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自然公園2

 アレス・キリシア。

 キリシア帝国7代目の勇者で帝国のトップだ。

 彼が男であることは時折目にする媒体の情報で僕も知っていたが、いまは魔術によって女装しているようだ。

 そして、彼はクリスのことを知っているらしい。だから僕のことをからかったのだろう。


「そ、そうなんですか。でも、とてもお美しいですね。さっきはドキッとしてしまいましたよ」


「そうだろう! この姿は俺が理想とする姿『究極の美』そのものだ。可能であれば、仕様もない貴族の娘なんぞでは無く、この姿の自分自身を伴侶にしたいものだ」


 褒められてとても嬉しそうだ。

 少なくとも、やむを得ず、不本意に女装している感じはない。


「ところでクリス、今度依頼する任務(クエスト)についてだがーー」


 アレスは言いかけて、止まる。

 視線が僕から外れ、僕の背後の方を向く。

 目の先にはクレープの屋台からちょうど戻ってきていたアイラがいた。


「いや、やめておこう。俺も守秘義務は守らなければな。妹との貴重な時間を邪魔して悪かったな」


「い、いえ」


 アレスは一瞬目を閉じる。

 数秒後、彼の雰囲気が変わる。


「それではご機嫌よう、クリス君。また()()お会いしましょう」


 再度キャラチェンジした彼はスカート裾を摘んでお辞儀し、去っていく。


 ……なんというか、人としての感じがミツェルさんに似ているな。


「お兄様、今の方は?」


「えっ!? あー、えーと」


 彼は正体を隠すために変装していた。

 ここは隠しておいた方がいいだろう。


「クラスメイトだよ。クラスメイトのアリスさんだ」


 ♦︎


 さっきは驚いたな。

 まさか、勇者があんな感じなんて。

 そして、勇者とクリスは知り合いだったなんて。本当にクリス(こいつ)は何者なんだ?


 そういえば彼はクエストがどうとか言いかけていた。今まで僕がこなしてきたクエストはどれも国にとって重要そうなものだったし、勇者も把握している、あるいは絡んでいるのかも知れない。


「それにしても、さっきの方とっても美人さんでしたね……」


 アスフォデルスの花園を一緒に歩きながらアイラはポツリと言う。

 ちょっと不安げな嫉妬っぽい表情だ。


「そうかい? 僕はアイラの方が美人で可愛いと思うな」


「お兄様はすぐ調子のいいことを言いますね……。お兄様のクラスはかわいい人が多いですし、どなたかを好きになったりはしないんですか?」


「全然しないよ。僕がそう言う意味で好きなのはアイラだけだよ」


 僕は真剣な真顔でアイラの方を見ると、彼女は照れてそっぽを向いた。


「う〜〜〜。私たちは兄妹ですよ?そういうのは良くないです……」


「僕は愛さえあればそんなの関係ないと思うけど」



「あ〜〜〜〜〜〜!クリス君だ〜!」


 僕が妹とイチャついていると少し離れたところから聞き覚えのある声が聞こえる。


 声の方を向くとクラスメイトのローラとセレナ、ドロシー(超絶美少女。黒髪ロング。サファイア色の目。160cmくらいのスレンダーな体型)が3人、私服姿で揃っていた。


 3人は僕に気づくと寄ってきた。


「クリス君昨日ぶりだね〜。昨日はお疲れ様〜」


「ローラさんも、お疲れ様。ローラさん達もここに遊びにきていたのかい?奇遇だね」


「そうだよ〜。クリス君は……そちらは妹さんとメイドさん?」


「メイドのミツェルです。いつもクリス様がお世話になっております」


「……初めまして、アイラと申します」


 アイラ、ミツェルと3人は軽く会釈し合う。

 アイラは少し緊張している。結構人見知りなのだろうか。


「可愛い妹さんだね〜!いいなぁ。ボクも妹がいたらなぁ」


「そうだろう。羨ましいだろう」


「いいなぁ! ボクに頂戴よ〜」


「やだね。絶対あげるもんか」


「……ローラちゃん、そんなにクリス君と仲良かったっけ?」


 僕とローラが小粋なトークをしていると少し不機嫌にセレナが言った。


「……あ!」


 それを言ったセレナを見て、ローラがはっと何かに気づいたようになる。そして、数秒顎に手を当て何かを考えると、少し悪い笑みを浮かべ、僕の腕に抱きついた。


「そうだよ〜! 昨日まで3日間をクリス君と共にして、とってもとっても仲良くなったんだ〜!」


「……へ〜〜〜。いや別に、私は気にしないけど。ふ〜〜〜ん」


 ローラは何を考えているのだろう。やめて欲しい。

 でも、腕に当たる彼女の胸の感触はとても良い。


「……クリス君? ちょっと、すけべな顔してない?キモいんだけど」


「なっ……何を言うんだい!? セレナさん。僕はやましいことなんて何も考えてないよ。失礼だなぁ!」


「くっくっく。クリストファー君、随分とモテモテじゃないか。いいね。私も君の彼女に立候補しようかな」


 ドロシーはからかうように口を挟む。彼女とは今まで関わりは無かったがこんな感じだったのか。


「え〜〜? クリス君はボクのだよ〜。渡さないよ〜」


「この中で一番彼と親密なのは私だよ。同じ三傑として、クリストファー君とは幾度も死線を潜り抜けてきたんだ。君たち程度の繋がりとは格が違うのだよ」


「……別に、クリス君が誰と付き合おうと私は知ったことではないんだけど、それは嘘じゃない?ドロシーちゃん。ドロシーちゃんがクリス君とクエストに行った回数なんて片手で数えるくらいだよね? 私は数十回はクリス君とクエストに行ったことがあるけれど」


「それは楽な、難易度の低いクエストだろう? 私はいつ死んでもおかしくない超高難易度クエストを彼と共にこなしてきた。数回だったとしても、そこで培われる絆はそれとは比べ物にならないさ」


「ボクも昨日のクエストではクリス君と死戦潜ったよ!」


「みんな、僕のために争わないでくれよ」


 超絶美少女3人が僕を取り合っている状況。

 悪い気はしない。


 しかしこの人達、3人で一緒に遊びに来てる割には仲悪くないか?

 いや多分、ローラとドロシーはセレナをからかって遊んでいるだけなんだろうけど。


「う〜〜〜、お兄様は私のです! 離れてください!」


 と言ってアイラは僕の腕に引っ付いているローラを引き剥がした。


 場の空気が一瞬止まる。

 僕も驚いた。


 ……さすがにケジメをつけなければならないな。はっきり言おう。


「……まぁ、悪いけどそう言うことだよ、みんな。僕は妹と結婚するんだ」


 僕はキリッとそう言った。


「なるほど。流石に妹には敵わないな。参ったよ。私は降りよう」


「お〜。クリス君ってすごいシスコンだったんだね〜」


 ドロシー、ローラはそう言って、悪ノリをやめた。


 彼女らがクリスにそういった好意を持っていないのは流石に分かる。どちらも、ごっこ遊びをしていただけだろう。


 ♦︎


 その後3人と別れ、アイラ、ミツェルと共に花園からパグラ駅への帰路についていた。


「やっぱり、お兄様モテるんですね……」


 アイラはあれからちょっと不機嫌だった。あの3人にはどこかでお灸を据えなければならないな。(特にローラとドロシー)


「そんな事ないさ。さっきのはおふざけだよ。『Sクラス』ではああいう悪ノリが流行ってるんだ」


「一概にそう言えないかもしれませんよクリス様。好きに見せたおふざけに見せかけた、本気かもしれません。一種の照れ隠しですね。裏の裏という可能性もあると思いますよ」


 ……何を言ってるんだ?ミツェルさんは。

 好きに見せたおふざけに見せかけた本気?頭がこんがらがって来た。

 そんなこと言い出したら何でもありだろう。


「……ですよね! 私もそう思います、ミツェルさん」


 アイラは力強く同意する。


「クリス様は恋愛事に疎いですからね。悪い虫がつかないようアイラ様は見張ってないと駄目ですよ」


「はい! お兄様は私が守ります!」


 ……恋愛か。

 現実世界じゃ、そんなものは「僕」にとってファンタジーだったな。

 女子に好かれる可能性なんて0%も無かった。

 そして僕自身も誰かに恋愛感情を持ったことは一度もない。そもそも男女問わずまともな人間関係が築けなかった。

 とすると、僕が分かってないだけで、ミツェルさんが言っている説もあり得るのだろうか。


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