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1、嘆きのクロム




満天な星が輝く夜空が広がるある日、


フリージア男爵領にてこの物語の主人公、

クロム・フォン・フリージアは嘆いていた。




あぁ..嫌だ....

こんな家早く出ていきたい....

何で俺が跡継ぎなんだ...

この何にもない土地で一生終えるとか考えたくもない...

選定の儀でハズレの職とか出ないかな...

そうすればこんな家からおさらばして、

夢だった冒険者になれるのに...

今度、神様にでも祈ってみるかな...



俺はいつもそんな事を考えていた。



「クロム兄さん。また考え事?」


「あぁ...シロか...何、対したこと考えてる訳じゃないよ。」


こいつは双子の弟、

シロム・フォン・フリージア。

面倒見も頭も良く真面目で何故か、

いつも俺に着いてくる可愛い弟だ。


「明日は選定の儀だから、早く寝ないとダメだよ。」


「あぁ..めんどくさいなぁ...シロが代わりに行ってくれないか?」


「兄さん!僕たちは双子で、一緒に選定の儀を受けるのに代われる訳ないじゃないか!」


「冗談だよ。あんまり真に受けるなって。」


「もう!僕は寝るからね!明日はノエルも迎えに行かなきゃなんだから!」


「ノエル?えぇ...めんどくさい...シロが迎え行って...」


「だ~か~ら!一緒に行くんだって!3人で選定の儀受けようって話してたでしょ!」


「わかったわかった。そんなに怒ってばっかり居ると親父みたいに禿げるぞ。」


「僕は禿げないからね!おやすみ!!」


「あぁ、おやすみ。」


ついつい弟が可愛すぎてからかいたくなってしまう...俺も寝るか...

まぶたを閉じるとすぐに眠気が襲ってきた...




チュンチュン...


「クロム兄さん!起きて!」


「なんだよ...もう少し寝かせてくれよ。」


「何いってんのさ!今日は選定の儀でしょ!皆準備終わって後はクロム兄さんだけだよ!」


「えぇ...まだ眠いよぉ...」


「もう...兄さんは本当に朝が弱いんだから...」


そう言いつつメイドと共に俺の着替えやら何やら手伝ってくれる。

出来た弟を持てて、俺は本当に幸せ者である。


準備ができて俺は眠い目を擦りながらシロムと一階のロビーに来た。


「遅いぞ!!クロム!

今日はフリージア家にとって大事な日なんだぞ!!もっとシャキッとせんか!」


大声で怒鳴ってるのは、父モーガン・フォン・フリージアである。

親父は本当に朝からうるせーな...


「すいません!クロム兄さんを起こすの遅くなって...」


シロムが俺を庇ってくれた。

本当に何から何まで出来すぎだよ。

俺はシロムの頭を撫でた。

てへへって照れるシロムが可愛い...


「また、シロムったらクロムを庇って...

クロムも反省しなきゃダメよ!お兄ちゃんなんだから!」


こう言うのは母のマリン・フォン・フリージアだ。

この人も朝から沢山の香水つけて香りがキツイ。そして両手に指輪をはめて首からじゃらじゃらとネックレスをつけて本当に恥ずかしい...


何で両親はこんなの何だろって思うとキリがないので気持ちを切り替えてシロムを撫でる事に集中した。


「兄さん...恥ずかしいよ...」


シロムを沢山堪能した所で、


「ほら、行くぞ!!」

と父モーガンに急かされ馬車に乗った。




ガタガタッ!


この揺れ苦手だな...

何で馬車ってこんなに揺れるんだろう...

あぁ...だりぃ...




キィィィ!




急に馬車が止まって扉が開いた。


「おじさま、おばさま。一緒に連れていってくださってありがとうございます。」


乗ってきたのは幼馴染みのノエル・アーバン・コールドループ伯爵令嬢だ。


「全然良いんだよ。ノエルちゃん、揺れは少しひどいかも知れないけど我慢しておくれ。」


「良いんですよ。クロとシロと一緒に行きたかったんですから!私の方こそ我が儘言ってごめんなさい。」


「何水くさいこと言ってるのよ。ノエルちゃんはクロムの婚約者でもう私たちの家族なんだから気を使わなくていいのよ。」


勝手な事をベラベラと...

それは、親父達が勝手に決めた事だろう...

まぁノエルはめちゃくちゃ可愛いので悪い気はしないのだが...


「もう...おばさまったら...」


ノエルは顔を真っ赤にしている。

あぁ...やだやだ。

親父達の目的は、

俺たちの幸せとかよりも世間体しか気にしていない。

だから、伯爵家との縁談は男爵家にとって爵位をあげるチャンスになる。

爵位を上げれば、

国からの支援金が大幅に増えるからそれを狙っての事だろう...


浅はかすぎる...

だから俺はこの家が嫌いだ...


本当に教会に着いたら、祈ろう。

ハズレ職をくださいと...

出来れば、冒険者っぽいレンジャーとかが良いな...

でもそうなると、ノエルとの婚約も破棄かもな...

それも仕方ないのかな...


「ク~ロ~!

婚約者が来たのに何でそんなに上の空なのよ!」


「あぁ...悪い考え事をしててさ。」


「クロム兄さん、最近ずっとこんな調子でさ...」


「考え事って何!?

まさか他の女の事考えてるんじゃないんでしょうね?」


「そんなくだらない事考える訳ないだろ...

目の前に絶世の美女がいるのに...」


「え...やめてよ...絶世の美女なんて

...恥ずかしい...って何でずっとシロの頭を撫でてるのよ!!」


「あっ。悪い。つい癖でな...」


「どんな癖よ!もう...クロのバカ~!!」


「ノエル。こっちにおいで。」


俺はノエルを膝の上に乗せた。

そして、ノエルの頭を撫でる。


「今日も可愛いよ。

教会に着くまでこうしてよっか。」


「...クロの...バカ...。」


「見せつけおって!羨ましいぞい!」


「ア~ナ~タ~!」


「ヒィッ!ごめんなさい!」


「「アハハハ!」」


俺たちは馬車で移動中和やかなに過ごし、教会に着いた。





同い年の子達がぞろぞろと協会の中に入っていく。


この世界では選定の儀と言われる物があるのだが、

ここで職業を決められ一生が決まると言われている。

戦士、剣士、魔術師、僧侶から始まり、

上級だと剣豪、聖女、賢者、龍騎士、勇者など職業は何百種類あると言う。


とりあえず上級の職業じゃなければ何でも言い...

多分、こんな風に思いながら、

選定の儀を受けるヤツなんて世界探してもそんなに居ないだろう...


次々と選定の儀に呼ばれて回りは歓喜と絶望の声が響き渡っていた。


そして、俺たちの番が来た。

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