6、フィッシュバーグ
港街が見えてきた。
「クロム様、もう少しでフィッシュバーグですよ。」
もう日が傾いている。
夜からずっと歩いているので足が棒のようになっていた。
道中、モンスター(主にレッドウルフ)を倒しながら、光る所を片っ端から採集していたのでこんな時間になったのだ。
セバスは傍らで見てるだけだったので俺一人でずっと戦い、採集をしていた。
そのお陰でレベルも18まで上がった。
初心者冒険者のレベルは越えたらしい。
そして、フィッシュバーグに着いた。
「やっと着いた~!ここがフィッシュバーグか!活気に溢れてるな!!」
「そうですね。とりあえずどうします?冒険者ギルドで登録してきます?」
「そうだな...。ってか手持ちの金もあんまり持ってきてないし。レッドウルフの素材を売って金にしないと。」
セバスはいくらか持ってると思うけどここでセバスに甘えては行けないと思う。
俺はもう一人立ちしているんだから。
俺がセバスを養うくらいじゃないとな...。
「クロム様は立派ですね。それでは、冒険者ギルドに向かいましょう。」
セバスから誉められるとは思ってなかったから少し照れた。
そして、セバスの後ろを付いていくと一際大きな建物の前に着いた。
「クロム様ここが冒険者ギルドになります。」
「おぉ~!でかいな!ってかその前にセバス!!俺の事を様付けしないでくれ!
これから冒険者になるんだし、セバスは先輩冒険者になるんだから...。」
「....わかりました。これからはクロムと呼ばしてもらいます。」
「後、敬語も!!俺には敬語使うな!」
「...わ、わかり...」
俺が睨むと、
「わ、わかった。これでいいか?」
「ぎこちないけどしょうがないか。うん。それで頼む!この方が冒険者っぽいじゃん!!」
屈託の無いクロムの笑顔にセバスは思った。
この子は生まれ持っての冒険者なのだと。
クロムが何を成すのか見てみたいと心が踊ったセバスだった。
「それではクロム。行くぞ。」
「おう!」
ギルドの扉を開けるとそこには冒険者がいっぱい居た。
屈強な戦士風冒険者、魔法使い風な冒険者に柄の悪い冒険者と様々な冒険者が酒盛りをして賑わっていた。
ギルドには酒場が併設されてあり、今日の成果だったり、反省だったりしているのだろう。
俺は冒険者達を見て興奮を押さえられなかった。
今日から俺も冒険者!!
夢にまで見てた冒険者になれるのだから。
しかし、冒険者達は俺とセバスを見てニヤニヤしている。
なんか気持ち悪いな...。
「クロム!こっちだ。」
「あぁ。」
セバスの呼び掛けに付いていくと受付嬢の元に着いた。
「お嬢様。冒険者登録をしたいのだが、こちらで合っているかな?」
「は、はい。」
セバスの呼び掛けに受付嬢はポーッと頬を赤らめている。
60近間のじいさんだぞ!ってツッコミたいが止めておこう。恋愛は自由なり。
「2人で冒険者登録をしたいのだが、私は元冒険者でこの子は初めて登録するのだが...。」
「それでは以前の冒険者カードはございますか?そちらの方はこの用紙に名前と職を書いてください。」
俺は受け取った用紙に、名前と年齢と使う武器と職業を書いた。
そしてセバスは前の冒険者カードを渡した。
「はい。えーっと...お名前はクロムでいいのですか?」
「え?」
「いや、格好が貴族の方見たいだったので名字もあるのかなと...」
「そこは色々あって...」
そういえば俺もセバスもそのままフリージア家を出たから、冒険者っぽくない格好をしてたの忘れてた...
だから、他の冒険者達もなんかニヤニヤしてこっちを見てたのか...
後で武具屋に行って一式装備を変えないと...
「そうでしたか...それで年齢は16歳。扱う武器は剣。そして職業は「一ツ星」?
...なんですかこの職業?」
「俺に言われても、選定の義で言われたんですよ。」
「そうなんですか...。後はこの魔力玉に手をかざしてください。」
俺は受付嬢に言われるがままに魔力玉に手を置く。すると魔力玉の中から一枚のカードが出てきた。
「こちら冒険者カードになります。えーっとランクは....えっ!?」
「何かありました...?」
「クロムさん。冒険者登録する前モンスターどれくらい倒しました?」
「うーん。どれ位だろう?レッドウルフ150匹位かな?」
「150!?
なるほど納得しました...。
クロムさんのランクはDからです。
普通はFランクからスタートなんですよ!
こんなのは受付嬢やって以来初めてです!」
受付嬢の興奮がこっちまで伝わってくる...
目の血走り方が怖いよ...。
せっかくの美人が台無しですよ...。
「コホン。取り乱してすいません。そして、セバスさんの冒険者カードを拝見させて....
.....
.........
Sランクゥゥゥ!!!?」
受付嬢の声がギルド全体に響き渡る!!
それに伴って冒険者達もガヤガヤしだした。
「お嬢さん。落ち着いてください...。
Sランクなんて言っても20年前の話ですから...。」
「なんだなんだ...。大声を出して...。」
階段から大きな男が降りてきた。
「ギルドマスター!!すいません。取り乱しました。」
「冷静なお前が取り乱すなんてどうしたん....。」
ギルドマスターはセバスを見ると固まってしまった。
「し、師匠!!師匠じゃないですか!?どうしてここに!?」
ギルドマスターの師匠?
セバス...アンタ本当何者よ?
謎が深まるクロムだった。