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エンドロールには早すぎる~一万回挑める迷宮に棲まう主(まおう)は、マンネリ防止、味変したいと人様のダンジョンに突貫す~  作者: 大野はやと
メイン:エンドロール前

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第159話、魔王、結局ありそうでない出番に気を揉み出す



元よりダンジョンにおけるモンスターたちとの戦いよりもその攻略に重きを置いている俺にとってみれば。

ようやっと出番が回ってきましたよ、とばかりに。

一足先に『獣型』……つちのこ形態のピプルをふところマスコットとして共にしつつ。

ちゃっかり発見していた下の階へ続くであろう階段……ダンジョンにあるものとしては珍しいタイプの、

ぐるっと螺旋に降りていくそれを躊躇う事なく駆け下りていくと。



すぐに第二階層へと辿り着くことができて。

初見であったのならば思わず目を背けたくなる異様の……首下からドドメ色の何かを垂れ流している生首がなる樹の柱が見えてきた。


 


「あ、あれだよ。ごしゅじん、わたしが見つけたのは」

 

階層が変わったから、ではないだろうが。

そのまま丸まってお休みしそうな勢いであったピプルははっとなって起き上がって。

その樹柱の根元までぴょんぴょん跳ね飛びながら駆け出していく。


つちのこと呼ばれる幻想の種がそういった走り方であったのかは初めての発見ではあったが。

ふところから出るのならば『人型』……白銀髪赤青オッドアイな美少女な彼女は、呼んでもいない魔王を呼び出してしまいそうであるので自重することにして。

 



「うーむ、匂いますな。この根っこの下、かな。鼻は瞳ほどきかないけどいやぁなにおいがただよってくるよ」


あっと言う間にふところから離れて飛び出していくものだから。

まだ第二階層の罠の有無など調べ終わっていなかったこともあり、結構ヒヤヒヤしていたわけだけれど。


言われてみれば一階層もそれらしいトラップは見つけられなかったので。

不用意に踏み込むことで発動するタイプの罠はこの階層には少ないのかもしれない、なんて思いつつ。

それ自体罠かどうかは判断に迷うものの、頭上から滴り落ちる得体の知れない液体を避けつつ、肉塊のような地面と繋がっている根元を見据える。


節くれだった肉色の根が、正しく地面に一体化するが如く、クモの巣状に広がっていたが。

よくよく見ると蔓延る根と根の間に隙間が見える。



「おお、確かに下方にスペースが存在しているみたいだ。どうにかして入れないかな」


一見すると闇が広がっていて、先はようともしれないがよどんだ空気の流れがあって、見た目より広そうなのが分かる。

問題なのは、その隙間を無理矢理にでも根を広げて入ろうとすればあるいはこの先にいるものに気取られそうな事だろうか。



「んー。ごしゅじんがやる前にわたしが試してみてもいい?」

「瞳術使うMPは……ふむ。すっかり回復してるじゃないか。それじゃあお願いしようか」

「よし、んじゃ【グラウソラス(成長促進)】の瞳でいくよ」



しかし、どうしようかと相談するよりも早く。

ピプルはどこかで聞いた事があるような気がしなくもない瞳術を発動する。

 はたして、魔法やスキルの類による接触は大丈夫だろうか、気取られはしないのだろうかという心配もなんのその。

大地に根を張る赤の主張の強すぎる木々根っこはわずかの軋む音すらさせず……正に生きているもののようにうねうねと動き出したかと思うと。

綺麗な曲線を描いてなんとか通れそうなほどのスペースを作り出したではないか。



「さあ、こんな感じでどうかな、ごしゅじん」

「おお、いい感じだ、ありがとう。素敵な瞳術じゃないか。それじゃあ早速、降りてみましょうかね」

「む。ごしゅじんはすぐそういうこという。まったくもう」

 

当然詳しい賞賛を口にはしなかったのは。

今のピプルの瞳術って『ドーピングレベルアップ』に使えるんじゃね、と言った禁止句が含まれていたからである。


それに気づいているのかいないのか。

何やらせわしない様子に怒られやしないかと気を揉みつつも。


俺は念のためと言うか事前の準備はまぁ必須でしょうと。

自身とピプルに『ルジドレオ(透過透明)』を使用する。


それにより辺りと同化……抱え直したピプルがしっかり透明になっていることを確認すると。

同じく微かに透けては見える自身の手を根の這う淵にかけて、慎重に闇の向こうへと向かっていく事にする。





「お。もしかしなくともこれって隠し階段扱いだったのか。3階層……8分の1程度のフロア、何かの明かりが見えるな」

「ふむ。緑色の光か。普段目にしないというか、あまり良い色じゃないね」



それなりに下った感覚はあったが。

どうやらあっさり次の階層まで降りてしまったらしい。


もうすぐという所で僅かに見える燐光めいた光。

その光源がピプルの見つけたこの極ダンジョンをを形成するコアかそれに類するものなのだろうか。


そうだとするのならば。

ダンジョンボス……俺と同じ立ち位置なダンジョンマスター某が待ち受けている可能性もあった。


まずは、あのおどろおどろしい光源が一体何であるのか調べるところからだろう。

ピプルが言うように。

見るからに、目に優しくないというか、自然物であるなら近づきたくない色である。

それでも、そのフロアの足場……地面がどこまであるのか分かるだけでもありがたいものであるのは確かだろう。



「あれがここのダンジョンコア……そんな単純な話はないかな。取り敢えずもっと近づいて調べてみよう。『ルシドレオ』さまさまなうちにね」

「む。いつの間にやらわたしまで消えてる。まったくそういうとこだぞごしゅじん(二回目)」



そんなわけで。

俺とピプルは、そんな言葉をかわしつつ。

ゆっくり焦らず粘度の高いデコボコ地面の三階層を進んでいって……。



   (第160話につづく)








次回は、4月21日更新予定です。

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