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エンドロールには早すぎる~一万回挑める迷宮に棲まう主(まおう)は、マンネリ防止、味変したいと人様のダンジョンに突貫す~  作者: 大野はやと
メイン:エンドロール前

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第24話、ダンジョンマスター、勇者専用装備を識別してみる



「ご主人、この特技の欄なんだけど、回復魔法って書いておいてもいいかな?」

「うん? おお、そうだな。どうなんだろ。……この世界って僧侶っていうか、ヒーラー的存在ってありきたりだったりするのかな」



ほんわかとした、何だか悪くない空気の中。

後半はささやくようにチューさんの後ろにきっちり並んで大人しく順番を待っていながらも、心なしか後ろめたそうに受付嬢さんを見つめているユウキに小さめの声で聞いてみる。



「……ん? ヒーラーか? オレを追い掛け回していた連中の中にもいたろ。基本的なヒール系統の魔法なら需要はあるけど、使い手もそこそこいるから、特に問題ないんじゃないかな」


加えて、辻ヒール師ではないが、回復魔法を持っているとわかれば、ギルドの仕事の幅も増える、とのこと。

そうであるならば問題ないだろうと、俺はフェアリにゴーサインを出す。


本当のところ、フェアリの真骨頂と言えば無限に使える回復魔法(初級)なのだが。

そこまでは傍目じゃあ分からないだろう。

テイムしたモンスターの中で、フェアリと行動を共にすることが多かったのはそこにある。



【Wind of Trial】においてМPの心配なく回復魔法を使い続けられるフェアリは、第一にテイムすべき必須の存在だ。

攻略だけでなくレベル上げなどもそうだが、確実性を取るならばフェアリというかリカバースライム3体は常に連れて歩きたいところである。


まぁ、それでも。

『異世界への寂蒔』だと、即死トラップ(テイムモンスターに効果がある)などがあったりして。

気を抜くとすぐに周りに誰もいなくなってしまって。

攻略失敗してしまう所なんかがもどかしいというか、それでこそやりがいがあるとも言えるわけだけど。



……そんな事を考えつつ。

やっぱり丁寧で綺麗な字で、特技欄を記入しているフェアリを見ていると。

ダンジョンコアであることなど、特に気づかれた風のなかったチューさんが、自分用のギルドカードを引っさげてこちらへ近づいて来るのが分かる。

どうやら自分のよりフェアリのギルドカードの方が気になるらしい。

どれどれ失礼、とばかりに。

ひょいっと顔を出し覗き込みつつ、声を上げるチューさん。



「なんと、主どのと同じ名字とな!? 考えたのう。わしもよいか?」

「ご主人がいいのなら。……ぼくからいろいろ言える事でもないし」


一瞬、フェアリは迷っていたような気もしたけれど。

結局二人のそんなセリフに、どうぞどうぞと頷いてみせる。


実のところ、ふところマスコットとして俺と会うまで、チューさんには別の名前があったそうなのだが。

俺が勝手につけてしまった名前を随分と気に入ったようで。

そのままやっぱり嬉しそうに『チュート・イケモリ』と記入していた。


フェアリほど綺麗には書けなかったけれど、チューさんもその見た目小動物な前足でよくもまぁ書けるものだと。

やっぱり感心しながら、なにげに気になっていたチューさんの特技欄を見やると。

そこには、『土魔法』と書かれていた。


ダンジョンコアであるからして、ダンジョンクリエイトが本当の特技ではあるようなのだが。

この世界において『土魔法』は、建築土木によく使われるらしく、大まかに言えば似たようなものだから、とのことらしい。




「……ふぅ。なんとかなったか。って、おい。ジエンの番だってさ」


そんなプチ情報を得ているうちに、ユウキも無事に新しいカードを作ることができたようだ。

何故だか恥ずかしがって後々にもユウキがカードを見せてくれることはなかったけれど。

特技には当たり障りないところで、『剣技』と記入したらしい。


そう言えば、探索者……勇者としてのユウキの能力、全然知らなかったな。

アイテム武器防具を持ち込めない鬼仕様の『異世界への寂蒔』。


その我がダンジョンにおいて、あの勇者を勇者たらしめている金ピカの聖剣を持ち込めたのだから。

特技は『剣技』ですと言い張るのも、納得はできるわけだけど。


勇者をやめると言うか、魔王の元につく? のならばくだんの聖剣を返却しなければ、と言うのはユウキの弁だ。

一応、『異世界への寂蒔』ではその鬼仕様のために倉庫の肥やしになっていた、様々なアイテムを識別できる、『ディセメ(識別解析)』のカードを使ってみたんだけど……



―――識別結果。


『英雄の剣+6』

副次効果、聖なる光の閃光を放つ魔法を使える。

魔王の棲まうダンジョンに入ることができる。




と出たので。

我がダンジョンであの、ゾンビめいた……かつてのユウキのパーティーメンバーが躍起になって追いかけてきたのは。

必ずしもユウキを捕まえるためだけではなかったのだと、予想できる。


魔王らしく? 略奪……拝借してしまえば、なんてちょっとだけ思ったけれど。

別にそんなテンプレに従うこともないし、ユウキがいらないのなら返すべきだとは思ってはいた。


……まぁ、何だかんだ言って。

当然のことながら、ただただ何もせず返すなんて。

俺の魔王……じゃなかった、アイテムマスターになりたい人のプライドが許しませんけれどもね。



   (第25話につづく)








次回は、2月18日更新予定です。

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