第202話、ダンジョンマスター、魔法学園の生徒たちの魔法談義に聞き耳立てる
代表的な探索者である勇者と。
ダンジョンの創造者であるダンジョンマスター、魔王といった役割を。
学園の試験、その成績の最上位を得たものに与える、といった点。
それが、この『盛淑のカムラルシア』と呼ばれる極ダンジョンの大きな特徴で。
そうやって大々的に広め周知させているからこそ。
もしかしたら本来のダンジョンマスターは別にいるのかもしれないな、などと思いつつも。
断然気になるのは、この極ダンジョンを作り上げたダンジョンコアの存在であろう。
ダンジョンの命、心臓とも言える存在なダンジョンコア。
これだけ広大なダンジョンでなくとも、守り秘匿すべきもので。
そこらへんに放り出して自由にさせているだなんて以ての外(盛大な棚上げ)ではあるのだが。
この『盛淑のカムラルシア』のダンジョンコアは隠し隠れる気はなかったのか。
その身に危険迫っても、このダンジョン自体に危機が訪れるとしてもあるがままを受け入れるつもりであったのか。
あるいは周りの脅威に抗う術、力がある……ノ・ノア曰く、『盛淑のカムラルシア』のダンジョンコアは、成績優秀で、とてもダンジョンに詳しい人、とのことなので。
恐らくは身バレしても何とかなると思っていたのかもしれないが。
俺としてはスーイの魔法愛、ひいてはダンジョン愛が十中八九ダンジョンオタクであろう(同じ穴の貉だから何とはなしに分かってしまうのだ)ここのダンジョンコアな彼女に伝わったのだろう、なんて思っていて。
それは、他の極ダンジョン攻略の合間を縫って『盛淑のカムラルシア』内にある図書館……に備え付けてあった談話室での出来事。
様々なダンジョンに関しての資料、特に魔法書をいくつかピックアップしていたスーイと。
それになんだかんだで付き合っていたピプルとダリア、そしてそんな三人の監督役、時折アドバイスするためにと、俺自身もお邪魔させてもらっていたそのタイミングである。
「腕輪とブックの魔法効果、範囲の違いについて、かあ。確かにそれは中々にに難しい問題だ。ちなみにスーイはどんな考えなんだい?」
「そうね、わたしとしては同じ魔法であるのならばちがいはないと思うのだけど」
「腕輪デスか。あんまり使っているトコロ見た事ナイデスけど、カードとブックとはまた違うんデスよね?」
「分かりやすく言えば、カードは単体指定の魔法と同じもので、ブックは範囲指定の魔法よね」
他にも使用制限回数がブックの方が多かったりとか、カードの方が数多く持てるとか細かく違いはあるけれど。
ブックとカードに関しては間違っていないのでそんなスーイの言葉に頷いておく。
そうであるのならば、腕輪とブックには違いがあるのかと、再びみんなで考え出して。
「あ、わたしわかった。本だと手がふさがるけど、腕輪なら両手がつかえるから動きやすい、とか」
「うん。確かに腕輪の方が取り回しが利くし、素早く動けるな。まぁ、魔法効果、範囲の違いとはまた別問題だけども」
「ぐう。どうせあるじのことだからかっこいいところがちがうとか、でしょう」
「おお、それもありかな。確かにブックはいかにも魔法使いますよって感じだしなぁ」
そう言う見方もあるのだと感心していると。
やはりブックと腕輪には違いがあるのだという結論、議論になって。
引き続きみんなで考え込みつつ、スーイが答えを導き出そうとしていた時であった。
ようやっと、と言いますか。
同じように談話室にいて、そんな俺たちのやりとりを聞いていた、耳に入ってしまっていたらしい灰色髪おさげ(フェアリと違って太め)の少女が、遠慮がちに声をかけてきたのは。
「あの、その。横からお話に加わってしまって申し訳ないのですが、その『効果範囲』と言うものは敵味方、あるいはそのどちらでもないものに関してと言う事でよろしいでしょうか」
「あら。言われてみれば盲点だったわ。つまりは腕輪と本の違いは効果範囲、ブックは……ええと、とっても良い意見をくれたあなたはここの司書さん? それともここの学生さんかしら?」
「あっ、はいぃ。急にすみません。一年【時】組に所属しているルシィと言う者です」
「ラシィさんね、あなたとっても優秀なのね。わたしは留学生のスーイよ、よろしくお願いするわね」
「同じく、ピプルです」
「ダリアデスー、よろしく」
「……」
「はい、よろしくお願いいたします。……あ、ええと、その。やっぱり差し出がましい、お邪魔でしたでしょうか」
「あ、マス……ジエンは知らない女の子、とくにダンジョン大好きな子にはいつもこうだから」
朗らかに和やかに挨拶を交わしているのに。
見るからにダンジョン愛が強そうなルシィさんが近くまでやってきたものだからどっきどきで固まってしまっている俺を気にかけているようだったルシィさん。
それに苦笑してスーイが、ルシィさんが悪いわけではないのだと説明してくれていると。
続きピプルが、胸を逸らして俺のへたれっぷりを補足してくれる。
「わたし、ピプルがきびしい指導を行っているけども、いまだあんまり改善のきざしが見えず、気を悪くしてしまったらごめんなさい」
「ごめんなさい、ルシィさん。俺のことは気にしなくていいから、ささ、話の続きを」
どうやら急に声をかけられてしまって。
なんでもないふりをしつつもできないでびくついているのをばっちり目の当たりにしてしまったらしい。
初めから添えもの、スーイたちが読む本を持ってきたり片付けたりする役目でしかない俺に注目している風だったのは疑問ではあったけれど。
もしかしてそんな俺がいちダンジョンマスター兼ダンジョンオタクである事に気づかれたのかな、とも思いつつ。
もう一つこの流れて気づいてしまったことをそのまま流しつつ。
俺はモブに徹しながら、みんなのダンジョン話をわくてかで聞く構えを取ることにしていて……。
(第203話につづく)
次回は、2月15日更新予定です。




