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エンドロールには早すぎる~一万回挑める迷宮に棲まう主(まおう)は、マンネリ防止、味変したいと人様のダンジョンに突貫す~  作者: 大野はやと
メイン:エンドロール前

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第119話、魔王、邪魔者はさっさと退散して、落ちていくふりしてデバガメへ






「勇者って言ってたけども、俺たち初対面ですよね。それにどちらかといいますとダンジョン側と言いますか、一応『リングレイン』の魔王ダンジョンマスターをやっているジエンと言う者なんだが……」


 今まで体験したことのないビックウェーブに、動揺して口調もブレブレだったけれど。

いきなりのハグからなんとか逃げ出すように距離をとって。

それでもなんとか自己紹介を終えると。

アリオアリダンジョンコアの彼女……ダリアさんのキラキラに澄んでいた橙の大きな瞳が揺らぐのが分かる。



「デモ、コアにとってみれば勇者と魔王は役割が違うだけで、この世界に存在をつなぎ止めてくれる大事なひとでショウ?」

「……そうか。だからコアのみんなは魔王を、勇者を求めるんだね」



だからチューさんも今回の作戦、ダリアさんをテイムできるか試すことと。

チューさんと別行動になることに対してぶすくれていたんだなあと思っていると。


それまでどこか危うい雰囲気のあったけれど。

ついにはそれが崩れたかのように、その瞳がより揺らいで。



溢れるのは、一筋の涙。

それにぎょっとなって慌てて何か弁解しなければとあたふたしているそのタイミングで。

頼もしい仲間たちが、床半面に広がる落とし穴を乗り越えてやってくるのが見えて。




「あーっ、またジエンが女の子泣かしてる!」

「また!? またってなんですの、人聞きの悪い!」

「な、泣いてなんてっ……ずびっ」

「時にはそういう日もあるでしょう。こちらをお使いください」

「ずびびっ。優しいデスね、ありがとうござます」

「全く、ご主人さまは。もうこれ以上増えることはないなんて、甘かったみたいだね。……とにかく、ご主人さまはいったん席を外して欲しいかな。ちょっと、女の子だけでお話を聞かなきゃだから」

「了解です! 少々下の方見てまいります!」



落とし穴の先が気になるのは確かであったし、正直チューさん達の方も気にはなっていたので。

ささっと【ヴァーレスト】の魔法によって浮遊や移動ができる効果が込められしカード、『ヴァレスウィング(風翼天昇)』(もちろん初出どころか実は数枚しか持っていないレアカード)を。

怒られる前にと、さっさと自分にさくっと突き刺しつつ、そのままアイキャンフライな勢いで落とし穴の先へ向かわんとしていると。

 

そんな俺は既にいないものとなっているのか。

早くも打ち解けた様子のかしましさに対する違和感のなさに。

いい加減納得させられながら、下へ下へと降りていって……。






               ※      ※      ※






 そんな、二局同時作戦、『アリオアリ』のダンジョンコア攻略より少しばかり時は遡る。



「……まったく、どうしてわしはあのような気の多い浮気者とともにあることを選んでしまったのかの」

「そんな事言って素直にここでひとり、待機してるじゃない。たぶん、なんだかんだであんたたちお似合いではあるのよ」


 

『アリオアリ』の街の、比較的人通りの少ない出入り口付近。

正しくその存在をアピールするかのように、【エクゼリオ】の魔力を放ち、佇んでいるチューさん。

それは希望と言うか予定通りだからいいのだけど。

そんなチューさんが心配だったのか、ちゃっかりスーイの姿もそこにあった。

 


ここ最近のムーブメントなのか、ユウキも口にしていたけれど。

ようやっと彼女たちとまともにおしゃべりできるようになったばかりの俺をつかまえて、気が多いだの浮気性だのと呟いているチューさんと、それを否定するでもなく、だけど嬉しいことを言ってくれるスーイ。


そんなお喋りをしつつも、名づけて『エンドロールのその先へ』作戦のための役目を、チューさんはしっかりこなされているようだったけれど。

一方のスーイはそんな作戦などに縛られないわ、と言わんばかりに自由気ままなようで。



「ぬう。自分じゃわからんもんじゃが、そう言われると悪い気はせん時点でそういうことなんじゃろうの。いや、それよりスーイ、お主はここにいても良いのか? 主どのの作戦は聞いていたんじゃろう?」

「ええ、もちろんしっかり聞いているわ! だけどわたしがここにいてはいけないとは言われてないもの!

……まぁ、マスターのことだからそんなわたしの考えてることなんてお見通しだと思うけどね」

「そうか。ならば問題はないのかの。そういうスーイも主どののこと、中々に信頼しておるではないか」

「まぁ、わたしのマスターなんだから当然よ! それにわたし、くだんの上位存在ってやつまともに見たことがなかったから、作戦はともかくちゃんと見てみたかったのよね」


そう言ってくれるスーイの行動は確かにお見通しというか、どう立ち回っても作戦の根幹となる決め事だけ守ってもらえれば大丈夫なように準備はしてきたつもりだった。


ここまでくると、そんな作戦の概要も分かってくる頃合だろう。

いい加減焦らすこともないし、そんなわけで此度の作戦について語ることにしようか。


なんて、何だかんだでちゃっかりチューさんたちの方もデバガメしていることを。

気づかない振りして誤魔化して……。



    (第120話につづく)









次回は、7月13日更新予定です。

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