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エンドロールには早すぎる~一万回挑める迷宮に棲まう主(まおう)は、マンネリ防止、味変したいと人様のダンジョンに突貫す~  作者: 大野はやと
メイン:エンドロール前

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第153話、魔王、通常攻撃を解禁する前に、瞳術使いの彼女を召喚する




そして、最後の一組。

ユウキとピプルが対するのは、人面犬C……何やら舌の先が丸まっている、悍ましさの濃い一体であった。



「カまねば……されないィィ!」


まるでそれが彼の鳴き声であるかのように。

見た目の割に随分と流暢なセリフ回しで突進してくる。


その明らかにサイズの大きい前足の爪で薙にかかるのか。

毒臭撒き散らしぎらつく牙で毟り食もうとしてくるのか。


その声には、どうやら人面犬Cの圧力……魔力や瘴気めいたものによる、『威圧』や『恐怖』を与える効果があるらしい。


しかし、ある程度慣れる事で耐性はつくようで。

マイダンジョンによる経験が如実に現れていたからこそ二人はそんな突進にも対応できていた。



「術の発動までの時間稼ぎはよろ」

「了解!……【ストレング・アップ】! からのっ!!」


瞳術の発動準備を始めるピプルを後ろ手に。

流れるようにユウキは人面犬Cを迎え撃つ。

勇者の基本魔法として備わっているらしい自身の攻撃力を底上げする魔法と唱えると同時に、天の構えからの上段の一撃を繰り出す。




「なぃぃぃっ!?」


何度も蘇るからこそ防御が疎かになっていたのか。

まさか威圧をものともしないで、自身の攻撃に合わせカウンターを食らうなどとは思いもしなかったのか、

驚愕に魂消る声上げて四散しちりぢりになる人面犬C。


思わずやったと叫びそうになるくらい会心の一撃だったが。

そんなユウキの目前で、やられたそばから逆再生のように濃紺の肉塊が寄り集まって復活を遂げる人面犬C。



「じ、上等だぁっ、千人斬りならうちのダンジョンのレベル上げで吐くほどやってるし!」


まるでこれから訓練でも始めるかのように。

むしろ蘇ってくれなくちゃ物足りないとでもいいたげに。

ユウキはそう吠えつつ、いざ耐久連携練習だと意気上げて向かっていく。



「ツをぉぉっ……っ」


心なしか、呪詛吐くその言葉もユウキの勢いに押されているようも見えた。

事実、それはピプルの瞳術が完成するよりも早く。

既に一方的なタコ殴りの様相を呈していて。



(これはこれで予想外。もしかしなくとも瞳術いらない感じ?)


基本後衛で、どうしても瞳術の発動に時間がかかってしまうことは。

周りも含めてピプル自身慣れているはずであったが。

いなくてもいいのではなんて考えに至るとは思わず、妙な焦燥感に襲われるピプルである。


取り敢えず、レベル上げ……じゃなかった、千人斬りを始めてしまったユウキに対してピプルの瞳術は必要ないようにも思える。

ならば他の自然と出来た組の中に、助太刀すべき組がないものかと辺りを見回すピプル。

すると、当然とばかりに後方司令官面しつつ暇を持て余していた俺と目があってしまう。




「ピプル、こっちだ!」


悩み悩んで考え抜いていた体で。

ようやくはたと何か思いついたとばかりにピプルの名を呼ぶ俺。


同じく暇を持て余している(訳ではない)この状況を打破する何かいい案が思いついたのか。

ピプルとしては単純に助太刀の要請だと思ったらしく、ユウキにそれでも律儀に抜けるよと声をかけたあと、転がりそうな勢いで俺のもとに駆け寄ってくる。




「げげはははっ!」

「ほっ、とっ、ぜぃっ!」


野武士のごときデュラハンのごついがボロボロの鉈と、しなって伸びるチューさんのつるのムチ+体術の応酬。

お互いの掛け声とともに耳障りで軋む金属の音が軋み響いている。



恐らくこの『嗜虐のカタコンベ』の中ボスクラスであろうモンスターが、倒しても倒しても復活してくる上層とも呼べるこの場所。

それでも、ダンジョンそのもののルールを壊してしまいかねない俺が手を出すには早いと。

存外余裕ぶって腕なんぞ組んでいた俺であったが。

繰り返し蘇ってくることを考えると。

人面犬達だけでなく、ボロをまとったデュラハンも強さのランクが想定よりも頭ひとつ違っている気がしなくもなかった。


それならばと。

いざとなったら単純な直接攻撃……テイムしたくて普段は『ガルゲ・ボウ』ばかり装備していて。

攻撃以外の用途に使われることの多い、本来の俺の獲物である、『ヴァレス・ソード』によって、チューさんの補佐をするつもりだったわけだが。


さすがのうちの勇者さん。

案の定マイダンジョンにてレベル上げをしすぎた弊害で、

中ボスクラスのモンスターが当たり前に蘇ってくることを、それほど苦に感じてはいないらしい。

 

おかげでピプルが手が空いてこっちに来てくれたから。

無い方がいい俺の出番は後回しだと。

チューさんの背後からいつでも補佐できる状況を維持しつつ、ピプルに声をかけた。



「ピプルっ、悪いけどチューさん手伝ってくれ!」

「むう、本気で主どのは戦わんつもりじゃなあっ」

「うわ。ぶれすねす狂いも体外だったけど、あるじ極端すぎない?」


周りの人面犬も、襤褸をまとったデュラハンも、こちらの言葉を逐一理解しているようには見えなかったからこその、そんな堂々としたやりとり。


まぁ、バレて困るようなことは特にないというのもあるだろうが。

そんな言葉を理解していたのならば、まだまだ余裕がある、舐められていると思われてもおかしくなかっただろう。

その事で戦況に変化が訪れるのならば、などといった目論見があったのは確かで。



「もうお察しの通りだとは思うけど、ここにいるモンスターは倒しても倒しても蘇ってくる。中々に厄介でたまらんが、ピプルには、今からこの状況を打破する使命をお願いしたい!」

「言われなくてもそのつもりだったけど、改めてそういうふうに言われるとなんだか実に嫌な予感がする」



変わらずのチューさんと襤褸をまとったデュラハンの打ち合い。

むしろ今更な気がするが、作戦会議をしていることを少しでも悟られぬようにと。

そこに、チューさんの邪魔にならない範囲で横槍……野武士なデュラハンの面差しがすぐそこにあるという、生理的にもあまり宜しくない状況に身を投じつつ。


背後から聞こえるそんなピプルの言葉に答えることにして……。



    (第154話につづく)








次回は、3月9日更新予定です。

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