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エンドロールには早すぎる~一万回挑める迷宮に棲まう主(まおう)は、マンネリ防止、味変したいと人様のダンジョンに突貫す~  作者: 大野はやと
メイン:エンドロール前

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第131話、ダンジョンマスター、祝福も忘れて蘇生行動にうつる




スキルにせよアイテムにせよ、マイダンジョンにて手に入れることとなって。

運良くそんな中にあった帰還のためのアイテムや、奇跡的に帰還できたことで。

だけどあまり使う機会もないまま倉庫の肥やしと化してしまっていた中にあった、

『ウルガヴの瞳』と言う名の、いわゆるところの水中メガネ。


これから水中のダンジョンに向かうのだからそれは必須アイテムだろうそれをユウキに渡し。

自分でも装備しつつ、早速とばかりに目前の暗い色をたたえて先が見えないことくらいしか分からない水面へと飛び込んでいく。




先陣を切るのはシラユキ。

真白な海獣の姿を取る彼女に続くは、意識すれば水と一体化できるであろう青色スライムなアオイ。

しんがりな俺と、そんな二人に挟まれるようにして、あたふたしているユウキ。




「それじゃあ、いきますよ~」

「ああ、マッピングしつつ向かう道筋は後ろから伝えるからよろしく頼む」

「わーい。水の中のダンジョンだー」

「うぇっ!? も、もう行くの!? ちょ、まっ」



こう言うのは勢いが大事というか。

初めからそんな昏い水の中でも入っていくことに抵抗のないシラユキとアオイが、正しく躊躇いもなく飛び込んでいく。


あまりの展開の早さにユウキが大分戸惑っていたけれど。

そんなユウキを気にかける暇もなくそんな二人とロープで繋がれていることもあって。

二人に引っ張られるようにして、ユウキもろともあっという間に水の中へと消えていく。


うむ、そうか。

繋がっているとはぐれることはないだろうけれど。

泳力に差があると、引っ張られてコントロールが効かなくなるかもしれないのか。

……まあ、いざとなったら『魔物魔精霊モンスター』バッグの内なる世界にあるホームに入ってもらうのもありだろう。

(ユウキも『モンスターバッグ』内へと入れるのは確認済)

なんて軽い気持ちで俺もかなりの勢いで引っ張られていく力に従うがままに水の中へと飛び込んでいく。




はてさて、水の中のダンジョンとはいかなるものか。

なんて思っていると。

低層階であるからなのか、常にフロアに水が満たされていると言う訳でもなかったようで。



シラユキの驚異的な泳ぎによって、急流にのまれてしまったかのような勢いのままに。

どうやらフロアの三分の一ほど水浸しになっている、それ以外、残りの砂地となっている場所へと叩きつけられるようにして飛び出す俺たち。




「なんだ。ずっと水の中なのかと思ってたけど、ちがうんだね~」

「これならけものがた……スライムに戻ってもいいかなあ」

「ふむ。この様子だとフロア全てが浸かるような階層へ到達するまでは、探索者の出入りがあってもおかしくなさそうだな」


今いるこのダンジョンの、その先があるというのもあるだろうが。

ダンジョン探索に慣れていない探索者は、このかろうじて陸地にある階層まで行っては戻るを繰り返しているのかもしれない。



……などと思っていたら。

不意に感じるのは、少し冷たくて死ぬほど柔らかにすぎる感触。

警戒範囲外、内からすり抜けてくるかのような見事なダイレクトアタックに、あっさりやられてしまって攻略失敗……などと言っている場合ではなく。


ダンジョン、その入口に飛び込んでいくその直前、何やら躊躇っていた様子だったユウキのことをもっとよく注視しておくべきだったのだろう。

洞窟の水面から、ダンジョン一階層へ到着するまで、数十秒ほどだったが。


前世も含めて水中に深く潜り込んで泳ぐような機会がなかったのだとしたら。

パニックになって水を飲んでしまって……ということは十分にありえることなのだろう。



「アオイ! 少しばかり周囲の警戒を頼む! シラユキは手伝ってくれ!」

「「了解っ!」」


その時その瞬間の俺は。・

なんだかんだで急なことにテンパっていたのかもしれない。


チューさんに限らず『ジエンド・レギオン』のみんなには。

それこそダンジョンで複数回攻略失敗の憂き目にあったとしてもリカバリーできるだけの備えはしてあったのだけど。


そんなことすらもすっかり忘れて。

どうやら水をのんで意識を失ってしまったらしいユウキの救助活動に入ることにして……。




               ※      ※      ※




「……ぷはぁっ!? ごほっ、ごほっ。うう。何が……ってはっ。お、私は……」

「ユウキちゃん大丈夫ですか~? ごめんなさい~。泳げる泳げない以前に水に触れる機会がなかったんだって、言われなくとも気が付くべきでした~」

「うーん? そっかぁ。おふろとちがってつめたいもんね。びっくりしちゃうよー」

「ううっ。こちらこそごめんなさい。アオイさんの言う通りで海どころかプールで泳いだこともなくて」

「そうだったの? 普通学校に通っていれば水に触れ合う機会はあるって聞いていたけど~」

「ええと、あの。そのう、実を言いますと前の世界では学校にあがるころには病気で病院とか保健室にいることが多かったから……」



後々聞いたところによると。

意外と言うべきなのか、そんな気はしていたと言うべきなのか。

ダンジョンコアであるチューさんだけでなく前の世界においてシラユキやアオイたちも。

あるいは俺たちと同じような学校めいたところに通っていた、とのことで。


主に体育……水泳の授業にて水に触れる機会程度はあるだろうとは思っていたが。

ユウキにはどうやらそれすらなかった、保健室通いできることすら稀で、学校に通うより病院に通う事の方が多かったらしい。

故にこそ、視界悪く、冷たい水に浸かる機会なぞついぞなかったようで。



そんなやりとりを耳にしつつも。

故あって今現在周りを警戒する任にあたっていた。

その際、複数水に棲まうモンスターが現れたが、テイムする心の余裕はまったくもってなくて。


それ故にユウキの方をろくに見られなかったことが。

俺の予想してはいなかった、あまりよろしくない方向に転がっていってしまったようで……。



  (第132話につづく)








次回は、10月5日更新予定です。

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