2、選定の儀。そして追放会議
そして、俺たちの番が来た。
「ノエル・アーバン・コールドループ。前へ。」
「はい!」
呼ばれたノエルは颯爽と神父のまえへ歩いて行った。
「あれが、コールドループ家の令嬢か。
めちゃくちゃ美人じゃねぇか?」
「バカ!もう婚約者がいるんだよ。ほらあそこに...」
バカそうな貴族がこっちを睨むように見てる。
見てもなにも変わらないのに...可哀想な奴等だ...
神父が何かを呟くとノエルは光輝いた。
「こ、これは!な、なんと!」
神父が驚く!
「聖騎士じゃ!」
オォー!!と周りが大きな歓声があがった。
当の本人は...キョトンとしてる...
「聖騎士はこの地方で初めて誕生したぞい!」
周りはより一層ボルテージが上がっていく。
さすがノエルだな。
ただ本人が沈んでいるように見える...
どうしたんだろう...?
さすがに心配だな。
ノエルはトボトボこっちに帰ってきた。
「ノエル、大丈夫か?」
「あ、う..うん...」
これは全然ダメだな...
俺は静かにノエルの頭を撫でた...
「次。シロム・フォン・フリージア。前に。」
「行ってくるね。」
「おう!」
緊張した面持ちでシロは神父の前に着いた。
神父がまた呟くとシロの身体はノエルの時よりも光輝いた。
「な、なんと。100年に一人と言われる賢者が生まれるとは...。」
オォー!賢者様の誕生だ!
もう辺りはお祭り騒ぎになっている!
「ぼ、僕が賢者...」
シロなら当然ちゃ、当然か...
俺と違って博識だし、兄貴として本当に誇らしい限りである。
戻ってきたシロは、信じられないといった表情を浮かべていた。
「良かったなシロ!」
「うん!ありがとう!クロム兄さん!」
次は俺の番か...
「最後。クロム・フォン・フリージア。前に。」
よりによって俺最後かよ...
みんな期待の眼差しで俺を見ている...
こっち見んなよ...
緊張しちゃうじゃねえかよ...
俺は少し緊張して神父の前についた。
「汝、光の使徒として神なる職を授けたまえ...」
神父がそう言うと、
俺の身体は誰も見えなくなるほど今日一番に発光した。
なんかヤバイ気がする...
勇者とか本当に勘弁してくれよ...
頼む...外れスキルで...
白光が収まると神父が固まっていた。
「あ、あの...俺の職業って...?」
「あ、あぁ...お主の職業は....」
「職業は?」
「一ツ星」じゃ!」
「は?」
何が「一ツ星」じゃ!だよ...
わかんねぇっての!?
周囲はザワザワしている。
「あの神父様、これは一体どういう職なんですか?」
「知らん!」
「おいおいおい!
なに無責任な事言っちゃってくれてるの?
これで一生決まっちゃうんでしょ!?」
「おい!貴様、神父様に無礼な口を慎め!」
「本当にわからないんじゃよ...
今までにも前例がないし、どこにも記載されてないんじゃ。
相当レアな職であるとは思うんじゃが...
唯一そなたの祖父シンバ・フォン・フリージアが似たようなスキルを手にしてたような...
何しろ昔すぎてな...」
「そうですか...」
相当珍しい職ではあるらしいが不明...
じいちゃんも放浪の旅にでてから音沙汰がなく行方不明...
俺、この職でちゃんと追放されるかな...
不安だ...
俺はトボトボと2人が待つ場所まで戻った...
三者三様な反応に少し気まずい。
そこに神父が言う。
「ノエル・アーバン・コールドループ。
シロム・フォン・フリージア。
両者2名は英雄学校に近々行ってもらう。これは英雄職を授かった者の国命である。
ご家族には近々通達が行くのでそのつもりでいるのだ。
今年の選定の儀はこれにて閉幕する。」
こうして選定の儀は終わった。
ノエルとシロムはずっとうつ向いている。
「2人供どうしたんだよ!英雄職だぞ!
凄いことじゃないか!俺は誇らしいよ!」
「クロム兄さん。それは本気で言ってるの?」
「えっ?だって名誉な事じゃないか。」
「僕は兄さんと離れたくないから悲しいんだ。」
「シロ...」
「私だってそうよ...クロと離れたくない...
離れたくないよぉぉ!!」
2人供、泣き出してしまった...
こんなにも俺の事を想ってくれてたんだな...
俺は嬉しくなって、2人を思いっきり抱き締めた。
「俺だって心は一緒だ!
2人と離れたく無い!俺はシロもノエルも愛している。」
「何で婚約者の私がシロの後なのよ...グス。
クロの....バカ。」
「あっ。ごめん。」
「僕は嬉しいよ。ノエルより前に呼ばれて...」
「もう!シロのバカ!」
俺たちは落ち着くまで抱き合った。
「よし、そろそろ帰るか。」
そう言った矢先。
「失礼します。クロム様、シロム様。そしてノエル様。お迎えに上がりました。」
現れたのは執事のセバスだった。
うちのじいちゃんの旧友で今はフリージア家の執事をしている。
「セバス、お疲れ様。親父達は?」
「旦那様と奥さまは選定の儀終わった直後に急いで帰られました。」
「そっか...なんか言ってたか?」
「ここでは言えないので、お三方馬車の方でお願いします。」
俺達は馬車に乗り込みセバスの話を聞いた。
「非常に言いにくい話なんですが、
跡継ぎをシロム様にすると...」
「はぁ?何で僕が...」
「シロ!落ち着け!セバスの話が聞きたい。」
興奮するシロムを席に座らせて、セバスに続きを話させた。
「シロム様が、英雄職の賢者の職に就かれた事によって箔が付くと考えたのでしょう...
シロム様が功績をあげると、
より爵位が上がると目論んでいるみたいです。」
「なるほどな。それで、俺はどうなる?
って大体察しは付くけどな。
暗殺か、除名追放ってとこか。」
「なっ!そんなことって...」
シロムは絶望的な顔をしている。
「私が言ってどうにかしてもらう!」
「ダメだ!
こんなくだらないフリージア家の問題に大事なノエルは巻き込めない!」
「じゃぁ、どうすんのよ!」
「聞いてくれ。俺は暗殺されないように上手く追放される事にする。
確か英雄学校は3年制だったはずだ。
ノエルとシロムが英雄学校に行っている間に、
俺は冒険者になってSランクになる。
そうすれば国から家名がもらえるはずだ。」
「そうか。そうすれば同じフリージア家でも全く別のフリージア家になるんだね。」
「あぁ。そこにシロを領主に置く。そうすれば一緒に居れる。どうだ?」
「僕は良いんだけど、何で僕が領主に?」
「いやなに....領主ってめんどくさそうじゃん。
シロってそう言う書類とかの作業得意そうだからさ。適材適所って奴だよ。」
「そっか...ってならないよ!全く兄さんは。」
「じゃぁ私は新しいフリージア家に嫁ぐってこと?」
「嫌か?」
「全然!むしろ良いわよ!気を使わなくていいし~!」
「あはは!そういうノエルが好きだよ。」
「もう...クロのバカ...恥ずかしいって....」
俺たちの方向性は決まった。
「それでセバスはどうするんだ?」
「私?私はもちろんクロム坊っちゃんに付いていきますよ。」
「もちろんって!まるでこうなるか分かってた口振りだな。」
「いやいや、シンバの奴に頼まれてたのですよ。おっと失礼。言葉が汚くて...シンバ様と呼ぶのは今になっても抵抗があるので...」
「旧友ならいいじゃないか。俺の前では気にしなくて良い。」
「ありがとうございます。」
「それで?」
「シンバがクロム様は俺に似てるから冒険者になると思うそうしたらお前が支えてくれって頼まれてたんです。」
「じいちゃんは何でもお見通しだな...」
「だから旅に同伴させていただきたいのです。シロム様は、英雄学校で守られてるので安心ですが、クロム様はこのままだと一人旅になるし、私自身がもうお二人とも孫のように思っています故に、お願いします。」
「僕からもお願いするよ!兄さんは1人だとなにするか分からないからさ。」
「シロ...」
「セバスさん。私からもお願いします。本人が嫌がっても無理矢理でも着いていってください。
クロに変な虫が付かないように見張って下さいね。」
「ノエル...
セバス。俺からもお願いする。旅に付いてきてくれ。」
「はい。どこまでもお供します。それでなんですが、もう一人連れていって良いですか?」
「ん?それは誰だ?」
「居るんだろう?セツナ...」
「はい。お父様。」
影から急に現れたのはメイドのセツナだった。
「うおぉ!ビックリした!全然気付かなかった...」
「連れていきたいのは私の娘セツナです。」
セツナか...いつもシロムにベッタリくっついているメイドだよな...
着替えとかもいつも手伝ってくれるけど、あれはシロムが居たからだろう...
俺一人の時は絶対来なかったし...
多分だけどセツナはシロムの事が好きなんじゃないかなと思う。
ここは空気を読もう。うん...それがいい...
「悪いが断る!」
「なっ何故ですか!?」
セバスは驚く。
「セツナにはシロムとノエルの護衛をしてもらいたいと思ってるからだ。英雄学校でもメイドくらい連れて行っても大丈夫だろう?
セツナはどうだ?」
「私はシロム様と共に居たいと思ってます。だからクロム様の提案を受け入れたいと思ってます。」
「セツナ...ありがとう...」
「そ、そんな...」
俺はセバスの肩を叩く...
セバスよ、子離れしないとだぞ...
肩をガックリと落とすセバスであった...
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