第203話、魔王、ダンジョン神を祀る総本山にて聖女と邂逅する
ピプルが言うように、俺の女性に対しての人見知りと言いますか。
ダンジョン愛溢れる人たちに対する過度の触れ合いによるブラックアウト、あるいは尊死してしまうそれは。
なかなか改善の兆しが見えないけれど。
それでもここ最近分かってきた事もあった。
先にも述べたように。
俺が、俺の身体が熱くオーバーヒートして意識失ってしまう対象は魅力溢れる女性と言う事以上に、ダンジョン愛溢れる人であるということで。
何とはなしに、この症状はピプルの献身により軽減されることはあっても治る事はないんだろうな、とも思っていて。
「あ、ええと。そのですね。先程皆さんがされていたお話、魔道具についての議論と言う事でよろしいでしょうか」
「まぁ、そうね。元々は特定の人物にしか扱えないような特殊なものだったけど、それをわたしが……ひいてはみんなが扱えるようになるのが目的だから」
「そのタメにはその道具が何をどこマデできるかヨクヨク知らなくちゃいけないってことデスね」
「るしっちは魔道具にくわしい?」
「るし……あ、はい。それは、ダンジョン神さまがダンジョン内に配置、つくり出し生み出されました希少性の高い、主に宝箱に収められているものですよね。ここ『カムラルシア』ではダンジョン大会やダンジョン神さまを崇めるお祭り、試験の成績優秀者に与えられるものなのですが。何でもダンジョン神さまに対する信心がなければ扱うことはできないと言われていますね」
「信じる心、ね。……まぁ、そう言う考え方もあるわよね」
「えっ? ダンジョン神さまの信仰以外にダンジョン神さまから授かりし宝を扱う術があると言うのですか!?」
「あっ、うん。少し考え方と言うか立ち位置がちがうと言うだけで、ダンジョンの神さまのことを思っているのはいっしょだから。って、わたしはべつにそんなんじゃないんだからねっ……じゃなかった、そんな事よりさっきの続きよ。腕輪と本の違いについて、ルシィさんの考えを聞かせてもらってもいいかしら」
始めは何故か、俺の方を見て何だか得意げな笑顔を浮かべていたスーイだったけれど。
ルシィさんに続き問われたことで、今度は何やら慌てていて。
誤魔化すように、ルシィさんがこちらへ話しかけてくれるきっかけとなった話題へと戻っていく。
確かに、これまでのダンジョンでは、俺のバフ……お味方にプラスに作用するスキルアイテムは俺自身と仲間たちにしか使えなかったし、議題にあがっている腕輪と本の違いは、主にその辺りにあって。
ダンジョン神を信仰しているとこの『盛淑のカムラルシア』の極ダンジョンではそんなスキルアイテム魔法を扱えると言うのならば。
もれなくルシィさんはその違いに気づいているのかもしれない。
まぁ、そんな細かいこと考えずに使っている人もいるだろうから。
正しくルシィさんはダンジョンについて詳しい、正しくここにいるスーイたちに負けないくらいにダンジョン愛に溢れているのだとも言えて。
「正直に言いますと直接目にし使用する機会を得たのは『本』の方だけなのですが。ブックはカードと違って使用回数が少ない代わりに、効果範囲が広いですよね? その効果が使用者に対して良いもの悪いものに関わらず、敵味方関係なく発動することはこの身をもって確認しています」
「あっ、そのブックってもしかして何かわたしの知らないような魔法が込められているブックだったりしない? いったいどんな魔法が使えたりするのかしらっ」
「はい! 私が賜ることのできたそのブックの名前は『小腹満足』です!」
誇らしげに、お決まりの四文字を発表するルシィさん。
それにおお~っととっても良いリアクションをする三人。
あれ? そんな名前のブックってあったっけか。
なんて思い立ち、ざっと確認してみると。
実はダンジョン活動における衣食住、特に食に関してはたいへん充実していて。
他にも目に見える形でバラエティ豊かな食を満たすアイテムが存在していたから。
何かを食して回復、満腹度が増えるわけではない『サティース』と呼ばれるブックのことを、見落としていたのは確かで。
ダンジョンで言うのならば一フロアぶん、その存在が見えていなくても敵味方関係なく小回復、満腹度を一度使用するたびに20パーセント上昇させるものです。
私がこの宝を賜り、使用できるようになるまでかなりの時間を要しましたが、ダンジョン攻略において重要な魔法であることは理解してもらえると思います!」
「へえ、聞くだけですごいブック、魔法ネ。忙しい時、食べる時間も惜しい時に自動的にお腹を満たしてくれるなんて最高じゃナイ」
基本、お味方にとってマイナスにしかならないようなアイテムスキルでも、ダンジョンにおいては使いようと言うものがいくつもあるものだけど。
これといったマイナスが見当たらないぶん、とても有用なアイテムスキル、魔法である事に間違いはないんだろう。
聞いた限り、そんな『サティース』の所有者になっていて。
使用限界を超えずに使い続けられているルシィさんのその様は。
正しくこの『盛淑のカムラルシア』にふさわしい、聖女的存在にも見えて……。
(第204話につづく)
次回は、2月22日更新予定です。




