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エンドロールには早すぎる~一万回挑める迷宮に棲まう主(まおう)は、マンネリ防止、味変したいと人様のダンジョンに突貫す~  作者: 大野はやと
メイン:エンドロール前

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第106話、魔王、これといって特徴のない荷物持ちキャラを諦めてない




とはいえ、ダンジョンギミック、素材を破壊するタイプのアイテムは、他の武器防具などと比べても耐久度が低い、壊れやすいものではあるので。

あまり使うことなく、それこそ倉庫の肥やしになっていた『メッキーラ(防腐付加)』のカード(ちゃんと使ってもいいか確認は取りました)を、みんなのツルハシに施しつつ、掘削開始する。




「ぬう。ひとさまのダンジョンを削り取るような真似をわしがすることになるとはのう」

「なればチュート殿。私めが二刀にて働いてみせましょうぞ」

「ディー、チューさん甘やかさないの」



出来ることなふところでぬくぬくしていたい(今が物理的にも現実的にも無理である)チューさんがいたけれど。

宝探しめいたわくわくさもあって、みんなでわいわい、同じ依頼を受けた他の冒険者さんたちとも協力しつつ掘削活動を楽しんで。



「おぉ、何か良さそうなナイフが出てきたよ、やった!」

「さすが。やるじゃないの。……ちょっと失礼。『ディセメ(識別解析)』のカードをぺたり、と」

「ふむ? 『火蒸のナイフ』とな? 根源の名はつかぬが、魔力は込められているようじゃな」

「鞘にあるのは……この辺に咲く花かな。綺麗な模様だね」

「確かに……いや。しかしこれは……っとユウキ殿!?」

「ドーベのお爺さん! これ見つけたんだけど。価値としてはどのくらいかな? 歴史的なもの、あったりする?」

「おお、よく見つけたな。ユウキの嬢ちゃん。どれ、ちょっと見させてもらおうか」



ディーが何かに気づいて口にするよりも早く。

なんだかんだで宝探しを一番楽しんでいたユウキが、発掘調査現場監督のドーベさんに対してオレが見つけたんだよ、とばかりに見せに行くと。


気のいいドーベさんは、孫を見守るような笑顔で作業の手を止め、そのナイフを手にもって重さや硬さを確かめたりしていて。

魔法を使っている感じはなかったけれど。

長年の勘というか、さすがは現場監督。

俺のカードでは分かり得なかったことをさらっと口にしてみせた。




「ああ、これは確かにダンジョン産ではあるが、ラース王遺跡の発掘品としての価値はないな。ここにダンジョンがあった頃……と言ってもそれほど昔ってわけでもないんだが、そんなダンジョンに挑戦していた探索者の持ち物だろう。一旦こちらで預かりはするが、初発掘品として記念に持っていくか?」

「え? いいんですか!?」

「ああ、儂にもそれくらいの権限はあるからな」

「それじゃあせっかくなので、お願いします!」

「いい返事だ。それじゃあ手続きはしておくから、引き続き頼む」

「了解ですっ、もっといいの見つけるぞー!」



元気よく頷き、少年のように再び発掘現場へと戻っていくユウキ。

そんな楽しげな様子に触発されたのか、次に誰が掘り出し見つけ出すのか競争だ、とばかりにフェアリとディーがそれに続く。



「遺跡の発掘品としての価値はない、か。実際のところはどうなのじゃ、主どの?」

「うーん。装備品としても今ユウキが装備しているものと比べたら全然ではあるけど。だけど良いものっていうか、それこそなんだか面白そうな一品、かな」



火蒸カムラのナイフ+1。

ごく稀に火魔法が発動する。

または、ごくごく一部の対象にのみクリティカル率100パーセント。


『ディセメ(識別解析)』のカードを使っても、その対象とやらが誰彼であるのかはわからなかったけれど。

なんだかロマンを感じる表示、表現ではあって。



「銘はあるんじゃろう? 本来の持ち主、関係者が現れたならば返すべきものなんじゃろうか」


ドーベさんに見てもらう前に、ディーが言いかけたことは。

このナイフがかつてダンジョンに挑戦し、失敗してしまって。

ダンジョンに吸収、回収されたアイテムではなかろうか、といった事だったのだろう。



もし、探索者ギルドが機能していたのならば。

持ち主、その関係者に返さんとする依頼があっただろうが。

見た感じその線は薄そうで。


もしかしなくとも、扱いに困るものとして押し付けられるのではないか。

なんて言うのは、楽しそうなユウキ立ちを見ていると無粋にしかならないのでそれ以上は口にはせず。


一張羅(モフモフ毛皮)が汚れるからとぶすくれているチューさんを引っ張りつつ。

ユウキたちの後に続くことにして……。




                    ※



それから。

レアリティはともかくとして、ラース王の遺跡と言う名のダンジョン中1階は。

比較的多くのアイテムが埋まっていたようで。


お金袋や薬草、何らかのモンスターの骨などが出てくる中。

フェアリが発見した金属製のお皿が、遺跡発掘調査としては一番の当たりで。




「がはは。パーティーでひとつ成果を得られただけでも大したものよ。まぁ、もしかしなくとも坊主の魔法がかかった壊れないツルハシの方が、今回の一番の収穫とも言えるがな、こちらとしては」


使ったら返す約束の上で、『メッキーラ』のカードを使わせてもらったので。

確かにドーベさんの言う通りな気もしたけど。

『メッキーラ』のカードも倉庫の肥やしになっていたし。


魔王やダンジョンマスターなどではなく、少しばかり珍しい魔法の使える荷物持ちの坊主だと思われているようだったから。

そう言う意味では結果オーライかな、なんて俺自身思っていて……。



   (第107話につづく)








次回は、4月16日更新予定です。

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