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エンドロールには早すぎる~一万回挑める迷宮に棲まう主(まおう)は、マンネリ防止、味変したいと人様のダンジョンに突貫す~  作者: 大野はやと
メイン:エンドロール前

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183/192

第183話、ダンジョンマスター、この期に及んでもモブな門番だと言い張って






極ダンジョン、『暴威のキヌガイア』における魔王、ダンジョンマスターであるダリヴァの危機を感じ取った、生き残りしダンジョンボス、武具精霊のザガとガヌは。

主の元へと辿り着く前に、まるで吸い寄せられ集められるように、王城玉座手前にて合流していた。


本来ならば、力を合わせてなどといった気概はさらさらなく。

それでも少なからず同士として気を張っていたギュナやグロクのように、他者を気遣うことなく自身が先行することを良しとしていたわけなのだが。



「ちっ、これ見よがしに邪魔してぇようだな」

「ギュナやグロクは何してやがる。手間ぁかけさせよって」


まるで向かうべき場所を塞ぐかのように。

分かっていて示し合い、立ちはだかっているかのように。


金毛のその全身が武器となり守りとなる獣人族の少女と。

桜色の髪を流した東の果てに棲まうと言われる女武士が。

しかしザガたちに気づいた様子もなく(もしかしたらそれすらもブラフであったのかもしれないが)顔を突き合わせて話し込んでいた。



そんな二人の少女を、よくよく注視していたのならば。

あるいは、気にかけていたギュナやグロクであったのならば。

二人共に様子がおかしい……まるで別人のごとき佇まいであったことに気づけたのだろうが。

気づいたとて、当の二人がここにいない時点で察すべきではあったのだろう。


ザガもガヌも、自分本位のようでいて。

結局のところ、主に危機が陥っているかもしれない、なんて状況に我を忘れていたのは確かで。




「めんどくせぇっ、邪魔するやつぁ誰だろうとぶった切ってやんよぉっ!」

「すり潰すには手応えがなさそうではあるが、いたしかた、なしっ!」



ダリヴァと言う主のもと、ダンジョンボスとして繋がっているとはいえ互いに手を取り合うような形で共に戦うのは、正にその瞬間が初めてのことで。

それと同時に、皮肉なことに向かうところ敵なしであった……敗北を味わった事などなかった二人にとって。


抗いがたい敗北と。

理不尽を目の当たりにする初めての経験であったのは確かであろう。






―――事実、その時その瞬間それ以降に。


『暴威のキヌガイア』五天王と呼ばれたダンジョンボスたちを目にするものはいなかったという……。







               ※      ※      ※






結局のところダリヴァは。

どうあっても想定してなどいなかった外部……異界からのイレギュラーにより、長年かけて積み上げていたはずの計画を全て台無しにされてしまったのだ。



そもそものそのきっかけは。

ラマヤンですら気にかけ警戒していた始まりの異界からの訪問者にして想定外な存在であるその人がこの世界に降り立ったところから始まっていて。

モブな門番、ただのダンジョン狂いが今そこにいたから。

その他のイレギュラーたちが集結しているのだと、気づけようもない事をそれでも気付けなかったからこそ、なのだろう。





「がっ……ぐうぅぅぅおおぉぉっ!!?」


であるからこそ、ダリヴァはたった今その瞬間、何が起こっているのか理解できないでいた。

ほんの少し、ほんの少しだけ気を逸らしただけであったのに。


かつての名と故郷を捨て、極ダンジョンの主ダリヴァとして生まれ変わったのにも関わらず。

どさくさに紛れてこの場を去ろうとしているダンジョンコア、メイテの存在が目に余って意識をそちらへ向けた途端。

ダリヴァの目前には大仰なる剣持ちし極ダンジョンの解放者の姿はなく。



その代わりに。

長い長い深森のごとき色合いの髪持ちし魔女がそこにいた。


その名に相応しき樹木の節枝のごときたなごころが、避けようもない所まで迫っていて。

やられる、と思った時にはその手のひらが撫でるように袈裟懸けに振り下ろされていた。

直撃したかと思ったら、その手のひらは掠めるようにダリヴァを通過していて。



衝撃も、痛みもない……でも確かに。

その腕はダリヴァの胴を透過し貫いたとダリヴァ自身が自覚した途端。

新たなる極ダンジョンの王として顕現した、そんなダリヴァそのもの、力の源のようなものを根こそぎ奪われるような怖気がダリヴァを襲った。

表情を歪ませつつ目に入ったその手のひらには、それを証明するかのように深い深い闇色の靄……オーラのようなものが漂っている。



苦悶の叫び声と同じくして、感じるは脱力感。

思わず膝をついてしまったダリヴァ。


そしてそれは、一見すると悠久の間拮抗しているように見えた戦いに終止符を打つには十分すぎるほどの隙を生んだのは間違いなくて。




「……結局、何もかもチューさんさまに全部持ってかれちゃったってことかぁ」



そこには、ずっと続いていたかもしれない血湧き肉躍る戦いが終わってしまうことへの寂しさのようなものもあったのだろう。

悪いな、などと詫びを入れんばかりのぼやきが、すぐ側で聞こえて。


ダリヴァは、何を為すことも、残すこともままならず。

魔女の掌が触れた部分をなぞるようにして、袈裟懸けにわかたれて。


余りにも突然に。

この世界でのダンジョン運営生活。

ダンジョンマスターとしてのその生涯を終えるのだった……。




     (第184話につづく)








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