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レオニアの町

 僕たちは転移魔導装置でレオニアの町にある帝国軍拠点にワープ後、魔導車に乗り換え、ベルサリア国を目指していた。

 ベルサリア国への経路は着々と整備が進んでいて、帝国軍による魔導車の往来が盛んである。

 僕たちはそれに混ざる形で、例のごとくワンボックスカーみたいな魔導車に乗って、見通しの良い平野を進む。


「ここから後、どれくらいかかるんだ?」


 乗り始めて15分たった頃、アレスが問いかける。


「3時間ほどかかります。また、整備が進んでいるとは言え、舗装も完全ではありません。少々酔いにご注意ください」


 運転席のラプツェルが答える。今までのクエストでは帝国兵の運転手がついていたが、今回はラプツェルが運転してくれている。


「俺は勇者だぞ。乗り物で酔うわけがないだろう。それにこいつらだって帝国きっての最強の魔術師集団『Sクラス』だ。乗り物で酔う軟弱な人間なんて『Sクラス』にはいなかろう」


 僕はミスティアを思い出す。今回の面子は人格的に胃が痛くなる面子なので彼女が恋しい。


「それでは、着いてからのことをお話ししましょうか。と言っても、基本的には資料に書いていることの復唱になりますが」


「ああ。俺は読んで無かったから頼む」


 それを聞いてラプツェルは大きくため息をつく。若干魔導車が揺れた。


「はぁ。アレス様、『勇者』としての自覚が足りていませんね。もっとしっかりと事前準備を--」


「どうせここで暇になるんだ。それに、直前に頭に入れる方が良いだろう」


 アレスは不真面目で言っている感じはしない。本当にそれが合理的だと考えているのだろう。

 ラプツェルは若干腑に落ちない感じだが、それ以上は言及しなかった。


「……では資料の復唱をいたします。今から話す事項は資料p10~で記述されているので、資料を開きながら聞いてください」


 ラプツェルは運転で正面を向いたまま解説し始める。

 ページを含め内容は頭に入っているようだ。


「今回、転移者と相対(あいたい)する主なパターンは大きく分けて次の3つを想定しています。

 1.こちらから転移者の居場所を特定する場合

 2.臣従式前後に暗殺を狙われる場合

 3.臣従式中に出現する場合

 2、3は相手の出方で変わる、場合分けになります。

 2の場合は単純な暗殺、奇襲を狙う意図

 3の場合は転移者を観客等に紛れ込ませたい意図、あるいはアレス様を式中に討ち、それをストーリーとして観客に見せたい意図などがあるでしょうか。

 いずれにせよ、こちらとしては受け身の体制となり、あまり好ましくありません。

 こちらとしてはまず、1を目標に、着いてからは行動します」


 すごい。p10、11の内容が分かりやすく要約されている。 


「最初に向かう場所は転移者召喚の痕跡があった場所。今回で言うとベルサリアの監獄になります」


 このタイミングでゼインが軽く手を上げ質問する。ラプツェルには見えていないが彼の癖なのだろう。


「ラプツェルさん、資料を読んだ時から少し疑問だったのですが、なぜ監獄が痕跡があった場所とされているのですか? 資料には監獄に具体的な痕跡があった記述が無いのですが」


「はい。監獄に召喚自体の痕跡はありません。しかし、帝国兵が監獄を発見した際、()()()()()()()()()()()が報告されています」


「……? それがどう転移者と繋がるのですか? 転移者召喚の痕跡としては、召喚のための古代魔道具と、転移召喚魔法陣があることが妥当だと思いますが」


「はい。それらに加えて、(ひと)100人の命が転移者召喚の条件です。これが監獄の痕跡と結びつきます。囚人の命を転移者召喚に捧げた可能性があるということです」


「そうは言いますが……。では、明確な召喚の痕跡は無いということですか? それだけでは根拠として薄い気がしますが……」


 僕も資料を読んだとき少し違和感を持っていた。

 (から)の監獄。

 そもそも誰も収監されていなかった可能性もあるし、あるいは戦争の混乱に乗じて逃げ出した可能性もある。


「いえ。囚人は転移者召喚を行う際、生贄として真っ先に槍玉にあがる存在です。それだけで、こうして動く材料としては十分なのです」


 材料、つまり転移者召喚が行われたかどうかはやはり確定ではないのだろう。ベルサリアの王族を今すぐにでも断罪出来ない理由も、証拠が不十分であるからだと考えられる。

 しかしキリシア帝国の、強者のルールでは常に最悪のケースを想定して動く。それは今までのクエストでなんとなく分かっている。


「でも、囚人を生贄に捧げれば、こうやって転移者召喚の証拠になって疑われることになりませんか? それであれば普通の民間人を集めて生贄にした方が証拠にならないと思うんですけど」


 僕も質問してみた。


 それを聞いて、アレスはふっと笑う。


「クリス、お前は『人』というものが分かってないな。罪のない民間人を生贄にする行為は、命令する王も、遂行する兵士も『やりたくない』んだ。罪人だからこそスムーズに事が進み、短期間で転移者召喚を行うことができる。もっとも、疑われる可能性まで考える余裕が無かったのかもしれないがな」


 なるほど。国の今後に関わる事だったとしても、合理性だけで動く訳じゃないのか。最終的に決断するのが人間である以上、人間性は排除しきれないということか。


「クリストファー君は『人』が得意では無いですからね。人心の駆け引きに関しては私の方が自信がありますよ、陛下」


 ドロシーさんが僕に失礼なことを言いながらアレスにアピールする。


 そして、僕やゼイン君はアレスのことを勇者様って呼んでたけど、陛下って呼ぶのもありなのか。


「ほう。人心を冒涜したような魔術を使うお前がそんなことを宣うか」


「はい。まあ、そこの2人は並以下ですが、私の魔術は性質上、人心(それ)とは切っても切り離せませんから」


 しれっとゼインにも失礼なことを言っている。

 ゼインの方を見ると、アレスの手前、学院の時ほど分かりやすくはないが顔を微妙に歪めている。


「では、人心(それ)が得意なお前は、転移者はどこに居ると見ている?」


「そうですね。ベルサリアの王様は陛下を恐れていますから、すぐに助けを呼べる自分の近くに置いているのではないでしょうか」


 楽しそうにドロシーに問いを投げていたアレスは肩透かしをくらう。


「誰でも思いつく、つまらん答えだな」


「人なんて案外単純なものですよ、陛下。特に、権力を持った人間というのは自分の思うがままに物事を動かせてしまうので、動きも予想し易いんです」


「ふむ。では俺の動きも簡単に読めるのか?」


「いえ、陛下は私と同じで非常に性格が悪くあらせられるので少し読みにくいですね。ただその意地の悪い質問は、されると思っていましたよ」


 ドロシーとアレスは見つめ合い、楽しそうににやけ合う。


 やだなあ、この空間。


 こちら側でじゃれ合っていると、こほん、と運転席の方から聞こえる。


「話を戻しますと、まず監獄に到着してからは、皆様の魔術で調査を行ってください。そこから先の動きは皆様の裁量になります」

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