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エンドロールには早すぎる~一万回挑める迷宮に棲まう主(まおう)は、マンネリ防止、味変したいと人様のダンジョンに突貫す~  作者: 大野はやと
メイン:エンドロール前

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140/192

第140話、魔王、目隠しも本当はきかないのだけど、しっかり空気をよんで





『ディセメ(識別解析)』、LOG……




―――極ダンジョンナンバー7、『虚栄のフィルマウンテン』。



大幅なダンジョン改変を行いますか?


……YES。


他の極ダンジョンと支配地域が重なっています。

全ての陣地を改変するには、他のナンバーの代紋が必要となります。


代紋取得のための前線基地、『第三ホーム』の作成に取り掛かりますが、よろしいですか?


……YES。





                    ※





実は、その時その瞬間。

俺が使った『ヴァルーノ(万能得)』の薬には。

チューさんたちみんなに持っていてもらっている『リヴァ(復活蘇生)』のカードと同じように。

『ブレスネス(祝福息吹)』のカードが二枚付与されていた。


それこそ、『リヴァ』や『リコーヴァ(治癒回復)』、『ルシドレオ(透過透明)』、『デ・イフラ(幻惑混乱)』、『サンクチュアリ(破魔聖域)』などといったとっておきにしかなされていない重ねがけ。



そもそもが本来の『ブレスネス』の効果としては。

ランダムではあるが、一つのアイテムスキルが何度も、複数回使えるようになるものであって。

そんな名前を連想させるような、世界に祝福を与えるようなものではなかったのだけど。



今回は、過去のやらかしを鑑みて、それを敢えて分かった上で使ったわけで。

でも、それでも。

その結果は俺の予想を遥かに超えていた。



『ヴァルーノ』の薬、その効果を表すエフェクトである、七色の虹の粉を振りまいたごとくのキラキラが、ノ・ノアさん……赤と黒を纏った大樹めいたダンジョンコアへと降り注いでいく……。


ノーマルな『ヴァルーノ』は、受けたものの身に起こっている状態異常だけでなく。

バフなどの状態変化にも対応し、全てを元に戻す、リセットするものである。


厳密に言えば全てを元に戻せるわけではないが。

もしこれでうまくいかなかったのならば別の方法を、なんて思っていたのも杞憂以前に問題で。





「あ、はがれてゆく……」

「きらきら、お姫様スライムみたーい」


気づけば。

隣にいたユウキとふところからぴょっこり顔を出したアオイのそんな呟きのように。

もれなく『ヴァルーノ』の煌く残滓をその身に受けたダンジョンコアは。

そんなキラキラとともに下から上に渦巻き上がるといった、もう一つの『ヴァルーノ』が然と効果を発揮していることを表すエフェクトによって。

それまでに身につけていた、与えられていたものたちが剥がされ吹き上げられていくのが分かる。




「次なる生の、幸福を望みます」

「……ちゃんと帰るべき、帰りたい場所に帰れたのかな。そうだったらいいな」



その血肉片も骨も瞳も、元は生あるもの。

ラマヤンさんにとってみれば、それはダンジョンコアにバフを、活力を与えるものだったのだろう。

良くも悪くもリセットするのが『ヴァルーノ』。

もれなくその効果を発揮したことにより、キラキラの上昇気流に混じって儚く消えてゆく生あったものたち。


エルヴァとフェアリのそんな祈りが届いたのか。

伺える表情にはカタルシスめいた、解放された喜びの感情が浮かんでいるような気がして。




「……むっ!? 地震? このタイミングでダンジョン改変ですかっ」

「大地を操る魔法って強いのよねぇ。でもこれは……」

「あるじ、またぶれすねすでやらかした?」

「いやや、これはなんていうか、織り込み済みのやつだから、多分!」



いつぞやの泉が温泉となって、『第二ホーム』となってしまったように。

『ブレスネス』が周りの環境に大きな影響を与えることは分かっている。


恐らくは、その時のようにラマヤンさんには申し訳なくも、俺たちにとって都合の良い感じに変わっていっているのだろう。


とはいえ、『ブレスネス』×2がどんな効果を及ぼすのか及びもつかないのだから。

そんな折込もあっさり超えていきそうではあるが……。


などと思っていると、不意に聴こえてくるフェアリの、首筋あたりがひゅっとするちょっと鋭い声。




「のん! ご主人さまを連れ出すんだ!」

「はーい! ごしゅじんさまごめんねー」

「うひゃあ、ほんとにひゃっこい! ど、どどどうしたんだヴェノン!」

「うん! あたらしいこがはだかんぼだからごしゅじんさまはみちゃだめだんだよー」



……なるほど。それなら仕方がないな。


って、なんだとおぉぉっ!?

いや、うん。『ヴァルーノ』によってダンジョンコアのノ・ノアさんのバフもデバフも装備品もリセット、パージしてしまったのだから。

そうなるのはそりゃあ必然なんだろう。



助かったようなそうでないような。

思ったよりもひゃっこくて、柔らかいヴェノンの手のひらが瞳瞼を覆っているから、そっちに気を取られていると。

どうやらノ・ノアさん自身もダンジョンコアとして、ギミックとして動けないでいた状態から解放されたようで。



途端に慌ただしくなるその場。

俺以外の頼りになるみなさんが。

新たなる仲間を正しく受け入れんと忙しなくかしましく動き出すのが、耳だけでもよくわかって……。



     (第141話につづく)








次回は、12月6日更新予定です。

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