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「見ている神がいないなら、この物語は『  』です」  作者: misaka
【奇跡】第一幕……「大規模討伐任務」

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幕間 母と末の妹たち

 某日某所。魔力至上主義者の総本山である、とあるビルの一室。今日もアマネ、ノウミの天人の姉弟は楽しそうに三宅忠正みやけただまさの報告を聞いていた。


「――結果、コウ様が拘留処分、主だって彼に協力した3名が逮捕・起訴される予定です」

「そうですか。それで、どうですか? 末の妹……シアさんと少年の動向は」


 厳かな声で尋ねるのは、アマネ。垂れた目元に太陽を宿したような琥珀色の瞳をたたえ、朱に塗られた唇がどこか艶っぽく動く。身にまとう衣装は小袖と白衣はくえ行燈袴あんどんばかま。俗に巫女装束と呼ばれるものだった。

 人間たちが天界や神界と呼ぶ世界に天人達が居た頃。最後に生まれたのがシアと、シアの幼馴染にあたるもう1人の女神。もっとも古い神の1人である()()()()アマネにとって、他の神々は兄弟姉妹も当然に思っていた。


「何事もつつがなく。無事、ご自身たちの力でコウ様を撃退したようです」

「かっ! やっぱそうじゃなくっちゃなぁ!」


 壁に身を預け、筋肉が良く付いた腕を組みながら報告を聞いていたノオミが嬉しそうに笑う。細められた瞳は夜、嵐に揺れる荒波のように暗く青い。


「引き続き、シアさんと少年の居る第三校を見張っていてください」

「了解しました。……近々、第三校へは他国からの留学生が来るそうです。また、大規模討伐任務の要請がなされると聞いております。シア様たちを保護しますか?」


 自身が崇めるアマネが期待を寄せる天人・シアと、シアが選んだ少年・神代優を危険にさらすか否か。尋ねる三宅に、アマネは首を振る。


「いいえ。2人ならばきっと、問題なく乗り越えるでしょう」

「今回の任務には、かの女神様が参加される予定です。しかも少年、神代優と接触している様子。万が一、もあり得るかと」


 不安要素を口にした三宅に、ノオミが宙を見上げる。


「ああ、モノか。大丈夫だろ。あいつはおもちゃを大切にする方の神だ」

「それに、天人の意思を超えてこそ、ですからね」


 談笑する姉弟の言葉の意味が分からず、さりとて天人に真意を聞くなどもってのほか。


「では、このままで?」

「ええ。巻き込んでしまってすみませんが、このまま最後のその時まで、どうかよろしくお願いします。三宅様」

「……はい」


 最後、何かをこらえる間を置いて頭を下げた三宅が退室し、天人の姉弟だけが残される。


「シアさん。やはり信仰が薄れた現代に近い世代で、純粋な想いから生まれた子たちの力は力強いですね」

「俺たちにあるのは信仰と年季だけだからなぁ。ま、それでも強いがな! 少なくとも今の段階じゃぁ、負けないだろう」


 手元のタブレット端末を操作しながら、互いに雑談を交わす。と、アマネの手元にとある天人からの報告が届く。


「噂をすれば影が差す、とはこのことですね」

「ってこたぁ、モノからか。なんて送られて来たんだ?」


 ノオミの問いかけに、少し頬を緩めるアマネがメッセージ画面を見せる。そこには、


「『見つけたかも』『調査を続けるね』か。これはもしかすると、だな」

「ええ、ようやく母上が見つかるかもしれませんね。だとすると、シアさん達にはぜひ頑張って頂かなければ」


 世界を創ったと言われる原初の2柱。十数年前に時代に合わせて消滅して以降、生まれていなかった【奇跡】【始まり】を象徴する女神が見つかったかもしれない。そんな報告だった。


「だとすると、俺たちがラスボスを気取っていられるのも時間の問題かもなぁ」

「ふふっ。ええ、未来を見通す私でも、これは予想外です。はてさて、人類の命運を握る物語はどう転ぶのでしょうね?」


 心底可笑しそうに笑う姉を、ノオミもまた嬉しそうに見つめるのだった。

※今日から第5章に当たる【奇跡】の章を順次、更新していこうと思います。詳しい更新予定は随時、活動報告にてお伝えする予定です。今後とも優とシアが作り上げていく物語を楽しんで頂ければ幸いです。

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