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二足歩行

作者: なな

苦しみを感じるたびに、悲しみを感じるたびに強くなってしまった。

苦しみを乗り越えるたびに、悲しみを乗り越えるたびに強くなってしまった。

転んで立ち上がろうとするたびに強くなってしまった。

自力で立って歩んでゆけるほどに、強くなってしまった。

私が立ち上がり二本足で大地を踏みしめる頃、半分と半分で寄りかかりながら歩んでゆくことが叶わなくなってしまった。


二足歩行が上手になったの。


両足は大地をつかんだ。

一層高くなった視界で苦しみと悲しみを直視したら、前頭葉が発達した。


どんどん強くなってしまうの。


私を倒そうと身体を押しても二本足はびくともしなくなった。

やがて足は鋼になった。特有の光を反射させ、確かな重さと硬さをもった。


強くなって得をすることなどひとつもないというのに。


強くなってしまった。

苦しいのも悲しいのも本当はきらいだわ。

それでもなお、直視するほどに、頬は引き締まり、彼方を見据える眼差しは凪いだ水面のように静まり返った。

前頭葉は発達を続け留まることを知らなかった。あらゆることを考えた。

鋼の両足は折れることなく大地をつかみ続けた。

歩き続けるほどに、老いるほどに完成されてゆく。身体の歪みが、顔の歪みが、正しく整ってゆく。


たぶん私は人間になったの。

人間になったのかもしれない…

互いに寄りかかりながら歩んでゆくほうが幸せだというのに…

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