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エンドロールには早すぎる~一万回挑める迷宮に棲まう主(まおう)は、マンネリ防止、味変したいと人様のダンジョンに突貫す~  作者: 大野はやと
メイン:エンドロール前

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133/192

第133話、魔王、テイム的にもどさくさ紛れの先制攻撃は譲れない




 やはり、一般的な探索者にとってみれば。

水中を進み攻略していく策がなければ早々に退却していくのが、このほぼほぼ水の中と化した10階層以降になるのだろう。


逆に、その対策を然と施している勇なる者たちは。

そこを通過点として留まることなく先へ先へと向かっていくのだろうか。

ここまでの安全地帯には、探索者たちが待機していたその跡は見当たらなかった。

 

故にエンドロールのその先にあるという『極』ダンジョン……その情報を運営のもと働くアクマやエンジェルなみなさん達から得ることができれば、そこへ向かうことはそうむつかしいことではないのだろうか。



……などと思いつつも辿り着いたのは。

数えて15階。

マイダンジョン(うわべ)において一区切り、取得アイテムによって脱出が可能となる階層であるからして、何かしらあるだろうとは思っていたが、14階と15階の間にある安全地帯からいざ飛び出したところで。


広がるは、何だか久方ぶりな気がしなくもない砂地な地面。

視界開けるがごとくの広さから判断して、二分の一フロアであろうそこには、いくつものこんもりした砂山が飛び地となって広がっている。


当然それ以外には浅いながらも水が湛えられていて。

正しく一本道ではないが、ちょうど対面に残りの二分の一フロアに向かえそうな通路が見えた。

(いつものように、その先は黒色靄がかかっていてその先は見通せない)




「……これ、水のところは一見分かりづらいけどかなりの深さみたい。罠がないとも限らないし、あえて向かう必要はなさそうかな」

「かといって砂地に罠がないってことはないよね。テレビ、ゲーム? で見たことあるよ。踏み込むと場所によってはそのまま沈んじゃうんだよね」

「そしたら真ん中あたり飛んでく? ボク、マスターのばしぃってふっとぶやつ受けてみたいなー」

「うーん、それもまぁ悪くはなさそうだが、この階のメインは向こう、残りのフロアだろう。ここはセオリー通り目的地に向かって一直線、一列となって素振りをしつつ罠を暴きながら進むとしようか」



三人はあまり気にしてはいなかったが。

ここに来て、初めてかもしれない他の探索者たちの痕跡……キャンプの跡や、この先で何かあった時のためにと置いてある雑多な探索道具。


ぱっと見回した限りではいわゆるところの負の痕跡が見当たらないのは幸いと言うべきか。

あるいはダンジョンが喰らい吸収してしまったのか。


しかしその辺りのことは、今考えても栓のないことかと特に言及することもなく。

俺の言葉に対する反論意見もなかったので、そのまま宣言通り俺が先頭に立ちつつ。

いつチャンスがあってもいいようにと、取り出していた『ガルゲ・ボウ』にて素振りしつつ進もうとして。




「ああ、そうだ。ついでに『ルクヴァーロ(気配察知)』のブック、使っておこう」


お馴染みどころかそう言えば使った試しがなかったけれど。

『ルクブーロ(見通良発)』の姉妹品であるブック。

今の今までは視界の悪い通路や死角から不意打ちぎみに襲われることがあっても、みんなの強さと万端の準備で特段問題はなかったが。

たまには使っていないカードやブックを使ってみたいと言う事と、せっかくこれみよがしに残りの二分の一フロアの様子が分からなくなっていて、いかにも何者かが……マイダンジョンではうわべはともかく基本的に遭遇することのなかったボスモンスターが待ち構えているであろう気配がありありだったので、『ルクヴァーロ』のブックを使わない選択肢はなかったわけだけど。




「ん? ジエン、何かスキル使ったのか? とくに何かかわった様子はないけど」

「何だかそわっとする風は吹いたよー」

「ああ。マップ上における敵性を見い出せるブックを使ったんだけどどうやらこれって俺にしか見えない……って、おお?」

「どうかしましたか~、マスター」

「うん。思っていたよりデカイ……手強そうなボスモンスターがいるみたいだ」


いや、確かに今まで見た敵性表示の赤丸の中ではトップクラスに大きかったが。

それより気になったのは、その色合いだろう。


一見すると赤色ではあるのだが、よくよく見ると赤黒い斑色が蠢いているように見えたのだ。

まさに、今まで会ったことのないタイプ。

レイドボスか何かだろうか。


残りの二分の一フロアが隠されている状況で、恐らくその場所に立ち塞がり待ち構えている存在。

モンスターたちとの戦いに重きを置いている探索者たちならば。

ここでしっかり準備を整えて、あえて正面から立ち向かっていくのかもしれないし、それがセオリーではあるんだろうけれど。



「そうしたらどうするんだ? みんな呼んでから進むの?」

「そうだな。その前に、せっかく相手がいるのが分かったんだし、先制攻撃をさせてもらおうかな、と」

「マスターのお心のままに~」

「それって、いろんなきれいなカード見れる? 楽しみー」

「大丈夫かなぁ」



ぽつりと、ユウキがこぼしたように。

ここに一度同じ失敗をしていたとっても似た者同士なチューさんがいたのならばストップをかけられていたのかもしれない。



だけどそんな不安よりも。

俺自身の最終的な行動による結果でなければテイムもできない、といった欲が勝ってしまっていて……。



    (第134話につづく)








次回は、10月20日更新予定です。

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