表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エンドロールには早すぎる~一万回挑める迷宮に棲まう主(まおう)は、マンネリ防止、味変したいと人様のダンジョンに突貫す~  作者: 大野はやと
メイン:エンドロール前

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

122/192

第122話、魔王、真偽はともかく新しきダンジョンへ向かう筋道を見出す





「どうかな、ダリアさん落ち着いた?」


もう隠す気というか、言い張る気もないのかな。

なんてツッコミ待ちなのかもしれない、なんて思いつつも。

それすら天然で気づいていないといった、万が一の可能性を考慮して。

俺はとりあえずのところ、当たり障りのない言葉を口にする。



「うん。なんとかね。ジエンが急にキューピッドの矢で突貫したせいでけっこう混乱してたんだけど、フェアリさんがその矢の効果とか、目的をちゃんと説明してくれたから……っていうか、オレはほとんど最後の方に加入したから知らなかったんだけど、フェアリさんも他のみんなも初めは普通の魔物だったんだね。……あんまり増えちゃうのもどうかと思うけど、今回はまぁ仕方ないのかな。話を聞いた感じ、勇者どころか一緒にいるはずの魔王までいなくなっちゃったみたいで、もうけっこう限界みたいだったから」



一人ぼっちになってしまったダンジョンコアを助けた形となったのはクッジョブだけど、それはそれ。

ちゃんと責任取れるんだろうね、などといった……今まで後輩がいなかったせいなのか、ユウキからもフェアリのような圧を感じて。


やっぱりユウキはツッコミ待っているんだろうな、なんて思いつつも未だ勇気が出なかったので。

曖昧に頷きつつも入ってもよい、とのことなので、早速とばかりにアリオアリダンジョンのコアルームにお邪魔することにして。




そこは、二部屋で構成された16分の1程の広さがある場所だった。

もう一つ扉があるその向こうは寝室だろうか。

元々そうだったのか、ここ最近ダンジョンクリエイト機能で作り直したのか。

その部屋には数人でお茶会をするのに十分であろう丸テーブル、家財一式がしつらえてあった。




「ジエン、あんまりジロジロ見ないの」

「む、すまない。人さまのコアルームを見るのは初めてだったもんで」

「主殿、お待ちしておりました。ささ、こちらへどうぞ」


ひとしきり落ち着いて、話し合って俺のことを待っていてくれていたのか。

正に面接でも始めるかのような雰囲気で、ダリアさんがディーに勧められた席の対面に座っていて。

背筋をぴんと伸ばして、随分と緊張した様子だったので、待たせてしまってごめなさいと何度も頭を下げつつ恐縮していたら、結果的にもう少しばかり落ち着いてくれたようで。




「おかえりなさい、ご主人さま。何か得るものはあった?」

「おお、ばっちりさ」

「そっか。それはよかった。とりあえずダリアさんにはこちらの事情と、半ば強引になってしまったとはいえ、ぼくたち『ジ・エンド・レギオン』へ加わった際の注意事項はしっかり説明しておいたよ。後はダリアさんの事情を直接聞いてもらおうと思って、待っていたんだ」

「おお、そうか。色々ありがとう、フェアリ」

「ふふ。どういたしまして」


我が軍への加入の際の注意事項だなんてのは初耳だったけれど。

何せユウキ以降、新たにメンバーが増えるのはこれが初めてだったので。

そう言うこともあるのだろうと納得して、改めてダリアさんの事情を伺う……

改めてここまでのいきさつを語ることにする。




「正直に言ってしまえば、可能であるならダリアさん、君を仲間にするつもりだったのは確かなんだけど。ダンジョンコアでもテイム……仲間にできるんだなって驚きの方が大きかったかな。恐らく、ダリアさんのマスターである魔王とのつながり、契約が切れてしまっていたからっていうのもあるんだと思う。デリケートな部分だし、話せることだけでいいからダリアさんの今までのこと、教えてもらえるかな」

「……ハイ。ええと、その。前マスターと対となる勇者サマがやってこなくなってから結構な時間が経ってマス。それまでは勝ったり負けたり、勇者サマといい勝負ができていたと思うのデスけど、ある時を境にマスターが帰ってこなくなってしまったのデス。それ以降、毎日のように訪れていた勇者サマの姿も見えなくなりマシタ」


ダリアさんによれば、アリオアリの勇者はアンデッド化の罠によって階段前に屯していた『デザート・ドルチェ』のパーティーに属していた、とのことだが。

自身がアリオアリの魔王に対するものであることを自覚してから、ソロでの探索行動をするようになっていったのだと言う。


後に『デザート・ドルチェ』の皆さんに伺ったところ、そんな勇者とパーティーメンバーには大きな実力差があって。

ソロで活動した方が効率がいい、などとのたまっていたらしい。



……そして、大きなダンジョン改変があったその日。

勇者も魔王も帰ってくること、一切顔を見せること、無くなってしまった。

それでも、その時はまだ魔王とダンジョンコアのつながり、パスは途切れずにいたからこそ、ダリアさんは待ち続けた。


それこそ、運営側のアクマとエンジェルがルール違反を感知して、度々襲ってくるようになっても。

上層からの道が塞ぎ蓋をされ、ダンジョンの存在が忘れかけられそうなほどに時が経っても。


彼女は待ち続けた。

正しく想い人の帰りを希うかのように……。



    (第123話につづく)









次回は、8月3日更新予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ