第21話、ダンジョンマスター、冒険したくなって透明化解除
そんなこんなで、流れで冒険者による仕事の斡旋所、いわゆる『ギルド』と呼べる建物の前へとやってきてしまったわけだけど。
「ギルドに来たのはいいんだけど、どうするんだ? オレ、一応登録してるんだけど」
「9ドロー程度、くれてやってもよいと思うがの。ただ話を聞くに、冒険者のか~どがなければ、ここから出るのにも他の町に入るのにも面倒かもしれんな」
「ご主人さまの透明になる魔法を、町に来るたびに使うってわけにもいかないよね。あれって結構レアなんでしょう? ダンジョンでも、ほとんどぼくにしか使わなかったし」
「うっすら見えるから実感ねぇけど、ほんとに誰もジエンに気付かなかったな。今更ながらすごいスキル? 魔法だよ」
そういえば思い出したよ、とばかりに。
フェアリがドヤ顔をしているように見える。
俺としては、消えて見えないはずの俺よりマスコットスタイルに見える三人が、意外と周りに馴染んでいることにほっとしていた。
それは、よくよく周りを見回してみるに。
耳がいわゆる四つあるひととか、肌がウロコの人とか、角が生えていたり、尻尾があったり羽があったり、種族さまざまな人種の坩堝状態であったからなのだろう。
これなら冒険者ギルドに登録するのは可能というか、ありかもしれない。
「まぁ確かに、その度に忍び込むのもなんだしな。『ルシドレオ(透過透明)』のカードはレアっちゃレアだけど、うちのダンジョン潜ってれば一度に一枚くらいはゲットできるし、アイテム(スキルだけど)はやっぱり使ってなんぼでしょ。……ま、そう言うことだからちょっと中で待っていてくれ。俺も透明化解除して、化けてくるから」
透明なままなので、三人にだけ聞こえるくらいにそうまくしたてた俺は、いわゆる冒険者ギルドにたどり着いた事もあり、一足先に足元と目線あたりに遮るものもない、いかにもそれっぽい両開きの扉を開け放ち、ギルド内へと足を踏み入れる。
その際、傍目からしたら扉がひとりでに動いたように見えただろうが。
もとより風が吹けば動くような扉であったため、特に疑問に思う人はいなかったようだ。
そんなわけで改めて建物内を見回してみる。
どうやら定番から大きく外れてはいないらしい。
一階は受付兼、酒場or食事処、二階より上は(三階建てだった)は宿屋になっているようだ。
体感でいうとお昼前だからなのか、どこもかしこも多種多様な人種のひとたちはいて、賑わっている。
男女問わず、並ぶ列の差あれど、受付の人は常時5、6人ほどか。
案内看板などはなく、あらゆる物事をそれぞれが担うスタイルのようだ。
酒場兼食堂の方は、同じパーティなのか集まりがいくつもあって。
時間帯のせいもあるのだろうが、典型的な飲んだくれ、酔っ払い的な存在は見当たらなかった。
思っていたより何ていうかしっかりとした所なのかもしれない。
俺は、そんなことを考えつつも、流石にすぐに発見できた、トイレへと駆け込み、個室を借りてさっさと『ルシドレオ』を解いてしまうことにする。
すかさず使うのは、文字通りあらゆる事案、結果、状態異常などから元のあるべき姿に回復できる『アルミール(万能得薬)』のカードだ。
最初の旅立ちの時には用意していなかったカードではあるが。
なければないで我慢しつつも、あったらあったですぐ使ってしまいたくなる、程よく使用頻度の高いコモンカードである。
早速オレはそのカードを額に貼り付ける形で使用すると。
使ったことが分かるようにと、キラキラのエフェクトが螺旋状に俺を包み、涼しげな鈴の音のようなものが聴こえてくる。
一見必要ではないように見えるエフェクトと音であるが。
『異世界への寂蒔』においては、もぐってすぐはあらゆるアイテム(スキル・ギフト)が未識別の状態で。
使ってみないと分からない仕様になっているので、これらのエフェクトは、分かりやすいから本当に助かっていた。
例えば他の回復系統のカードなどは、分からないままに相手に投擲しても、
こちらからじゃただカードが刺さっているようにしか見えなかったりするのだ。
そんな、あるあるネタを諳んじつつ。
俺はもはやこんなにもお馴染みになるとは思いもしなかった『ランシオン(幻影変化)』のカードを使用する。
何とはなしに確認すると、『ランシオン』のカードはもう数枚しか残っていなかった。
『異世界への寂蒔』では、階層によって出てくるモンスターが決まっていて、攻略上どうしても『欲しい』モンスター……例えばリカバースライムとかね……に、他のモンスターを無理やり変えてしまうのにしか使ってなかったからな。
ダンジョン内だと、実はこのカード、変化しちゃったら変化しちゃったきりなんだよね。
フロアを変えたり、それこそ『アルミール』のカードを使えば元に戻れるけれど、まったく同じ効果の罠とかもあって、テイムモンスターや自身も含めて変えられてしまった時はひどいものだったな。
多分、『異世界への寂蒔』の罠の中では、トップ3に入る死亡率……ダンジョン攻略失敗の高い罠だろう。
何せ自分でなくなってしまったと分かるやいなや、ほとんどの場合、瞬く間にテイムモンスターに敵性認定されるからね。
フェアリたちみたいに、名を持つ高レベルな子たちならば罠に対しての耐性があるのだろうが。
基本的に仲間にして連れ帰ることはできても、次の『異世界への寂蒔』探索に連れて行くことはできなかったからなぁ。
みんなと冒険できる、と言う意味ではやっぱり今回のように外に出る、息抜きは必要だなぁと思う今日この頃で……。
(第22話につづく)
次回は、2月10日更新予定です。




