第149話、ダンジョンマスター、他所様のダンジョンを吟味する前に自前の陣地の広さに悩む
現在マイダンジョンの『第三ホーム』である、元『虚栄のフィルマウンテン』、などと呼ばれているラマヤンさんちの最終ダンジョン(全15階)。
それを、一般の探索者さんたち(挑戦に来るかどうかはこの際おいておく)に開放するにあたって。
そんなフィルの名前が付く山の裾や麓で暮らしていたというモンスターたちをそこに受け入れるとともに。
『ジ・エンド・レギオン』の各軍団の、『人型』以上に成長中のみんなの修練場として。
最下層……15階にあったコアルームは、移動魔法機械……『虹の泉』の向こうへ移動し切り離し、『第二ホーム』へと。
ダンジョンコア……ノ・ノアが居た場所には、それっぽい『大顔樹』(という名のモンスターをモデルにしたもの)のダンジョンギミックを配置して。
『デ・イフラ(幻惑混乱)』(『ブレスネス(祝福息吹)』なし)をかけておいて。
そんなこんなで改めてまして。
この『第三ホーム』を囲うようにして在るとう6つの極ダンジョン攻略についてみんなに集まってもらって話し合うこととなった。
もちろん、そんな話し合いの中心には、この極ダンジョンが蔓延る『天上世界』に一番詳しいであろうノ・ノアがいる。
前提として、天上世界と言う名の通り、俺たちが今までいた世界から見て遥か上空にある、という事になっているらしい。
実際にそうなのかもしれないし、天空のダンジョンと言うのもロマンがありがちだが。
俺としてはこの世界すらもダンジョンと見ていて。
今までいた場所が一階で、こちらが二階なのではないか、なんて思っていて。
もし暇があったのならば、天上世界のイメージとして雲の上から地上を拝むような光景を目の当たりにしてみたいものである。
「それではっ。僭越ながらこの天上世界にある極ダンジョンについて私が分かる限りで説明したいと思いますっ。簡易的はありますがこの地図を見てください。……まずはここ、『虚栄のフィルマウンテン』改めまして『第三ホーム』がここ、真ん中にありますが。ここ同じように海や山といった自然にある極ダンジョンが三つ、街……国とともにある極ダンジョンが三つですね」
ノ・ノアは先輩お姉さんたちに見つめられて少し緊張しているようにも見えたが。
とりあえずのところ質問は後回しということで、ノ・ノアにはそのまま話を続けてもらうことにする。
「『第3ホーム』から北に位置する双子山、その峡谷に『嗜虐のカタコンベ』と呼ばれるダンジョンがあります。そして、ここから南西に位置する砂漠地帯には、『憤懣のデザートフィールド』と呼ばれるダンジョンが。ここから遥か東に広がる雲の海の中にあるのが、『忸怩のアビス』と呼ばれるダンジョンです。こちらの三つは、ダンジョンの入り口へ向かうまでも大変ですが、それぞれが独自のコロニーを築いているので、他の地に出向いて支配を広げようといった気配は薄いですね」
それは、ダンジョンコアの本能なのか。
あるいは同じ極ダンジョンのコア同士だからなのか。
それぞれの情報とある程度、おおまかな居場所が分かるらしい。
それも、まさかダンジョンコア自体が自由に動けるだなんて上(運営)も思ってもみなかっただろうから。
正しくノ・ノアだけの力である、とも言えて。
手始めに上げてくれた三つの極ダンジョンは。
軽く話を伺うだけでも大変魅力的に思えたが。
どこへまず向かうのかは、残りの三ヶ所を聞いてからでも遅くはないんだろう。
「そして、残りの三つは街や国とともにある……ではなく、街や国そのものになってしまっているダンジョンです。『ドォーミク』とかつて呼ばれていた帝国にあるのが、『慚愧のドォーミク』で。現在はその地を、アクマ族が支配しています。同じようにエンジェル族が支配しているのが、かつて人族が信仰していた十二魔精霊教会の総本山があった、『盛淑のカムラルシア』です。そして、これら他のダンジョンに侵攻されても尚抗い、逆に侵攻し返し続けているのが、人族の暮らす国、『キヌガイア』。『暴威のキヌガイア』ダンジョンのある場所ですね」
やはり、ダンジョン運営側にとってみれば。
ダンジョンと言うものは人との暮らしに密接に関わっている方が強く大きくなっていくようで。
後にあがった三つのダンジョンは、この二階……天上世界において特に強大で栄えたものになるらしい。
「あ、ですけど。その、自慢するわけではないですけど。その七つの極ダンジョンの中で陣地が一番大きいのは虚栄の……いえ。ここ『第三ホーム』ですから!」
その名前の通り、というわけでもないのだろうが。
他の極ダンジョンへ向かうにあたって最初のヤマとなるのは。
そうして胸を張るノ・ノアが言うように。
『第三ホーム』を取り巻く、いつの間にかマイ陣地になっているこの広大に過ぎる山を、どう抜けるかで……。
(第150話につづく)




