第204話、魔王、聖女の正体に気づいていたのにうっかり伝え忘れてる
相も変わらず留学生グループについて回っている小間使い……のつもりで。
引き続きみんながダンジョン談義に花を咲かせているのを楽しんでいる俺。
スーイたちはそんな俺に慣れっこなのかそのままスルーしていたけれど。
ルシィさんは流石にそうはいかないようで。
その度にこちらを気にしていたのは申し訳なかったけれど。
「ふぅん、なかなか凄い魔法じゃない? ま、わたしは直接お菓子とか食べるほうが好きだけど。って、そうやって考えると、つまり腕輪と本の違いは……」
「おにぎりがあるかないかってこと?」
「いや、まぁ。確かに自分で身につけたものから食べ物が出てくるのはちょっと遠慮したいところだけどそれじゃあその魔法限定にならないかしら」
「そうともいう」
「ふふ。……そうですね、私としましては腕輪に付与された魔法効果は、装備した側がお味方だと判断された存在に限り効果を及ぼすものだと考えています。音に聞く腕輪は、強い影響を及ぼすバフがいくつもかけられているとのことですので、それこそダンジョン派閥同士の雌雄を決する時などに扱われるのかも。あ、少々前置きが長くなりましたね。つまり腕輪の効果は味方にしか影響がありませんが、本はその限りではない、あるいは指定ができるのだと私は考えています」
「おお、スキのない完璧に近い答えじゃナイの~?」
「そうねぇ、腕輪に現物を見た事なくて、そこまで答えを導だせるのはさすがね。でも、よく考えたら魔法のストックがないものとか、ダンジョンで目にする機会がありそうなものだけど?」
「はい。からっぽなものや、ひとつふたつの魔法が封じられた腕輪そのものは図鑑などで見たことがあるのですが。どうやら私たちの信心が足りないようでして。この『カムラルシア』で腕輪が下賜された……扱えるものはただひとりとしていないのです」
「そうなの? でもだってあるむぐぐっ」
スーイの言う通り、ほぼほほ腕輪とブックの違いについて答えてみせたルシィさんだったけれど。
話のまとめと言うか最後の補足のところで、それまでダンジョン愛に溢れるみんなのやりとりをにまにまして眺めているだけだった俺に注目していて。
はっ、もしや今の俺が念の為にと装備していた、自分でも何を込めたのか分からなくなってしまっているくらいにはスキル魔法等等を重ねがけ合成している『カムラルの腕輪』のことを、じっくり観察したいのかな、なんて思っていると。
そんな腕輪を持ってきている俺のことを指摘しようとしていたピプルの口を塞いだのはスーイだった。
「なるほど。ルシィさんがわたしたち……ライバルとも言える相手に話しかけてきて理由がわかったわ。一応いっておくけれど、腕輪ならわたしもピプルもダリアだって、装備できるわ。こうして出会ってしまった以上、ルシィさんもいずれ装備できるようになるとは思うけれど、そう簡単にはいかないわよ。わたしたちだって日々成長しているんだから」
「新人さんのゆーぼーかぶにはきびしいチェックが入るので、そのつもりで」
「アハハ。言われてみればワタシも結構大変だったっケ」
確かに、『ジエン・ド・レギオン』に所属している頼もしすぎる彼女たちならば腕輪を装備しることはできるだろう。
けど、俺が装備しているカムラルの腕輪は、俺用にカスタマイズしたものだからな。
『ジ・エンド・レギオン』に入りたいと言うのならば、その人にあってものを作れるし、その時に応じてみんなにあった装備をお渡ししてるところなんだけど。
そう言うスーイもピプルも、ここ最近ずっとダリアが言っていたように『ジ・エンド・レギオン』への新規加入に対して厳しくなっているからなぁ。
装備できるできないよりも、そっちの方が大変そうだけど、なんて思っていると。
まさか、この『盛淑のカムラルシア』のダンジョンコアであるルシィさんがうちの子たちのように積極的にダンジョン探索にいそしんで学び楽しんでいるとは思わなかったので。
驚きとともに、故にこそそんなルシィさんのダンジョン愛に圧倒されてブラックアウトしそうになっているわけでして。
ノ・ノアやダリアをも凌駕する驚愕の桃源郷。
ナイスバディに圧倒されているわけじゃないんだからね、などと言い訳しつつ。
改めてルシィさんのことを直視できずにいると。
それをどう思われたのか、はたまた関係ないのか、ルシィさんは身を乗り出すようにして勢い込んでいて。
「……っ!? みなさんが腕輪に限らず神魔道具を扱えると言う事だけでも驚きですが、わたくしたちですら神魔道具を扱う事が可能であると!? よっ、よろしければその術を教えていただけないでしょうか! 代価はいかようにも、どのような試練であろうとも乗り越えてみせますので!」
「ふむ? そんなの、そんなにむつかしくない」
「代価なんていらないわ! このわたしが教えてあげる! ルシィさん以外にも魔法を使いたい人がいるのなら呼んでちょうだい。それから、切磋琢磨してダンジョン大会のトーナメントであいまみえるって言うのはどうかしら!」
またもやピプルが何か言いかけたけれど。
見事なまでにそれを遮って話をまとめんとするスーイ。
そんなスーイに対し、ピプルも反論しないと言うか、元より仲の良い二人は、語らずとも通じ合っているようで。
スーイがピプルの頬とともに挟み込んだ意見に頷いている様子だった。
「そう言えばココ、学校だったものネ。授業の成果を試す生徒同士の催しものがアッタんだっけ」
『盛淑のカムラルシア』と呼ばれる極ダンジョンに通う生徒たちがその学びの成果、実力を試す機会にて卒業するための試験のかわりにもなっているダンジョン探索。
あるいはダンジョンバトルトーナメント大会。
そもそもが、その大会に参加するためにここにやってきたわけで。
もう一つの、本来の目的であるダンジョンコアさんとの対話もその流れでこなしてしまおうと言う事なのだろう。
どうやらこの極ダンジョンは、ノ・ノアやセイカのところのように、ダンジョンコアを蔑ろにしている様子もないし、そんなスーイの意見には俺も賛成で。
「そ、それではうちのパーティーメンバーを紹介いたします! ……あっ、今はちょっとすぐには全員集まれそうにないのでまた時間を取って、お借りしてもよろしいでしょうか!」
そんな、続きダンジョン愛に溢れ勢い込むルシィさんの言葉とともに。
こちらもメンバーが全員揃っているわけではないからと。
またの約束をして、この場はお開きとなって……。
(第205話につづく)
次回は、3月1日更新予定です。




