BBQ
核を消滅させると、化け物はその後再生することなく電源が切れたように息絶える。
と同時に中ボスフロア同様広間奥に扉が出現する。
そして3人は僕の元に集まり、4人でハイタッチした。
「よっし。お疲れみんな!」
「お疲れ〜」
「お疲れ様です」
「お、お疲れ」
僕だけが微妙にタイミングがズレた。
クリア後の達成感と充足感の雰囲気と連帯感。
この4人はいつもこんな感じなのだろうか。
僕にはわからない。
「んじゃあ、行くか」
余韻に浸り終わった後レオンが号令し、僕たちは扉の先へ進む。
ダンジョン攻略のそもそもの目的、それは最深部にある魔法陣の破壊だ。
魔法陣を破壊し、ダンジョンの機能を停止させ安全な状態にする。それにより、ダンジョンに残った魔導力結晶体から、エネルギーを吸い出すための工事を帝国が行えるようになる。
そのためにSクラスの僕たちが駆り出されたのである。
扉を開くとそこには巨大な魔導力結晶体があった。
蒼く輝く、透き通った結晶。
この場にいるだけで、何かエネルギーを感じる。
今ならマイナスイオンを感じるとか言っている人間の気持ちが分かる気がする。
そして周囲には魔法陣が張り巡らされていた。
魔法陣を破壊とは言うが、どのように破壊するのだろうか。
「フェンリル!」
結晶体の前でローラはフェンリルを召喚する。
「バウ!」
召喚されるとすぐ、フェンリルは爪でガシガシと魔法陣を削り始めた。
結構原始的な破壊方法だった。
「ん~と。おっ、あったぜ!」
レオンは周囲をキョロキョロとしたのち、魔導力結晶体の後ろにあった扉を指さす。
3人は意気揚々とその扉に向かう。
僕もそれについていく。
「おお~~~。今回は結構豪勢ですね」
扉を開くとそこには宝の山。
何らかの結晶・宝石が大量。
得体のしれない魔導具。
また、豪華な装飾物類、陶器類があった。
そういえばダンジョンガイドブックに書いてあったな、最深部には魔導結晶体と古代の宝があるって。
これは古代の宝なのだろう。
「でもあんま珍しいもんはねえな」
レオンは期待外れといった感じで言う。
相当豪華でお金になりそうな感じだがそういうのには興味はないのだろうか。
「私このカップもらっていいですか?」
「おっそのマグカップいいね~。私ももらってこ~。ミスティとペアカップ♪」
それを横目にミスティアとローラが特に豪華な見た目でない(逆に浮いている)が独特のデザインのマグカップを手に取る。どことなく青銅鎧の魔物のデザインに似ている。
家で使えばいつでもあの中ボスを思い出せそうないい記念品だ。
というか勝手に持って行っていいのだろうか。
……まあ、いいのだろう。攻略したのは僕たちだ。
僕も何かとるか。
たとえばこのダイヤモンドっぽい宝石。
これを大量に持って帰ればいいお金になるのではないか。
と思い、僕はダイヤモンドを手に取る。
「クリス、ダイヤモンドはこの前人工生成の方法が確立されて価値が暴落したぜ?お前ニュース見てないのか?」
まじか。
……あれ、現実世界でもダイヤモンドって人工で作れるんだっけ?
現実世界でも今は価値が暴落してるのだろうか。そんな話は聞いたことはないが。
「そ、そうだったのかい。じゃあこっちにしようかな」
横にあったネックレスを取る。
金色の金属のひもに直径2cm位の装飾された赤い宝石がついている。
帰ったらアイラにあげよう。
似合いそうだ。
「……ん?」
装飾類を物色していると、載っていた棚の裏側に本が積まれているのが見えた。
手に取って開くと、大量の魔術式が書かれていて魔法書のようだった。
しかし、文法が違うのだろうか。
僕たちが使っている魔術のものと違っていてよく分からなかった。
いやでも、どこかで見たことがあるような……。
「あ~、古代魔術書か。研究所行きだな」
レオンが僕の後ろから声をかける。
これは古代の魔術書らしい。
そして古代の魔術というのは研究されているようだ。
「いくらクリス君でも、持ち帰ったらだめだよ~?」
ローラがからかうように釘を刺す。
これに関しては持ち帰りNGらしい。
「持ち帰るわけないじゃないか。僕を何だと思ってるのさ」
と、さもその常識は知ってた風でローラに返し元に戻した。
♦
宝の物色をそこそこに済ませ、僕たちは来た道を戻った。
罠が停止し、魔物が弱体化しているものの、10階にも及ぶダンジョンの道をまた歩くのは結構きつい。入り口にたどり着くのに45分くらいかかった。
到着すると辺りはすっかり夜になっていた。
そしていいにおいがする。肉の匂いだ。
「あ〜〜! BBQしてる~!」
ローラがその匂いの先を指さす。
そこでは来た時ダンジョン付近で待機していた帝国兵5人が楽しそうにBBQしていた。
「げ!」
BBQしていた帝国兵の一人がこちらに気づくと寄ってくる。
「み、みなさんもう攻略されたのですか。お早い。さすがSクラスですね」
見られたらまずいものを見られたような感じだ。
まあ、そうだろう。
完全に職務放棄して遊んでいるようにしか見えなかった。
「ふざけんなてめえ! 俺らも混ぜろや!」
と言ってレオンは笑いながらその帝国兵の肩を組む。
♦︎
僕たちはBBQに混ぜてもらった。
鉄板には様々な部位の何かの肉が焼かれている。
テント内には魔導クーラーボックスがあり、食料はまだまだありそうだ。また、横にはワインのようなお酒もあった。
「お、酒もあるじゃねえか。とんでもねえなぁ!」
と言ってレオンはテントへ向き、立ち上がる。
「待ってください、レオン」
肉串を持ったミスティアがもう片方の手でレオンの腕を引き留める。
「なんだ?」
「今日は色々と反省すべき点がありました。ここは初心に戻って今後の作戦会議をしましょう。お酒は抜きで」
そういえば初日の夜は「改めてダンジョンのために話し合う事はない」ってレオンは言ってて、そしてそれはこのパーティの共通認識だった。
「初心に」ってことは、最初の頃は作戦会議とかしてたのだろう。必殺のコンビネーションアタックとか使ってたし。
皮肉なことに、クリスが僕のおかげで弱体化したせいで危機感が芽生えたのか。
「ああ、分かった!」
レオンは特に嫌な顔をせず席に戻る。
むしろ清々しい顔だ。
レオンが席に着くのを確認すると、ミスティアは平常時の凛とした顔で仕切り出す。
「今回の反省点は主に
1.クリスが落とし穴に落ちたこと
2.最終ボスの核を特定するまで私たちが何も出来なかったこと
です。1に関しては完全にクリスが迂闊でした。注意してください!」
「うん。ごめんよ」
あれは本当に申し訳なかったなぁ。
でもあれが無ければ、最終層でまともに戦えなかった。(今回ですら無様だったが)
個人的には結果オーライだが、また今後ダンジョンに行くことがあれば注意だ。絶対に単独行動してはいけない。
「ミスティ、クリス君が落ちた時ものすごくテンパってたね! でも、回避不可能な分断トラップもあるよねぇ」
「それに対しては私たち個人個人の能力を上げるしかありませんね。あと、議題に関係ない事は言わないでください」
「それを言ったらよぉ、最終ボスだって初っ端まともに介入するには個人個人の能力を上げるしかなくねぇか?」
「う〜ん。でも、必殺コンボは綺麗に嵌ったよ〜?」
「必殺コンボを最初に使って仕留め切れないと、次は警戒されて当てられ無くなるかもしれません」
「……となると、必殺コンボと違う他のコンボを考えなきゃな!」
3人はイキイキとした顔で魔術コンボの案を出し話し合う。
ここ2日間見てきて一番いい顔をしている。結局のところ彼彼女らはSクラスなだけあって、魔術が大好きな魔術馬鹿なのだろう。
「クリス君は何かいい案ある?」
「僕は――」
僕も話し合いに混ざる。
ダンジョンに来てから魔術の経験値が上がったため何とか話について行くことができた。
いいな。これが仲間ってやつか。現実世界でも部活とかしてたら、こんな風に仲間と達成感を分かち合い、目標に向かって語り合う事ができたんだろうか。
そして彼彼女らが優秀なのも得心がいった。
なるほど。そりゃそうだよな。こんな風に能力があって、意欲があって、互いを高め合える仲間がいたら、そりゃあ「僕」との差はどんどん広がっていく。
でも結局、能力がなければそんな環境にも巡り会えないわけで、現実世界の「僕」にはどうしようもなかったのだろう。
そんなことを考え、どこか冷めたように疎外感を感じながら僕はその輪の中にいた。
ダンジョン攻略編は以上で完結です!
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次回からは転移者討伐編です!




