第132話、魔王、正直ものできらきらな青色スライムさんをしまっちゃう
ユウキ本人がそう言っていたように、深く水の中に潜る経験がなかった、とのことで。
当然、水を飲んだり溺れたりする……俺が『リヴァ(復活蘇生)』を使って意識を飛ばしつつかえってくるような機会だって当然皆無かと思いきや、あくまでもシラユキが中心に行った心肺蘇生措置により目を覚ましたユウキは。
そんな初めての体験かもしれない機会にあったにも関わらず、結構元気そうな様子でばばっと起き上がってみせて。
「……って、はわわぁ!? えとそのっ、自分で勝手に溺れちゃってこんな事を聞くのもあれなんだけど、
わ、オレっ、けっこう水飲んじゃったよね!? それでそのう、助けてくれたのって……」
「ああ、うん。それはもちむぎゅっ」
「シラユキが! 水のスペシャリストであるシラユキがユウキを助けてくれたんだっ。アオイには周囲の警戒を頼みつつ、俺はそんな二人をほんの少しばかりお手伝いしたぞ!」
「……あ~、はい。そうですよ~。私たちメロウの一族は水によるカラダへのダメージの軽減できます。それが自身へのものでなくてもダメージを吸収することで同じ効果が期待できますよ~。でも、すぐにユウキちゃんの状況に気づいたのはマスターですから~」
「お、おぉう。いや、うん。すまん、たとえ水に沈んでHPゼロに近づかんとしても、『リヴァ』の薬(『ブレスネス(祝福息吹)』つき)があるから問題はなかったんだけども、ソレをVS雪山で一度体験した身としては、体験しないでいいならそれに越したことはないと思ってさ。みんなで普通に救助活動をすることにしたのだよ!」
「もごごっ」
「そっ、そうか。ジエンがそう言うなら、そうなんだろうなっ。……うん! さっきはびっくりしちゃったけどもう大丈夫だから、ガンガン先い行こうぜぃ!!」
シラユキもユウキも気を使ってくれて。
俺のいいわけに納得してくれつつ流してくれたようで。
それでも素直に過ぎるアオイがぽろっと台無しなセリフを吐き出してしまわぬように。
タイミングよくスライム形態になってくれていたのをいいことに、そのままちゃっかりふところにしまっちゃって。
一応、再び似たようなことがあってもいいように。
あるいはまた水中ダンジョンにて何かあった時には、『モンスター(魔物魔精霊)』バッグの内なる世界へ避難してもらうことをユウキに伝えつつ。
改めて勢い込んで誤魔化してくれているユウキの気勢に乗るようにそのまま先を目指すことにして……。
※ ※ ※
やはり、初めに考えていた通りに。
少なからず地面、水に浸かっていない砂地があったのは低階層、1階から3階までで。
そこから更に下る度に砂地は失われていき、正しくダンジョンのお約束で水棲の魔物たちの数も増え、歯ごたえが増していく。
モンスターの対処についてはこれ以上テイムはお断りな空気が漂っていたくらいで。
水場に覿面に強いシラユキとアオイ、先程の意気込み、言葉通り……それも勇者補正的なものであるのか、あっさり水中起動行動に慣れていったユウキの活躍により、問題なくとっても良いテンポで攻略を進めることができたと思う。
そんな中、興味深く体験してきたのは。
マイダンジョンでは中々お目にかかれない罠、トラップの類だろう。
一つ、風呂などの排水口を大きくしたような、水ごと探索者を吸い込まんとする落とし穴。
二つ、見た目は分かりづらいが、もやもやゆらゆらしているエリアに入り込むと水の中にて火傷のダメージを負うもの。
三つ、水の中らしくプランクトンめいたモンスター未満な存在を他のモンスターが捕食吸収したと思ったら、俺がレベルが上げるカードの類を、敢えてモンスターにぶつけて経験値うまうまにしてレベリングをするみたいに、捕食吸収したモンスターの階位が上がるもの。
他にもいくつか、様々あって。
正直、これから向かうエンドロールのその先にある『極ダンジョン』のつなぎ程度に思っていたけれど。
大分楽しめたというか、水中ダンジョン対策として出てきている三人だけでなく。
ほとんど何もしていなかった俺も、それなりに成長、レベルアップできたと思う。
確かに降れば降るほど地面はなくなっていったけれど。
10階層を過ぎた頃には。
階段と会談の間の安全地帯をのぞけば。
(どうして水が入ってこないのかは、モンスターが入ってこられないのと同じで、そう言うものなのだと認識している)
当初予想していた通りの。
ほぼほぼ水に浸かり埋まっている、本格的な水中ダンジョンと化していて……。
(第133話につづく)
次回は、10月13日更新予定です。




