第187話、ダンジョンマスター、異世界産のアイテムが並び立ってほっこりする
ダンジョンマスターとして、ダンジョンを運営していく側からのダンジョンに関わる編集機能諸々。
基本的にそのほとんどをチューさんに任せっきりにしてダンジョン探索に勤しんでいたから。
ユウキに直接使わないのもったいないんじゃないのか、なんて言われていなかったら。
きっと、そちらの方はチューさんに任せっきりでもいいか、なんて思っていた事だろう。
「……ふむ。だがしかしユウキの意見も一理あるな。忘れていたわけでもないんだが、ダンジョン探索(俺自身が)するのに利用するんじゃなければ、ダンジョンマスターとしてクリエイト機能を扱うのもありかもしれないな」
「む? 主どのは新しきホームをつくる際に、それらを扱っていたような気がするが、ほかに何かあるのかの?」
「ああ、うん。ダンジョンクリエイトの時、ウィンドウ開くと出来る事が羅列されるんだけど……まずはええと、ウィンドウを可視化しようか」
「あ、想像してたのと同じ青いの出たっ。ステータスウィンドウって憧れてたんだよなぁ。地味に何回か、いでよステータスウィンドウって叫んでたし」
「厳密に言えばクリエイト、エディット画面だけどな。でだ、忘れていた訳じゃないとは言ったが、実はその中にロックがかかっていたものがあってさ……って、おお、やっぱり。ロック解除されてる! これってチューさんが?」
「むむ? いや、わしは何もしておらんよ。恐らく、主どの考え方が変わったからじゃないかの」
「レベルが上がったりすると解放されるとか、そう言う感じ?」
「解放条件なんて分からなかったしなぁ、どっちもありえるな」
改めて二人にもウィンドウが見える状態にしておいて。
前に見た時は、確かに鍵がかかっていたはずの『SHOP』の部分をチェックする。
あまり話題に上った事はなかったけれど。
この世界の通貨を、マイダンジョンでも得る事はできていた。
今までは、街で使うか所謂ところの銭投げ(金額によっては悪くない固定ダメージを与えられるのだが、何だかもったいない気がするのと、代用できるものがあったので滅多に使う事もなかった)くらいしか使う機会はなかったのだけど。
どうやら『SHOP』でそんな、結構溜まってるお金(単位はet)を使って武器防具、アクセサリーにアイテム、その他を手に入れることができるようで。
逆に、マイダンジョンに限らずダンジョンで手に入れたものを、売りに出すこともできるようだ。
基本的に倉庫の肥やしになっても、これ以上持てない、なんてことにもならなかったから。
泣く泣くあまり使わないものを捨てる、なんてことはなかったかれど。
数多くのアイテム武器防具が、『デポッド(配送倉庫)』バッグ内に貯まっていたのは確かだったので。
それらを売れば、大抵のものは買えるのでは、などと予想していて。
武器なら武器で、そこから更に細かく分かれているようで。
それぞれの項目を眺めているだけで時間が潰せそうだけど。
取り敢えず気になるのは、『その他』と表示されている部分だろう。
何せそれだけでは何を売っているのかさっぱり分からないのだ。
故に早速とばかりに『その他』の部分をチェックすると。
そこから増える、三つの項目。
一つ目は、ダンジョンアイテムに該当しないもの。
二つ目は、この世界の僅かしかない貴重品。
三つ目は異世界産、と書かれていて。
「おお、これは確かに何だかわくわくするのう」
「あれ、チューさんがこれを作ったわけじゃないんだ」
「うむ。もしかしたら学び舎に通っておった頃に、それを学ぶ機会もあったかもしれぬが……こういうものはマスターを見つけてから、なんて思っておったからのう」
そんなユウキとチューさんのやり取りを横目に、まずは一つ目をチェック。
それはざっくばらんに言えば、ダンジョン産ではない、魔力の篭っていない、この世界に存在する物品のようで。
松明から始まって、かちかちの黒パン、この世界の人々が普段使いする日用品などが多く表示されていて。
先程マイダンジョンで手に入れたおにぎりセットは、やはりこの世界の者ではないんだなあと気付かされつつ。
取り敢えずは項目、その二つ目を覗いてみることにする。
二つ目に並ぶものは、ダンジョン産かそうでないものかに関わらず、この世界に一点、あるいは数点しかないもののレプリカ品とのことだった。
本物と効果が同じかどうかは実際に買ってみないと分からないようになっていて。
一つ目の日用品諸々と違って、それこそ桁が違うべらぼうな金額が表示されている。
そのラインナップには極ダンジョンの象徴とも言える『虚栄』の代紋だけでなく、他の代紋もしっかりあって。
ああ、これを買ってしまえば全て解決……いや、台無しになってしまうそうだったので。
取り敢えずは見なかった事にして。
いよいよもって実は一番気になっていた項目の三つ目、そのラインナップを覗いてみる。
「名前でなんとなく予感してたけど、すごいよこれ! ネットショッピングじゃないか! あ、でもなんかいろんなマジックアイテムが並んでる? ……知らなかった。故郷でもあったのかな。まぁ、オレの故郷だけがその異世界ってやつじゃないのかもしれないけど」
「ほほう。これはまた、まっことわくわくするのう」
それに真っ先にテンションが上がったのはユウキだった。
ユウキが言うには、ユウキの故郷における日常雑貨……テレビやらノベル本やらおこたやらドラム式洗濯機やらに混じって、実は密かに存在していたのかもしれない、異世界産のマジックアイテムまで選り取りみどりで。
この世界のマジックアイテムなどと比べても、相当高い値段がつけられている。
どんなものがあるのか、もっと詳しく調べていくにせよ。
何かを買うにせよ、我が軍の長のみなさん全員集合案件だろうから。
テンションが急上昇している二人にほっこりしつつ。
とにかくみんなを呼んで、見てもらわないとな、なんて思っていて……。
(第188話につづく)




