普段無表情だけど一線を超えると表情が崩れるユリス様
前回のあらすじぃぃいい!
ユリス様誕生しましたぁああ!
((((おめでとうございます!))))
旦那様顔面崩壊でぇす!
((((……))))
奥様ご休憩はいりまぁあす!!
((((お疲れ様でしたぁぁぁあああ!))))
「何事もなく5年が経ったが、なんとも拍子抜けしたな。何か問題が起こるのではないかと思っていたが…無い方が良いか。それにしても…今世の私は中々に可愛いのでは?」
鏡の前に立ち微動作すらせずジッと自分の顔を見ているユリス。それをたまたまサリアは見つけてしまった。
(日に照らされ白く透き通る髪、それなりに整った顔。目が少し鋭いのはあれだがまるで人形だな…ん?母さまか)
エリスは人影に気付いたのか顔だけを右に向けた。顔だけを。
「エリスちゃ…っひ!?じゃ、邪魔しちゃってごめんなさいね」
(何故走り去る母さま。あれか?薄暗いところで見る人形のような物か?まぁいい、父の書斎にでも行くか。)
産まれてから5年赤子だからと何もしていなかった訳ではない、少しでも情報を集めていた。
今いる所はモブラノ村で我が家はフィルムンド家、この村の長の家系らしい。本来氏名があるのは貴族や王家に名乗りを認められるか名付けられた者だけらしいが…過去の文献が見当たらないので分からない。
だがこの家には何かあるはずだ。家の中を駆けずり回るのは大変苦労したが…間取りに違和感が残る。父の書斎には書物が多くあるのでよく入っていたが、本棚側の壁に僅かではあるが空間がある。
(テンプレではあるまいし、流石に机の上のどれかが起動媒体だとか装飾品がとかでは無いだろう。さて今日はどれを読もうか。御伽噺か?事件簿も面白そうだ)
この世界には魔法はある様だが、ステータスを確認できる物は一部の場所にしか無い様だ。よくある冒険者ギルドや一部教会、王都の学院にしか無いと父が教えてくれた。
魔法が使えるようになりたいと言えば母が教えてくれた。
私の両親は疑いたくは無いが一介の村人には見えなかった。ああすまない語弊があった、全ての村人が村人らしく無いと言える。
(村を出た事が無いから何とも言えないが、村人と言えるレベルでは無いぞあの力は。剣を振って剣戟が飛ぶものなのか?書物にあった初期の火魔法でさえ人の大きさを越える熊でさえ丸焼きにしていたぞ。これが普通なのか?)
熊とはマルカジリービッグベアと言い通常の村であれば壊滅している程の力があるが、それを知る由もないユリスは熊の名称を聞き大爆笑していた。
この村は異常な程強い者が多かった。が、何れ分かるだろうと探る事はしなかった。
(これまでの情報を整理してみるか。今いる国が大国ガラワーナ、周辺国には同盟国であるニールヴァレンティ諸国、商業連合国家シャーセイ。)
ガラワーナ大国は王権国家であるが貴族優位の政国でもある。
ニールヴァレンティ諸国、通称ニールはおよそ10年前までは戦争をしていた、だがある事件によってガラワーナとニールは手を組む事になる。それ以来争う事なく同盟国として協力している。
商業連合国家シャーセイ、文字通り商業を中心とした国家である為周辺国には中立を保ち続けている。
(問題は他の国らか。エンロイス聖教国、リオン獣王国、ヒュマノフ帝国、そして…魔大国。)
エンロイス聖教国、数多の女神全てを主神として信仰している。が、余り良い噂を聞かないと母は言っていた。年に数回孤児院から子供を引き取っているらしいがその後姿を見た者がいないとか、奴隷取引をしているだとか。
尚、聖女様は本当に居るようだ。
リオン獣王国、ケモミミである。フワッフワである。但し肉食である。草食なのは極一部でほぼ肉食である。
見た目は3つあり、まんま獣の容姿、先祖返りや神獣と呼ばれ敬われるがほぼいない。
獣人、形は人だが容姿はほぼ獣、ほとんどの住民がコレ。
ほとんど人の姿で一部分だけ獣、人間に人気。
ヒュマノフ帝国、ガラワーナ大国と政権は同じだが貴族の一般市民に対する扱いが悪いそうだ。人族至上主義らしく今尚獣王国と戦争しているらしい。
魔大国、魔物が治める国らしいがこの国の魔物達は話す事が出来るようで一部の魔物は人よりも優しい性格だと父が言っていた。魔王がいるらしいが勇者が度々来るので面倒らしい。
(ふむ…我ながら突っ込みたいところが多いな、何だシャーセイとはあれか?いらっしゃいませのあれか?エンロイスに至ってはあれなの?噂も相まってそうとしか思えん。どうか噂が真実でない事を祈る。)
コンコンコン「お嬢様、お食事の時間です。食堂に参りましょう。」
「分かりました。今行きます。」
もう正午かと一旦思考を中断し本を元の棚に戻し、父の書斎を後にし食堂へと歩く。
ちなみに呼びに来たのはメイドとかではないらしいが、生まれたときから一緒に居るミラク・シュライゲン。女性だ、綺麗な女性だ。歳はまだ19だと言っていた女性だ…だが恐ろしく強い、ミラクの父親が彼女にデコピンで気絶させられていた。
ん?吹き飛んだりするとでもおもったか?そんな威力だったら脳漿ぶち撒けて墓の下だろうさ。
「どうかしましたか?お嬢様。」
「いや、何でも無いわ。いえ、何故貴方達は私をお嬢様と呼ぶのかと思っただけよ。」
「それは…いえ、お嬢様食堂に着きますので。それに…」
「お嬢様自身で答えを見つけるべきです。常に考えるからこそ人は人たり得るんですよ。」
「…そうね。」
流石に「ミラクは何故そんなにゴリラなの?」だなんて聞けるわけも無く、焦ってお嬢様呼びに関して聞いただけなのだが?より深い謎で返ってきたのは何故だ。そんな私の思考を知らんと言わんが如く食堂の扉を開き、中に入るよう促すミラク。
「来たかユリス、書斎に籠もっていた様だが気になる物でもあったかい?」
「はい、面白くて時間を忘れてしまいました。」
「それじゃあユリスも来たことですし、ご飯にしましょうか。」
「……。」
「シム、ちょっとシム起きなさい。」
「んー、…後五年……。」
「ミラクさん、水桶用意してくださる?」
「こちらに御座います。」
「ありがとう流石ミラクさん、早い仕事ね。」
お分かりだろうか。水桶に顔を押し付けられている少年と頭を押さえつけている少女が居る事を。
少年は11歳シムルグラス・フィルムンド、少女が12歳イタルナ・フィルムンドである。双子では無い。
「イタ姉様、それ以上はシム兄様が元気になってしまいますよ?」
(まだ11ですから分かりませんが。)
「あら、そうですわね」
「ぶはぁっ…はぁ…姉さん、死にかけ…たんですが?」
「ごめんなさいね、加減が分からなくて。それでユリス、何故元気になるんですの?」
「それでしたら人が死に近づくと生存本能が刺激され息子が元気に成長すると父様の書斎の本に書いてありました。」
「⁉…貴方?」
「へぁ⁉いや、確かにあるが資料としてだな⁉」
あるのか、見た事は無いから棚の上段に有るのだろう。5歳児である私では下段付近しか手が届かんのでな。当てずっぽうだったのだが、私は知らん。
「奥様、お食事にしましょう。旦那様の件は後でお願いします。」
「そうね、そうしましょう。」
何時の間にか水桶も水滴も無くなり料理が並べられていた。これがミラククオリティである。
よくあるチート主人公何ていないよ?
だって周りチートだらけだもの。ね?