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エンドロールには早すぎる~一万回挑める迷宮に棲まう主(まおう)は、マンネリ防止、味変したいと人様のダンジョンに突貫す~  作者: 大野はやと
メイン:エンドロール前

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第10話、魔王、テンプレ通りに? 勇者を仲間にする



ダンジョンコアのもと、ダンジョンの主となるために。

いつの間にやら召喚、転生、転移してきた魔王達とは違って。

勇者達には、こちらに来るか来ないか聞いてきてくれたらしい。


よくあるゲームの特典的なものから、神様の空間に連れてこられて……など、方法は様々だが。

こっちの世界に連れて来られた理由は、魔王を倒し増え続け世界を壊しかねないダンジョンを破壊する事だそうで。


それが、うまく事が運べばそのための特典スキルやギフトなどの他に、なんでも一つ願いを叶える事ができるのだという。

ちなみにそれは、こっちの世界でも元の世界でもいいらしい。

 

 

(そんな事がまかり通るわけなかろう。……そもそもダンジョンは世界と共生するためのものだというに)


俺にだけ聞こえる形で、チューさんが文句を言っていたが、確かに出来すぎなハナシだなぁ、なんて思う。

まぁそれは俺にも言える事なんだけど、俺としてはダンジョンが楽しめるならどんな代償があっても、なんていうアレな考えがあるからな。

ありえないことだろうが、何か裏があろうが、あんまり関係なかったりするわけだけど。



「それで、いざ異世界へ飛ばされたかと思ったらいわゆる『TS』しちゃってたと。……言っちゃあなんだが、よくある話だよな」

「お気楽に言いやがってぇ。ほんとに大変だったんだからな」


この世界にはないかもしれないおにぎりの包装ビニールに悪戦苦闘しつつ、つい出てしまった呟きに対して泣きそうになりながらもぼやくユウキ。

心なしか顔が赤くなっているのは、性転換してしまった事に対する色々な苦労を思い出していたからなのかもしれない。

 

 

「いや、まぁ……心中お察しします。なんてことは言えないけどさ、結構ユウキみたいな境遇のヤツ、いるんじゃないかと思って」


一体、魔王や勇者の肩書きのついた転生者転移者が何人いるかは分からないが、察するに一人や二人じゃないんだろう。

望んだ形説を疑っていない俺としては、その手のパターンを望む人って結構な数いると思うんだよね。

 


「え? そうなのか?」


まったくもって知らなかったと言う顔をするユウキに、チューさんから受け売りの、この世界に連れて来られた勇者と魔王の事について簡単に説明する。


同じ世界からかどうかは定かではないが、ダンジョンの主として一定数の魔王が、それに対する勇者がこちらの世界に連れて来られていること。

その方法は、様々で望んだ人もいればそうでない人もいるだろうことを。



「ユウキは、ここに来る事望んでたのか?」

「望んでたっていうか……まぁ、そうなるな。一度死んでんだよ、オレ。それが神様のミスだとかで、この世界へ行くのを決めたわけだし……まさか女になってるとは思いもよらなかったけど」


おお、それこそテンプレ……寝落ちして(もちかしたらその際ぽっくりいってるのかもしれないけど)こちらへ来た俺とは大違いである。

しかし、となると元の世界には帰れないのだろうか。

未練はあまりないが、その叶えてくれるらしい願いに元の世界への帰還を願ったらどうなるのかな、なんて思ってしまう。



「ユウキの願いってのは、聞いても?」

「まぁ、うん。最初は生きて帰りたいって思ってたんだけどな、この状況で帰っても困るだろ? だからとりあえずは男に戻る事が先決かな」


それが本音かどうかはともかくとして、予想通りと言えば予想通りな答えである。

 

「で、その願いを叶えるには、ダンジョンコアの破壊が必要ってわけだ」

「あー、まぁ。そうなんだけど」

「……」


びくりとするチューさんを優しく宥めつつ、歯切れ悪く俺を見上げてくるユウキに言ってやる。

 


「なんて言うか申し訳ないが、今やこのダンジョンにダンジョンコアの形したものは存在してないんだ。何せ俺が楽しむためだけに作った俺のダンジョンだしな。それでも願いを叶えたいのなら、そんな俺の言葉を嘘だと断じ、俺を滅ぼすかい?」



そんな事を言いつつダンジョンが維持出来てる時点で嘘みたいなものなのだが。

元よりチューさんの命をくれるつもりなど毛頭ない。

まぁ、まさかダンジョンコアがテンジクネズミになってるなど思いもしないだろう。

何せ本人だって驚いているくらいだ。

例えその事に気づいたとしても、はたしてこんな可愛らしいチューさんを手にかけるなど誰ができよう。

それこそ、俺は全力で守るわけだし、それでも願いたいのなら、俺を倒すしかないのである。



「本来なら、そうなるはずだったんだろうけどな……オレは、魔王が同郷のヤツだなんて知らなかった。勇者らしく倒すべき悪だと教えられていたからな」


聞く所によると、寝落ちしたらこちらにいた俺と違い、いわゆる転生のための神様っぽい存在がいたようだ。

実はその神様が諸悪の根源でした、なんて話、にべもない感じがあまり好きじゃないんだけどなぁ、なんて内心思っていると。

そんな俺の考えを知ってか知らずか、改めて品定めでもするみたいにこちらを見つめてくる。


さっき男だって聞かされたばかりだってのによぅ。

ドキドキするじゃねーか、こら。

そんな事を思ってるとチューさんが何だか冷たいジト目で見あげてくるから、余計に何か狼狽えてしまった俺だったけど。



「少なくとも君は倒すべき悪には見えない。助けてもらった事もあるけど、とりあえず君に剣を向けるつもりはないよ」


そう言われ、俺はほっと胸を撫で下ろす。

孤独にワンマンプレイが好きな俺は、対戦物は苦手なのだ。

それ以前にこんな可愛い娘、攻撃できるわけないだろう?

戦えって言われたら、とりあえず逃げるかも知れない。


テイムしなくちゃなんない仲間モンスターとかなら、またハナシは別なんだけど。

戦わないでくれるのなら、気が変わらないうちにその平和な方向で話を進めてしまうべきだろう。

俺は一つ頷いてそれじゃあと話題を変える。



「なら、どうする? 俺としてはほかの勇者や魔王に会ってみるってのもありだと思うんだけど」

「え? オレ達以外に魔王や勇者がいるってのか?」

「ああ、そう聞いたけど」


……どうやら、勇者と魔王の情報には大きな隔たりがあるらしい。

俺なんかむしろそのために我がダンジョンを後にしたってのに。


その神様ってのは何をしたいんだろう。

俺としてはまぁ、未知のダンジョンを楽しめればそれでいいんだけどさ。

彼女……彼が元の世界に帰りたいと言うなら、他の魔王や勇者に会ってみるのは悪くない事だと思えた。

まぁ、俺やユウキのように敵対せずにすむかどうかは分からないけど。



「このまま帰っても良い方向に転がるとも限らないしな、それもありかもしれないな」


こうして、俺は未知なるダンジョンへの旅仲間として、ユウキを加える事となったのだった。

この世界を変えるかもしれない、一歩を踏み出したなんて事、これっぽっちも気づかないままで……。



    (第11話につづく)








第11話はまた明日更新いたします。

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