第192話、ダンジョンマスター、忘れた頃に水落ちドッキリを仕掛けられる
※注
このお話、エピソードは。
俺自身夢だと思い込んでいなければやってられない、と言う事で。
途中から二人称風でお送りいたします。
我らが『ジ・エンド・レギオン』には、既に数えて五つのホームがある。
その内の一つ目、一番目のホームは上層階(15階まで)を残して第三ホームと統合されたからいいとして。
オアシス、砂漠の国『アリオアリ』へ置いておく形になってしまった第二ホームは。
ダンジョンマスターとして様子を見に行く必要があるだろうと言う事で。
そんな第二ホームの担当コアとなっているダリアと共に極ダンジョン攻略の合間に向かう事にしたわけだけど。
「ワタシも何度か利用させてもらってるんデスケド。心なしか第二ホームの温泉、ぬるくなってきているような気がするのデス」
「む、なんと。疲れ知らずの問題しかない『ブレスネス(祝福息吹)』の効果時間にも限度があったって事なのかな」
今思うと、『リヴァ(復活蘇生)』の効果を確かめておきたかったと言うだけで。
雪山(正確には雪崩)とがっぷりよつになるだなんてどうかしていた気がしなくもないが。
そこに『ブレスネス』が参戦したことで、そんな戦いの場? になってしまった山の麓に棲まう生き物たちのオアシスであった森の泉を回復……癒しの効果がある温泉と成る形で我が物にしてしまった件。
俺自身も含めて(もっとも俺にとっては天国と地獄が一挙にやってくるような緑一点状態であるからしてほんの数回しか入った事はないが)、その温泉を利用していたからこそ、ついにはその癒しの効果が切れる時が来たのかもしれない。
よっぽどの事がない限り仕様禁止令が出ている『ブレスネス』をかけ直すわけにもいかないし。
俺が向かったとて温泉の効能が維持できる訳でもないだろうけれど。
まだ温泉として使うのならば何か別の方法というか、第二ホームとしてダンジョンクリエイト某をする必要があるんだろう。
そんな事を考えつつ、第二ホームの泉があった場所へとやってくると。
「あらら? かと思ったラとっても茹で上がってマスね。マスターが見に来るからって復活したのでショウか? せっかくデスから、入っていきマスカ?」
「ふむ。せっかく来たわけだしな。他に異常もないようだし、入っていこうかな」
「……っ! それでは不詳ワタクシがお背中をお流しいたしマス!」
「いやいやいやっ! 大丈夫だから! 入りたいって言うなら俺、森の方砂漠の手前まで見回ってくるけども」
「じ、冗談デスよ。マスターが先にお入りクダサイ。見回りならばワタクシが向かいますカラ。マスターはゆっくりしていってクダサイ」
あっさり慌てふためく俺に、驚き苦笑しつつも言葉通りそのまま温泉のある16分の一フロアから離れていくダリア。
「むう。あんまり冗談にには聞こえなかったが……」
やけにあっさり引き下がったような気がしてしまうのは気のせいだろうか。
俺がみんなとのスキンシップで頻繁にブラックアウトしてしまうから、そのための対策……慣れて意識を保てるようにと、訓練的なものをピプルを中心にいつでもダイレクトアタックと言う名のふいうちをお願いしていたのだ。
今となっては、ずっと遠慮していたユウキですら油断しているとそんな訓練に参加してくるものだから。
ここ最近は、気絶している方が多いくらい、なんてことは、それこそ冗談で。
実際、ダンジョンマスターな俺が意識を失っている時……所謂魔王化してしまっている頻度も僅かながら減ってきていたから。
油断していたと言うか、みんなによる訓練の効果も出てきているんじゃないかな、なんて思っていたわけだけど。
「どれどれ。湯加減の方はどんな感じかな……っ!」
湯気の立っている見た目と違って冷たい! などと思ったのも束の間。
「ごしゅじんさまー! きたね! いっしょにはいろー!」
ざばあっと泉の水が伸び上がったかと思うと、そんな嬉しげな声とともにお湯、水と一体化していたらしいアオイが、正しく生まれたままの姿で飛び込んできて。
そのまま水の中へと引きずり込まんとしていて。
「ま゛っ!?」
手前味噌ながらダンジョン内にて敵なしを誇るダンジョンマスターにして魔王の俺。
そんな俺の意外とけっこうある弱点を上げるとするのならば。
やはり予期せぬところからのフレンドリーファイアならぬホットなウォーターなのかもしれない。
そんなわけでして。
今日も今日とて、あえなく俺はブラックアウトしていってしまって……。
(第193話につづく)
次回は、12月7日更新予定です。




