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エンドロールには早すぎる~一万回挑める迷宮に棲まう主(まおう)は、マンネリ防止、味変したいと人様のダンジョンに突貫す~  作者: 大野はやと
メイン:エンドロール前

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第16話、魔王、苦労と奇跡の結晶である、腕輪を披露する



俺、チューさんをふところにしまったまま、フェアリやユウキの前に出る。

そしてそのまま、実は気づいてますけどって態度バリバリで何者かが潜む茂みへと近づいていく。



「危ないっ!」


と、ユウキが叫ぶのとほぼ同時。

ひゅおと風切って茂みから俺に向かってくるのは、ちょっと見づらい保護色が塗られている複数の矢。


その数三本。

ふともも、心の臓、頭。

なかなかの腕前なのか、寸分違わず近づいてくる。



「あ、大丈夫大丈夫」

「ちょっ、おいぃっ!?」


ターン制で、攻撃権はあちらが先だったから、というのもあったのだけれど。

避けもせず振り返って問題ない事を告げると、何してんだって驚いているユウキと目が合う。

せっかくだから、自身の装備品を確かめるつもりだったという言い訳は、しかし口からついて出るよりも早く、結果として現れた。


一つ目の足の付け根を狙ったもの。

そのまま刺さりそうになるも、弾かれて落ちる。


ふむ、一ダメージか。

直ぐに俺の自慢の装備品の一つ、カムラルベルトの効果で、回復してしまった。

おかげさまで、痛みもない。



二本目の心臓部分を狙ったそれは、俺に当たるか当たらないかの所で、つるりと滑ったかのように方向変え、俺に当たらずあさっての方向に飛んでいってしまう。

これは同じく、カムラルベルトの効力の一つである『見切フォーサ』だな。

毎回ではないが、気まぐれに攻撃を受け流してくれるものだ。



そして、三本目の矢。

まさに殺す気満々で頭を狙っていたそれは、やはり触れるか触れないかの瞬間、包み込むように蜘蛛の巣状の魔法陣が展開して、矢の勢いを殺してしまった。



「おお、毒の矢か。そこそこレアだな」


それも、6つあるカムラルベルトの効力で、ランダムではあるが相手の飛び道具、矢に限らず自分のもの……俺が使えるものとして拝借できる、『強奪スナッチ』と言う能力だ。


カムラルベルトには、今ここに上げた三つ……回復力を高めるもの、回避力を上げ受け流すもの、相手の遠距離攻撃を獲得できるものの他に、敵性の居場所が分かる『索敵サーチ』、壁などに囲まれたダンジョンを見渡せる『透世』(シースロー)』、食料、水が少なくても耐えられる『忍耐パッセブ』、水の中や火の中に入っても大丈夫な『通行パス』が付与されている。


他にも『自爆クレイス』や、『ランダム転移メタスタ』、『デバフ耐性トレーラ』、『経験値アップ(ディレック)』などの効果をストックしているが、基本、その時の状況によって付け替えるようにしている。



『異世界への寂蒔』では、これらをいかに早急に揃え、ひとまとめできるかがダンジョンクリアの成功率を高めると言っても過言ではなく。

ここまできっちり揃ったベルトは、中々どうして、外に出なくては使えないので、外に出ていきなり使う機会があって、なんだか得した気分というか、むしろありがとうといった感じで。



「で、デタラメすぎるっ」

「おお、そんなに褒めるなよ」

「褒めてねえっ」


翼ぱたぱたせわしなく可愛いユウキとそんなやりとりをしていると。

飛び道具がその一回で無駄とわかったのか、ゾロゾロと大の大人達がかくれんぼしていた茂みの中から出てきたではないか。



「隠蔽の拙さの割には結構やりそうだね」

「ふむ。ただの野盗ではない、ということかの」


つぶらな瞳をきりっと凛々しくさせ、その物騒な触手を持ち上げるフェアリに、懐からちゃっかり顔を出して驚きの事実を口にするチューさん。


え? 野盗じゃないの?

まさか本当の考えもしなかった、故あって茂みでかくれんぼしていた一般人なの?


いや、その割にはきっちりいいところを狙ってきてたけど。

そう思い、こちらの進路を塞ぐように現れた五人の男達を、まじまじと観察する。


ひげはぼうぼう、髪はばっさばさ、服も汚れていて、いかにも山賊、盗賊、A~Eといった風貌。

ただよくよく見ると、後方にいるDさんとEさんは、ごついのと使いやすそうな弓矢を一セットずつ持っていたし、Cさんは魔法が飛んできそうな杖を持っていた。

典型的な感じをするのは、斧を持ってるBさんだけで、おそらくリーダーであろうAさんは、少々お値段がしそうな西洋剣を構えている。




「ちょっと、いきなりなんなんすか。俺じゃなかったら大事故ですよ、もうっ」


野盗なら野盗で、テンプレ返しが来る事だろう。

それでも、矢を返してあげようと親切心で近づいていくと、何故か彼らは一斉に武器を構えた。

そして、コミュニケーションのコの字もなく、問答無用でこちらに向かってくる。


う~む。ユウキ以外の、初めての異世界人とのテンプレなやりとりを期待してたんだけどなぁ。

金を出せとか、女子供はお楽しみだぁとか、通行料払え……いや、これはちょっと違うか?


とにもかくにも、あちらさんにはお約束と言うか、会話する気はさらさらないようであった。

もしかしたら、古いRPGじゃなくて、比較的新しいRPGによくあるアクティブだけど喋らない、人間だけどモンスター扱いされる人たちなんだろうか。

RPGの敵と言えばモンスター派だった俺としては、当初結構衝撃的だったっけ。



「……ファイア・ボールっ!!」


なんて事を考えていたら、前衛らしきリーダーなAさんと、斧持ちのBさんが散開するタイミングで、

Cさんの杖からごう!と文字通り火の玉が飛んできたではないか。



「ご主人!」

「……っ」


接敵したら、積極的に攻撃参加。

テイムモンスターの用命で言うと、フェアリは正にその状態らしい。

バタバタと空を飛んでいくユウキと、問答言わず懐に潜り込むチューさんとの違いがよく出ている、というもので。



「まぁまぁ、フェアリ、落ち着いて」

「わわっ」


とはいえ、いくらフェアリの触手攻撃が強力であろうと、基本は常に俺の背中に張り付いて回復をお願いする後衛特化型なのだ。

俺は、テイムモンスターにおけるマスターの基本的能力にして、必須能力である位置変更(と言う名の、その実フェアリをまたまた後ろ追いやっただけ)をしつつ、スキルの本を一冊取り出した。



本来なら、その時点で自身のターン終了となり、相手の攻撃を待つ羽目になるのだが、一見ただ入れ替わっただけに見える位置変更は。

テイムマスター……俺に限り、ターンを減らせず行動出来るスグレモノなのだ。


最も、ターンに縛られているのは俺だけであって。

周りからすれば素早く動いたようにしか見えないのだろうが……。


  

  (第17話につづく)







次回は、1月30日更新予定です。

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