、といったところか。
他はいまいちよくわからんのですよね。
少なくとも、三桁あれば『異世界の寂蒔』でも楽はできるだろうけど。
素早さやかしこさ的な値がないのは、別にバグってるわけじゃない。
かしこさにあたる値は、イコールプレイヤー自身の知力によるものなので表示する意味がないし、素早さなんてターン制の『WIND OF TRIAL』にとってみれば数値化する意味のない値なのである。
装備やアイテム、魔法スキルなどで四分の一、二分の一、二倍、四倍と変えられる……くらいの認識なのだ。
まぁ、ある意味『WIND OF TRIAL』としては最も重要な値とも言えるが。
そして……いよいよお待ちかねのスキル・持ち物欄だな。
『異世界への寂蒔』へ潜る際は、スキル、アイテム装備なしの素寒貧から始まるが。
基本的に三十のスキル・装備アイテムをセット、持つ事ができる。
(実際は、小分けにできる【プレサーヴ】と呼ばれる『アイテムバッグ』があるので、その限りではない)
『異世界への寂蒔』では、アイテムを溜めスキルを覚え装備を鍛えてもそれを持ち込めるわけではないので、たまに違うところに行きたくなるのは、気分転換だけでなく、今まで苦労して集めたアイテムを揃え、違う場所で披露したい、という意味合いもあったりするのだ。
それでは早速、千回こなして覚え集めたスキル、アイテムから、主だったラインナップを見ていこう。
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スキル・アイテム欄(×は持っている個数、()は使える回数)
ヴァーレスト・ソード+66E
セザールの聖衣+63E
カムラル・ベルトE
マジックデブリ×93E
リヴァの薬Lv2×8
ウルガヴの薬×23
リィリの薬×7
サンクチュアリ・カードLv2×3
セシード・カード×3
ウェルスランバー・カード×6
ミプデトナ・カード×12
ダイソーダ・カード×12
デ・イフラ・カード×6
ルクブーロ・カード×10
プレッツェンの本(46)
ブロウンの本(55)
ダスロブラントの本(32)
サブスティートの本(26)
デポットバッグ×2(5)
リコーヴァバッグ×3(6)
プレサーヴバッグ×6(6)
プレサーヴバッグA→キーウォ・カード×12
ヴェロシアップ・カード×28
ハウルグ・カード×23
メイシテンプカード×27
リコーヴァカード×30
フォートナ・カード×25
プレサーヴバッグB→ディサニオン・カード×20
携帯食料×22
リヴァの薬Lv1×5
モンスターバッグ×2(6)
モンスターバッグA→リカバースライム【フェアリ】Lv53
ナクデスヴェイト【ヴェノン】Lv48
インファントメデュー【ピプル】Lv39
ネレイトジーフォ【ディー】Lv36
リンシーメロウ【シラユキ】Lv33
シリンクオガレ【スーイ】Lv30
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うむ。自分的にはなかなかのラインナップだとは思うが、知らない人に何が何やらだろう。
実際、チューさんもそうだったのか、その度に解説したものだ。
逆にこれは俺の方が知らなかったのだが、これらのスキルやアイテム、装備は俺という魔王専用の能力みたいなものらしい。
この世界にもスキルはあるのだが、俺のものとは違うらしく。
代わりに俺は、この世界にあるという魔法が使えない。
アイテムや装備も、もしかしたら俺以外には使えないんじゃないかということで。
とりあえずは、俺という魔王の能力として説明していこう。
まずは装備だが、これは『異世界への寂蒔』で集めた様々な武器防具装飾品等を『ポッジズ(錬金融合)』のバッグにより融合、吸収させて作ったオリジナルで、剣にも防具にも様々な効果が付与されている。
あまりにも効果が多すぎて自分でも忘れてるくらいなので、いつか効果が発揮された時においおい解説していくことにしよう。
ちなみに、マジックデブリは遠距離攻撃の装備品で、指定して誘導できる優れものだ。
効果範囲は視認できる一部屋分といったところか。
続いて、まずはアイテム。
装備以外では、『薬』と『バッグ』、『携帯食料』なんかがこれにあたる。
あとで説明するスキルもそうだが、まず着目すべき点は、これらのスキル、アイテムがマイダンジョンに出現するモンスターが落としたり、宝箱として存在している点にある。
『携帯食料』なんかは本当に多種多様で、不思議ではあるが何らかの付随効果があったりするので、
何が出てくるのか結構楽しみだったりする。
次いで『バッグ』だが、これはその名の通り色々なものを入れたりしまったり出したりすることで何かが起こるアイテムだ。
『プレサーヴ(収納保存)バッグ』は、アイテム欄とは別枠で持てるストレージみたいなもので。
中ではお約束に時間が止まっているらしく、重量を無視したり腐敗などの品質低下を防ぐことのできるものだ。
『デポッド(配送倉庫)バッグ』は入れたものをホームにある倉庫に送ることのできるもので。
『リコーヴァ(回復休憩)バッグ』は、亜空間に繋がる簡易テントのようなもので、LpやSpを回復できる。
『ポッジズ(錬金融合)』は、前述した通り、武器防具装飾品を融合強化できる。
そして、『モンスター(魔物魔精霊)バッグ』は、ダンジョンでテイムしたモンスターを召喚するもので。
中はこれまたモンスターが過ごすのに快適な亜空間に繋がっている。
実の所一人でマイダンジョンを攻略する事が多く、テイムしてモンスター達にはあまり出番がないのだが、折角なのでここで精鋭を紹介しておくことにしよう。
【フェアリ】は、火の星の人とも称される触手を持った橙色のスライムで、属性は火だが、回復のスキルが使える優秀な子だ。
【ヴェノン】は、風の属性を持ち、飛行能力と毒散布が使えるフルーツ蝙蝠みたいな姿をしている。
【ピプル】は地を這う小さな蛇で、属性は光。敵性を惑わし混乱させるスキルを持っている。
【スーイ】は珍しい雷の属性を持つ猫で、敵性を麻痺させるスキルを持っている。
【シラユキ】は水属性のマナティーで、その見た目よろしく水場で活躍してくれる。
【ディー】は金属性を持ったリビングアーマーで、テイムモンスターの中では一番の力持ちだ。
モンスターバッグは二つ持っているが、もう一つはまるまる空いている。
レベルの高いテイムモンスターがそんなにいないせいもあるが、一応新たにテイムした時のための保険として持っていた。
アイテムでは最後になる『薬』は。
綺麗なガラスの小瓶に入っており、レベル2のものは効果が倍になったりする。
これもまた様々な種類があるのだが、とりあえず持っている三つを解説しよう。
『リヴァの薬』は、俺が最も重宝するアイテムの一つだ。
簡単に言うと、予め摂取しておくだけでレベルの数だけ瀕死状態から復帰できる。
モンスター以外にも、ワンキル必殺の罠などがダンジョンにあったりするので、失敗の多い俺には手放せない必須のアイテムといえよう。
その効力は凄まじく、そんなホイホイ使っていいものでもないのだが。
このアイテムをできるだけ集めるのが『異世界への寂蒔』攻略の基本なので、結構な数ストックがある。
『ウルガヴの薬』は単純に回復アイテムで、『リヴァの薬』の簡易版と言ってもいいかもしれない。
『リヴァの薬』を使わずにこちらをうまく使うのが、やっぱり攻略のこつだったりする。
『リィリの薬』はまた特殊な効果を持つ薬で、摂取してしばらくすると同じフロア内に限り転移が可能になる。
転移する場所が決められるわけでないのでリスクは高いが、危なくなったら『薬』を使うのがやっぱりダンジョン攻略の基本と言えるだろう。
次いで、スキル。
これは、ブックとカードが該当する。
お互い一長一短で、ブックは効果範囲が広く敵味方含め相手を指定できない場合が多いが、特殊なアイテムで使用回数を増やすことができる。
カードは、効果が限定されているが相手を指定でき、回数は増やせないが投擲道具、あるいは設置罠としても使える。
簡単に手持ちのスキルを解説すると。
サンクチュアリ・カードは、設置系のスキルで、敵性を寄せ付けない地場を作り出す事ができる。
セシード・カードは、設置、使用系のスキルで、ダンジョンからの脱出が可能となり。
ウェルスランバー・カードは、投擲系のスキルで、相互強制転移ができ。
ミプデトナ・カードは投擲系のスキルで、対象を衝撃波による強制排除を可能とし、
ダイソーダ・カードは投擲系のスキルで、受けたものの行動制限ができ、
デ・イフラ・カードは、投擲系スキルで、使役者以外に幻覚を見せ、ヘイトを逸らし外すことができる。
キーウォ・カードは、使用、投擲系スキルで、必殺の罠に掛けることができる。
ヴェロシアップ・カードは、使用投擲系スキルで、対象の倍速。
ハウルグ・カードは、使用系スキルで、対象のヘイト引き付け、アイテムの回収ができ。
メイシテンプカードは、使用投擲系スキルで、対象を強制転移かつ、捕縛ができる。
リコーヴァカードは、設置、使用、投擲系のスキルで、対象の治癒回復。
フォートナ・カードは、設置、使用、投擲系のスキルで、対象のレベルの底上げができ。
ディサニオン・カードは、投擲系のスキルで、対象の分裂、倍加ができる。
プレッツェンの本は、ワンフロアの範囲で、敵味方関係なく催眠をかける事ができて。
ブロウンの本が、ワンフロア範囲で、敵性に対し火属性の小爆発を起こすことができる。
ダスロブラントの本が、ワンフロアの範囲で、敵性を惑わし混乱させる。
サブスティートの本が、一定時間、使用者の能力を倍加させることができて。
ルクブーロの本は一定時間、フロアの見通しを良くし、罠を発見できる。
ちなみに、ブックとカードは親和性があり、ほぼ同じ効力のものがそれぞれにあるといっていいだろう。
チューさんにも同じ説明をしたんだけど。
あまりにも数が多すぎてわからなかったら聞くと匙を投げられてしまった。
俺としては、外に出ればこれらのスキル、アイテムを使う機会なんてすぐ訪れるだろうからまぁいいか、なんて思っていて。
わくわくどきどき、ひりひりなダンジョンを大いに期待していた俺は、意気揚々と一階の入口……塞がれたままの場所へとやってきたわけだが。
「よし、チューさん。入口を開けてくれ」
「……本当に出て行く気か?」
「うん。大丈夫大丈夫。やばくなったらすぐに戻ってくるから」
心配げと言うか、何だか大人しいチューさん。
始めて向かうダンジョンに油断などないと緩やかなカーブを描いたモフモフの背中をなでていると。
くすぐったかったのか、懐から飛び出したチューさんが鼻をひくつかせ、少し歯の伸び始めた口元をもぐもぐさせる。
……途端、チューさんの身体が元のダンジョンコアみたいに光りだし、
何かが割れるような効果音がして、入口を塞いでいて土がごっそりなくなった。
「おぉ、陽の光だ……」
思えば、どうして今の今まで外に出るという発想が出てこなかったのが疑問だったけど。
きっと、『異世界への寂蒔』に夢中になっていた故だろうと自分を納得させて。
いざ、とばかりに外界へと一歩踏み出すのであった……。
(第4話につづく)